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90話

 マリエルに魔剣の検証を手伝ってもらった。

 しかし残念ながら、好ましい結果は得られなかった。

 誠に遺憾であるが、この魔剣の売却は諦めるしかないようである。




 あの後ダンジョンを出て、現在街に向かって飛行中である。

 今回のダンジョン探索は、当初の予定である30階層突破こそ出来なかったが20階層突破までは出来たし、予定外であった魔剣の検証も行ってある程度の性能もわかったので、成功と言って差し支えないだろう。

 俺一人では分からなかった検証結果も得られたし。

 喜ばしい検証結果ではなかったが、それはそれ、常に良い結果ばかりが得られる訳がないのだから、それは仕方がないだろう。

 とは言え、物そのものは良い物であるし、俺が使う分には然程問題もないので、拾い物である事も考えれば十分いい結果と言っていいとは思う。

 等々考え事をしている内に街に到着した。

 今日は大分早めに切り上げたので、閉門まではまだまだ余裕がある。

 ギルドに顔を出して、死蔵しているモンスターを売ってくるかな。

 因みに切り上げた原因は、今尚赤面したまま縮こまっているマリエルだ。

 流石に二度も、しかも二度目はそうなるであろう事がわかっていたのに、あんな事をやらされて、羞恥でとてもではないが平静とは言えない状態になってしまい、戦闘行為を行うにはよろしくないと判断したからだ。

 勿論、俺が魔法で狩るだけなら関係ないが、そうまでして狩りたいほど旨味のある獲物でもないし、何より俺がやらせてこうなってしまったのだから、最後まで俺が面倒を見るべきだろう。

 許可証を提示して街に入り、また飛んでギルドを目指す。

 今日はマリエルに気を使って、街中で飛ぶ際は光学迷彩で姿を隠す。

 主にマリエルを衆目に晒さないために。

 マリエルの今の精神状態で、衆目を集めるのはきついだろうと思ったからだ。

 まぁ、どうせすぐ着くが。

 と言ってる間に着いた。

 背中のマリエルに声を掛けてから降ろす。

 流石に時間が経っているから、もう大体大丈夫なようだ。

 大体。

 そして向かうのは勿論解体場だ。

 まだ少し早い時間であるからだろう人影は疎らにしかなく、買取カウンターにも買い取り待ちはいなかった。

 忙しい時間帯がどれくらい混むのか知らないが、待たされるくらいなら少し早めに切り上げて戻ってくるくらいの方がいいな。

 若しくはその日の売却は諦めて、次の日の昼辺りにでも売る為だけに出てくるとか。

 ・・・それはそれで面倒か。

 やはり少し早めに切り上げるか。

 憶えていれば。

 今回も倒して魔法の濾過膜(マジックフィルター)で血抜きをしてそのまま収納していたモンスターを、指示された場所に順番の出していく。

 見た覚えくらいしかない職員は、話は聞いていたのだろうか、淡々と査定していく。

 別に驚かせたくてやってる訳ではないが、反応が薄いと物足りないとか思ってしまう。

 前回が1階層から出していって30階層階層を過ぎた辺りで止められたはずなので、今回は最初から30階層までの分で止めておく。

 出し終わり、査定をしている職員を見ると随分進んでいる。

 手を抜いている風にも見えないので、単に優秀なのだろう。

 それ程待たされる事なく査定が終わる。

 買い取り金額が幾らで解体費用が幾らでと説明してくれるが、相場など全くわからないのでいいのか悪いのか判断できない。

 が、マリエルが反応していないから普通なのだろう。

 この金額でいいかと聞かれるので、そのまま許可を出す。

 するとマリエルと職員がカウンターの方に向かい何やらやり取りを始めた。

 ギルド証を出しているから受け取りか。

 その様子をぼんやり眺めながら、今回は少し高かったなぁなどと考える。

 前回の倍とまでは行かないが、7~8割り増しくらいか?

 階層的には同じで数も大体同じ、状態も同じ。 

 でも金額が違うということは、モンスターの買い取り金額自体が違うということ。

 有用性が違えば値段が変わるのは当然。

 希少性が高いって可能性もあるか。

 とは言え、この程度の低階層のモンスターであれば、あえて狙って狩るほどのことはない。

 そんな事をするより深い階層に潜ればいいだけだから。

 それが出来なくなったら、モンスターをダンジョンの最寄の街ではなく別の街まで持っていって売るのもありか。

 いや、面倒なだけだな、なしで。

 そんな益体もないことを考えていると手続きが終わったのだろう、マリエルが近付いてきた。

 「代金を受け取ってきました。ですが職員から、解体込みなのはお金も受け取っているから仕方がないが、同じ量を売るにしてももう少し頻度を増やして1回の量を減らしてもらえないかと相談されました」

 「む? 迷惑そうだったか?」

 「いえ、私が見たところ、解体そのものは喜んでいるように思いました。解体すればするだけ給料も上がるでしょうし。ただ、一気にどかっと来て暇になり、また一気にどかっと来るというのは疲れるから、もう少し均して欲しいだけだと思います」

 なるほど、そういうことか。

 確かに同じ量を解体するにしても、一度に大量に持ち込まれるよりも毎日少しずつ持ち込まれた方が楽だろう。

 だがそれでは俺が一々売りに来なければならなくなり、面倒ではないか。

 却下だな。

 いや、まてよ・・・仕事があること自体は喜んでいるのか。

 「頻繁に来た上で同じ量を売っていけば、職員は少々忙しくはなるが給料が増えてハッピー、俺も少々面倒ではあるが在庫が捌けてハッピー、ということだな」

 所謂Win-Winという奴だ。

 「鬼ですか、貴方は・・・」

 失敬な。

 仕事を作ってあげているというのに、寧ろ泣いて喜ぶ所でしょう、ここは。

 

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