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89話

 魔剣の検証の為にモンスターを拘束した。

 その際に新たな事実が判明し、俺の勘違いが発覚した。

 それだけであり、他には何もなかった。




 風の手で兎を拘束したまま、不要だとは思うが一応蚯蚓(ミミズ)も拘束しておいた。

 そして先ずは最初に狩った兎を収納しておく。

 大した差ではないが、放置したらその分劣化してしまうからな。

 そして次に本命、魔剣の検証である。

 当然のように周囲の確認は済んでおり、後は実行あるのみである。

 「では頼んだぞ」

 そう言って魔剣をマリエルに渡す。

 「わかりました。もしもの場合はお願いします」

 そう言って魔剣を受け取り、ゆっくりと持ち上げるマリエル。

 そして上段に構えた魔剣を兎目掛けて振り下ろす。

 それを見ながら、俺は別のことを考えていた。

 もしもの場合ってなんだろう?

 生命力が流れてくる関係で感じてしまう快楽がある分、普通より簡単に殺害することに酔ってしまう危険性を以って『魔性の剣』としているが、幾らなんでも殺して即快楽殺害に酔いはしないだろうしなぁ。

 実際俺は平然と使い続けていた訳だし。

 レベルが低い分能力値も低いマリエルだからと言って、やはり即座に酔うとは考え辛いのだが。

 とは言え、俺がどの程度感じていたかもマリエルがどの程度感じるかも事前にマリエルにわかるはずがないので、一応保険的に声を掛けておいたとかそういうこt

 「ひゃあああああぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁ!!!!」

 うわっ! ビックリした。

 考え事をしながらもしっかり観察はしていたが、振り下ろした魔剣でざっくり切られた兎はほぼ即死し、生命力と魔力と思しき物が魔剣を伝ってマリエルに到達したと思った瞬間、マリエルから盛大な悲鳴が上がった。

 いや、これは悲鳴ではなく、嬌声だろうか?

 マリエル自身は嬌声、ということにしておく、を上げたまま硬直していたが、しばらくするとその場に跪いてしまった。

 頭を下げているので表情は見えないが、息は荒い。

 なんか色々アウトっぽい。

 が、まだ決まった訳ではないし、確認はしなければならない。

 握られたままの魔剣を引っぺがし、少し離れた所に放り投げる。

 そしてマリエルの両肩を掴んで強く揺さ振りながら声をかける。

 「おい、大丈夫か。意識ははっきりしているか!」

 「る・・い・・・さ・・・ま・・ぁ・・・・」

 うむ、実にエロいね。

 そしてアウトだ、これ。

 マリエルは顔全体を上気させ瞳も潤ませていて、少しぼんやりした感じでこちらを見上げている。

 近くに人がいたら迷わずこう叫ばれるだろう。

 『おまわりさん、こっちです』と。

 



 「もう、大丈夫です。ご心配をお掛けして、申し訳ありませんでした」

 そこそこの時間がかかったが、マリエルは何とか平静を取り戻した。

 まだ顔は赤いままだが。

 しかし、それに触れないが大人の対応という物だろう、多分。

 「では魔剣を使った時のことを説明してもらえるか」

 「はい。とは言いましても、振り下ろした瞬間頭が真っ白になってしまい、後の事はよくわからなかったので説明と言われても話せる事が余りないのですが・・・」

 あー、確かに傍目にもそんな感じだったな。

 「では体調などはどうだ? 俺は何ともなかったので大丈夫だと思うが」

 「・・・・・・特に何ともないですね」

 手足や体を少し動かした後にそう答えるマリエル。

 やはり別段害はないという事なのだろう。

 倒した瞬間の盛大な反応は十分害ではあるが。

 元々レベル差がある分強く影響を受けるかもしれないとは思っていたが、実際は俺の想定より遥かに強く受けているようであった。

 俺はそこまで感じなかったが、マリエルがあそこまで感じたという事はレベルか性別か・・・異世界人だからという可能性もあるか。

 別の人でも試したいところだが、あんな反応をされては気軽に頼めないしなぁ。

 特に目の前で男にあんな反応されたらと思うと・・・・うっ、鳥肌が。

 異世界人故かどうかは、地球側の人間には頼むこともできないから判別しようもない。

 レベルも俺以外は大差ないレベルなので判別できるか不明。

 結論、わかりません。

 はぁ・・・仕方がない、蚯蚓も倒してもらってから帰るか。

 2度目でも耐えられないほどの影響があるのであれば、完全に販売不能という事になってしまうな。

 全く使い道がないという訳ではないが、価値が激減するのは避けられない。

 その上で、俺が使う分には然程問題がないとなれば、売らずに俺が使うべきだろう。

 物そのものが優秀なだけに残念でならない。

 ・・・まぁ、所詮拾い物だからいいか。

 「最後に蚯蚓も倒してもらえるか。その結果でこの後も俺が使い続けるか、場合によっては売ることもあるかを判断する」

 「うっ・・・あれをもう一度、ですか・・・」

 見るからに腰が引けているマリエル。

 当然か、あんなことがあった直後にもう一度やれとか、人でなしの所業である。

 まぁ、人じゃないしね、厳密には。

 仙人ですから。

 だが、一度味わった上で耐えられるかかどうかは、非常に重要な判断材料である。

 是が非でもやってもらいたい所である。

 これはあくまで重要な判断材料を得るためのものである。

 決してマリエルの反応をもう一度見たいなぁなどと考えての事ではない。 

 間違えないように。




 ダンジョンからの帰還途上、そこには盛大に恥ずかしがるマリエルの姿があった。


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