12話
最近、世界のあちこちでダンジョンが発見されているらしい。
ただ何処も厳戒態勢を敷いているらしく、行っても入れそうにない。
それが外国人ともなると尚更であろう。
取ってはいないが丁度いいスキルもあるし、忍び込むことも考えたが止めておいた。
まだあわてるような時間じゃない。
どうせ時間はいくらでもあるわけだし。
世界一周も終わっていないし、回り終わってから考えよう。
早く入ってみたいという気持ちは小さくはないが、それ以上に勝手のわからない外国で無茶をするべきではないという考えが強いからだ。
日本でも発見されないかなぁ、絶対入れないだろうけど。
世界一周水晶砕きの旅を一応終わらせて日本に帰国。
どうにかしてダンジョンに入れないかと調べていたある日、世界に激震が起こった。
アメリカのダンジョンがあった街が、大量のモンスターに襲われて壊滅したというニュースがあったのだ。
ネット情報ではない、ニュースである。
死傷者は数万人を優に超え、軍が動いて鎮圧したらしい。
モンスターの詳細を知りたかったが、異常なほど凶暴な大きな生物だったらしいとしかわからなかった。
直ぐに現地に向かおうとしたが止めた。
もし第2波が来たらどうなるかを考えたのだ。
対応は出来るだろう。
だが、確実にばれる。
いや、それ以前にそんなことがあった現場に近付けるかどうか。
普通に考えたら封鎖しているに決まっている。
そわそわするが何とか気持ちを宥め諦める。
寧ろ世界の反応を探るべきだろう。
それによっては入れるようになる国も出てくるかもしれない。
そう考え情報収集することにした。
アメリカのダンジョンの続報が入った。
どうも鎮圧したというのは正確ではなかったらしい。
一旦は鎮圧できたが、その直ぐ後に第2波が来て押し返されたようだ。
態勢を立て直すべく一旦引いて判明したらしいが、モンスターはダンジョンからある程度以上離れられないらしい。
ただ、態勢を立て直して再度鎮圧に成功しても、直ぐに次の波が来て撤退させられてしまうらしい。
ミサイルの発射を検討しているとか言っている。
仮にも自国の街に対してである。
そんなに切羽詰ってるのか。
これはダンジョンが発見されている国は大慌てだろうな。
それこそ自衛隊の派遣要請が来るかもとか考えていた。
更にアメリカの続報で、ダンジョン周辺の土地を放棄すると報道される。
どうも、いくら倒しても限がなく、それでいて一定範囲から出てこないから苦渋の選択をしたようだ。
あのアメリカがである。
アメリカでこれだと他の国も同じ結果になりそうだな。
アメリカの放棄した土地にいたモンスターが自然死をしたらしい。
しかも殆ど一斉にである。
これ幸いと現地に派遣された調査団が、再度発生したモンスターに襲われ半壊したと報道された。
自然死から再度溢れ出るまで3日ほどしかなかったようだ。
調査結果も、自然死したモンスターは有り得ないほど早く腐敗したということ以外殆ど持ち帰れず、余り進展していないらしい。
アメリカのモンスターの活動圏が大きくなっているらしい。
衛星からの映像で、新たなダンジョンが確認されたとも報じられている。
どう対応するのだろうか、興味深く見守る。
遂に日本でもダンジョンが確認される。
勿論行ってみたが、範囲数㎞で物凄い厳戒態勢を敷いており、普通なら近付く事も不可能だ。
今度こそスキルを取って忍び込もうかと思ったが、今回も先送りにした。
日本の今後の対応を見てからにしようと思ったのだ。
放棄するようなら、その後の方が忍び込みやすい。
遂にロシア・中国でもモンスターが溢れ出したらしい。
ただ事前に避難させていたようで、一般人に被害はなかったと報じられている。
両国共に軍を派遣していたが、撤退を余儀なくされたとも報じられている。
これ人類の活動圏が狭められていくって事になるのだが、今後どうなるのだろうか。
世界中の国々でモンスターが溢れ出るようになり始めた。
ロシア・中国は、アメリカ同様ダンジョン周辺の土地を放棄すると宣言、遠巻きに見守る態勢だ。
既にモンスターの活動圏も拡大しているらしい。
他の国々も、そこまで行かないまでも避難勧告をしている。
日本も同様に避難勧告のみを行っている。
そんなある日、初めてかもしれない良い報道があった。
世界各国で似たような報道が続く中、依然として溢れ出ない国があったのだ。
所謂発展途上国である。
それに目を付けた学者が調査、ある事実を発見したらしい。
どうもその国々は、厳戒態勢を敷いているとしつつも実際は殆ど何もしておらず、近隣の住人が中に入って狩りをし、食料品を得ていたらしい。
そんなことなら行ってみるんだったと軽く後悔する。
まぁ、予想できなかったから仕方がないが。
更には、ダンジョン内で狩りをしていた者は、身体能力の向上が見受けられるとの事だった。
きっとレベルが上がったんだろうなぁ、と思いつつ続きを聞く。
そしてその狩りをしていた者は、銃器ではなく刃物や鈍器を利用して狩りをしていたらしい。
それを知った学者は、銃器を持った護衛を連れて刃物や鈍器を持った者に戦闘をさせ、結果その者達も身体能力の向上が見受けられたと言っている。
最後に、銃器ではなく、刃物や鈍器でモンスターを狩る事が溢れ出させない条件である可能性があると発表した。
これが人類の反撃の狼煙となった。