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83話

 マリエルから聞いた話のせいで考え事に没頭してしまい、自分の仕事に不備を出してしまった。

 マリエルは笑って許してくれたが、今後は気をつけないと。

 浅い階層だから問題にならなかったが、深い階層でこんな事をやっていては危険極まりないからな、俺がと言うよりマリエルが。




 ダンジョンを奥に進むにつれて冒険者PTの数も減っていき、17階層現在、分かる範囲では他のPTはいなくなった。

 階層数的にここまで来るのはモンスター目当てではなく、攻略目的になるからだと思われる。

 お陰で序盤は余り狩れなかったランドフィッシュも爆釣である。

 釣ってはいないが爆釣である。

 そしてランドフィッシュ以外のモンスターも当然出始める。

 淫獣である。

 小型犬より大きなサイズの淫獣である。

 別名フェレットとも言う。

 別に恨みはないが見つけた以上狩るしかないであろう、常識的に考えて。

 何故なら淫獣なのだから。

 ただ別名は確かにフェレットとなっているのだが、このサイズだともう普通にイタチじゃね? とは思う。

 それでいて動きはすばしっこいしモンスター特有の攻撃性もあるしで、素人に毛が生えた程度では何人いてもいい獲物でしかないだろう。

 俺からするとただの雑魚ではあるが。

 マリエルにも戦ってもらってみたが軽戦士系のマリエルとは相性も悪くなく、魚のように瞬殺とはいかないまでも余裕をもって撃破していた。

 Bランクは伊達ではないという事だろう。

 ともあれ確認が終わった以降はまた見付け次第首を狩って回収しているので、何もない洞窟をただ歩いているようにしか見えないだろう。

 そうして歩み進めていって、ついに20階層のボス部屋前に到着した。


 特に疲れていたりもしないので、そのまま無造作にボス部屋に突入する。

 ここでも一人で戦うために、マリエルには壁際まで下がってもらった。

 扉が閉まり中央に靄が出てきて、何か大きなものを形作る。

 そして現れたのは、普通の3倍くらいはありそうなでかいランドフィッシュだ。

 『鑑定』によると、種族ブラックフィッシュ名無しレベル23。

 名前の通り黒いランドフィッシュで、光沢のある美しい鱗をしている。

 これくらいのレベルの敵にしてはよさ気な素材だなと思ったので、極力鱗を傷つけないように倒す事にする。

 何時ものように首を落とすと、魚の首の位置なんて分からないのでそれっぽい辺りで切り落としているだけだが、鱗を巻き込んでしまうので、頭を潰す事にする。

 だが余り深くまで攻撃するとやはり鱗を傷付けてしまうのでどうしようかと考えていると、悠長にしすぎたのだろうブラックフィッシュが攻撃をしてきた。

 雑魚のランドフィッシュと同様に、大きく口を開け水球(アクアボール)を発生させたのだ。

 ただしその水球(アクアボール)は2倍くらい大きいし、発生させている数も5つと流石はボスであると言わざるを得ない。

 発射速度はどうなのだろうか。

 速くなっているのか、それとも大きい分遅いのだろうか。

 あえて撃たせて確認してみたくはあるが、今は自分しかいないソロではなくPTである。

 俺としては至極真面目にやっているのだが、人によっては不真面目と受け止められかねない行動は控えるべきだろう。

 そう判断して、さっさと倒す事にする。

 好都合な事に向こうから攻撃してくださいと言ってきていることだし、そこを狙わせてもらう。

 そうして何時もの様に圧縮空気の玉を作り、ブラックフィッシュの口の中に放り込む。

 そのまま爆発させてもいいのだが、それでは結局鱗が傷付いてしまいかねないのでそうはせず、玉の表面に乱回転する風の刃を発生させて、ちょいちょい移動させる。

 するとどうだろう、ブラックフィッシュは体を大きく震わせたかと思うと小刻みに体を震わせながら動かなくなり、そのまま地面に落下した。

 その際に鱗が傷付かないように、風の手でそっと下ろす事も忘れない。

 水球(アクアボール)もブラックフィッシュの制御を離れたからだろう、そのまま落下して5つの水溜りを作っている。

 ブラックフィッシュは地面に落下した後も体を震わせていたが暫くするとそれもなくなり、その段階で死んだのだろう、奥に続く扉が開く。

 死んで回収可能になったブラックフィッシュを収納にしまい、マリエルを振り返り声をかける。

 「さぁ、ボスも倒した事だし、次に進もう」

 「何を・・・されたのですか? 急に痙攣しだしてそのまま死んだようにしか見えなかったのですが・・・」

 駆け寄ってきたマリエルがそう聞いてくる。

 まぁ、『風魔法』は傍目には何をしているのか分かりにくい系統の魔法だからな。

 「なに、攻撃して下さいと言わんばかりに大口を上げているから、そこから風で頭の中をかき混ぜてやっただけだよ」

 そう言って立てた人差し指を、自分の頭の横でくるくる回す。

 それを見たマリエルは、顔を少し青褪めさせながら

 「それはまた・・・えげつない攻撃方法ですね・・・」

 と言ってきた。

 言われて自分でも少し考えてみる。

 確かに、これはえげつないな。

 「なるほど確かにえげつない。でも有効な攻撃手段である事に間違いはない。お陰で見た目的には傷一つなく倒しただろう」

 「有効でないとは言っていません。お察しの通り、ブラックフィッシュの鱗は高く売れますし、傷が付いてもそれなりの値段にはなります。ですが傷付けずに倒すのは難しく、またボスである以上危険も少なからずあるので、傷付けずに倒せるくらいレベルが高い冒険者は深い階層でもっと安全に、より高く売れるモンスターを狩ります。ですので市場に出回るのは傷が付いているものが大半であり、偶々傷付かなかったものはこの階層の素材としてはかなり高く取引されているそうです。ですので鱗が傷付かないように戦うのを否定しませんし有効な手段だとは思いますが、もう少し何とかならなかったのかなと思ってしまうのも仕方ないと思います」

 「まぁ、次からはもう少し考えるよ」

 「そうしてもらえるとありがたいです」

 考えるだけは考えるよ、その結果がどうなるかはさておき。


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