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78話

 マリエルと共にダンジョン探索を開始した。

 しかし俺が一々言わずに行っていた掃除を、マリエルが勘違いするというアクシデントが発生する。

 誤解はすぐに解けたが、それによって盛大に恥ずかしがるマリエルが残されてしまった。




 まだ顔は赤いが、何とかマリエルが平静を取り戻した。

 これでも食べて気を取り直せと渡した、苺大福が実にいい仕事をしてくれた。

 真っ赤なまま嬉しそうに苺大福を口にするマリエルは実に愛らしく、俺としても眼福であった。

 「落ち着いたか?」

 「はい。取り乱してしまい、申し訳ありませんでした」

 「いや、俺の方こそちゃんと伝えておけば起こらなかった勘違いだ。普段と違いPTを組んでいるのだから、そういった事にもちゃんと配慮しなければいけなかった。すまない」

 頭を下げて謝罪するマリエルに、こちらこそ悪かったと頭を下げる。

 「いえいえ、ルイ様がそういった事も出来ると一度目にしておりましたのに、気付かなかった私が悪いのです。頭をお上げ下さい」

 「そうはいかない。責任の所在が明白であるのに、他人に押し付け自分は関係ないと言ってしまうような者にはなりたくないしな。・・・だが、マリエルも立場的に俺が悪いとも言えないか。そもそもこんな所でやる事でもないし、ここはお互い悪い点があったので改善しましょう、という事にしておかないか?」

 「ルイ様がそれで納得されるのであれば、私は一向に構いません。・・・私には役得もありましたし」

 そう言って頬に手を当て、幸せそうな表情をするマリエル。

 「あの以前食べた大福に苺を丸ごと入れるという発想、考えた人はきっと神ですね」

 この世界でその発言はどうかとも思うが、気持ちは分かる。

 と言うか、苺あるのか。

 変換されているという事は、お互い同じであるという認識を持っているという事。

 実に興味深い、時間があれば調べてみたいな。

 「それを言うなら、俺もがんp・・・いや、マリエルが喜んでくれているならそれでいいよ」

 自分の表情を楽しまれていたとか聞かされても、引かれるだけだろうから言わないでおく。

 ただ、途中で言い換えた事にマリエルが首を傾けている。

 俺は誤魔化す様に探索の再開を促した。

 「さぁ、何時までもこうしていても仕方がないし、探索を続けよう」

 「はい、分かりました」


 「そう言えば」

 「はい?」

 「道中に見付けたモンスター、毒蛇とネズミなのだが、倒したのは一応回収しているのだが、首を落とした毒蛇やネズミなんて売れるのかな?」

 ネズミはまだしも、毒蛇は毒が付着してそうで使い道がなさそうなのだが。

 「売れますよ、安い・・・かなり安いですけど。確かネズミに限らず余り食用に適さない動物系モンスターの肉は、脂を取って蝋燭の材料などになると聞いたことがあります。毒蛇もその毒から解毒薬を作るので、買い取ってくれます。ルイ様は首を落とした事を気にされておられるようですが、普通冒険者が持ち込む素材はもっとボロボロ、状態が悪いですから、首を落とした程度であれば、寧ろ高くなるかもしれませんよ」

 獣脂に血清か、それなら確かに買い取ってくれるのだろう。

 状態に関しても、普通はもっと実力差がない状態での戦闘の結果だから、首を落とした程度ならきれいな状態になるのか。

 「とは言っても、本当に安いのでランク上がりたてでダンジョンに挑むと、いつも以上に金欠になるんですよねぇ。なので、挑めるようになったからと言って直ぐには挑まず、ある程度実力をつけてから一気に突破を目指すのが一般的ですね。無理を重ねてでも直ぐに突破しようとするPTも少なくありませんが。そのまま帰ってこないPTも」

 自信過剰なのか単に無謀ななだけなのか、どちらにしても長生きは出来そうにないタイプだな。




 10階層のボス部屋に到達した。

 「ルイ様って本当に一人でも全く問題ないのですね。私って何の為についてきたのでしょう・・・道案内しかしていない・・・」

 微妙に沈鬱そうなマリエルがそんな事を言っている。

 だが実際は『地図化』があるのでその道案内すら不要なのだが、だからと言ってそれを伝えてしまったら益々沈んでしまうだろうから言わないでおく。

 「そんな日もあるさ。さぁ、先客もいないようだし、ボス戦にしよう」

 「・・・はい」

 そんなマリエルを後ろに、先にボス部屋に突入する。

 マリエルも入ってきて少し待つと扉が閉まり、中央に靄が出てきて細長く伸びていく。

 「すぐ終わらせるから、下がって待っていてくれ」

 「分かりました」

 不承不承ながら壁際まで下がるマリエル。

 それを確認し、これは蛇だろうなと思っていると想像通り蛇だった。

 そしてこれも想像通りだがでかい。

 某映画に出てきた、人を丸呑みする蛇ほどではないがでかい。

 代わりという訳ではないが、あちらと違ってこちらは毒持ちだが。

 『鑑定』すると、種族ファイティングヴァイパー名無しレベル14。

 ・・・・何やら懐かしい単語だな、関係ないだろうが。

 『毒攻撃』というスキルを持っているがきっと格闘戦を挑んでくるに違いない、『格闘』スキルも持っているし。

 そう決め付け、少し様子見をすると

 「シャァァァーーー!!」

 と威嚇しながら突進し、少し手前で突進の勢いも利用したなぎ払い(テイルアタック)をしてきた。

 内心で「よし、それでこそファイティングヴァイパーだ」などと考えながら風の手で尻尾を防ぎ、同時に首を落とす。

 先ず毒攻撃をしてきたらどうしてくれようかと思っていたが杞憂だったな。

 ボスの攻撃手段に満足しつつ、マリエルに振り返り

 「ボスも倒したし、次に進もう」

 そう伝え、ボスを『無限収納』に回収する。

 近付いてくるマリエルが

 「一瞬でしたね、分かっていた事ですが」

 と言ってきたので

 「まぁ、この程度のレベルの敵ならな」

 と言っておく。

 「本当に何の為についてきたのでしょう・・・」

 また軽く沈みだしたので

 「ん~、一緒にいるためじゃないのか?」

 と返しておく。

 そうじゃないと監視にならないからな。

 そういうことになっている、俺の中では。


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