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77話

 攻略目的でダンジョンに到着した。

 そこでつい気になってマリエルの到達階層を聞いたら、思ったより浅かった。

 そのまま話の流れで俺の到達階層の話もしてしまったが、何れはばらす程度の話なのでいいことにしておく。




 マリエルが落ち着くのを待ってダンジョンに突入した。

 先導はお任せ下さいという事なので、俺はマリエルの後ろを歩いている。

 歩いているのだが、後ろから見るマリエルはまだ浮かれている様にも見える。

 落ち着いたと思ったがまだ早かっただろうか?

 ・・・まぁ、どうとでもなるか。

 所詮低階層、目を瞑っていても簡単だ。

 朝飯前と言い換えてもいい。

 何故なら『風魔法』で周囲の確認は出来るし、食事を取らなくてもいい体になっているからな。

 それはさて置き、このダンジョンは洞窟タイプで全体的にうっすらと謎の光で明るくなっており、広さもそこそこはある。

 だが、流石にブラッディフェスタを振り回すには狭いので、また出番は先送りだな。

 わざわざ出番を作るほどでもないと思っていたが、いい加減確認の為に場を整えるべきかな?




 探索は何事もなく進み、現在4階層も半ば過ぎ。

 随分前に落ち着きを取り戻していたマリエルだが、今は逆に焦りすら感じているようである。

 俺には順調に進んでいるようにしか見えず、焦る要素がわからないのだが。

 道順なども大体は覚えているようで、時折腰の小物入れから地図らしきを取り出して確認するくらいで、迷いなく進んでいる。

 そんな事を考えていると、マリエルが足を止めこちらを振り返りながら話しかけてきた。

 「ルイ様。何が起こっているかは不明ですが、現在このダンジョンは明らかに異常です。一旦引き返した方がいいです」

 「異常? 俺は気が付かなかったが・・・何がどう異常なのだ?」

 「え? ルイ様が気が付いていなかったのですか? ここに来るまでに一度もモンスターに遭遇していなかったではありませんか。数階層も移動して一度も遭遇しないとか普通ありえませんよ。何か起こっているのは確実でしょう」

 そこまで言われてやっと気付く俺。

 「あ~そういうことか」

 「分かっていただけましたか。一旦戻って情報を集めるべきです」

 「いや、その必要はない」

 「え? どうしてでしょうか?」

 「その異常は異常ではなく正常だから、だな。もっと端的に言うと俺のせいだ」

 「ルイ様の? モンスター除けの魔法なりスキルということですか?」

 「いやいや、そうではないよ。既に一度は見せていたから説明していなかったが、こうなるなら説明しておくべきだったな」

 「既に見せて? ・・・・・あっ!」

 「気が付いたな。そう、ブラッディゴブリンを討伐した帰り、『風魔法』で索敵したゴブリンをそのまま討伐して持って帰ってきていただろう。あれをここでもやっていただけなのだ」

 「ではここまでモンスターに遭遇しなかったのは、何かが起こっていたわけではなく・・・」

 「遭遇する前に俺が見付けて、そのまま討伐して回収していたから、だな」

 実際の所は同じように見えても、全く同じという訳ではなかったりするのだがな。

 前は索敵も討伐も『風魔法』でやっていたがここはダンジョンの洞窟内、当然屋外と同じように風を操る事はできない。

 単純に操る風、というか空気が少なくなるからな。

 で、代わりに代用しているのが『地図化』である。

 『地図化』の効果範囲の方が『風魔法』による索敵の効果範囲よりも狭いのだが、今回のような制限がつく場合は『地図化』の方が有効だ。

 『地図化』の効果範囲もそれなりに広いし、敵や味方?も表示されるから十分用を足せる。

 後は少ないなりに集めた風で、首を落として回収していたのだ。

 因みに今まで倒したモンスターはヴァイパーとマウス、つまり毒蛇とネズミである。

 どう見ても捕食者と被捕食者なのだが、一緒に行動していたりする。

 何時見ても奇妙な光景だ。

 後、首を落とした毒蛇とネズミとか売れるのかという疑問もあるが一応回収している。

 大した手間でもないし、収納にはまだ入るからな。

 そもそも上限がないわけだが。

 そんな事を考えていると、顔を真っ赤にしたマリエルが両手で顔を隠して蹲ってしまった。

 そして小声で何か言っている。

 魔法で声を拾ってみるが、それによるとどうも自信満々に異常があるので撤退しようと進言したのに、原因が俺でしかも一度は見ていたのに気が付かなかったことが相当恥ずかしかったようだ。

 どや顔で勘違いを披露してしまったようなものだからなぁ・・・気持ちは分かる。

 そんなマリエルを俺は優しく肩を叩き慰める。

 「間違いは誰にでもある、気にするような事じゃないぞ。それに幸い聞いていたのは俺だけだ。であるなら俺が気にしなければ、それは存在しないも同然である。そうは考えられないか?」

 すると急に立ち上がったマリエルに両肩を掴まれ前後に激しく揺さ振られる。

 「本当ですか! 本当に気にしてませんか! 後誰にも話さないで下さいお願いします!!」

 「勿論だ! 絶対に誰にも話さないから落ち着きなさい!」

 ガックンガックン頭を振られながらもそう答える。

 手を離したマリエルはまだ恥ずかしいのか、また両手で顔を隠して蹲ってしまった。

 「恥ずかしい・・・穴があったら入りたい・・・・」

 とは言えさっきよりはマシになったのか、今度は普通に聞こえる声でそんな事を言っている。

 しかし異世界にもそんな表現があるのだな。

 俺がそう意訳して受け止めているだけかもしれないが。


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