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76話

 マリエルの猛反対に反論し、その意見を潰した。

 だが、その心からの心配を嬉しく思い、意見には従う事にした。

 そうして二人でダンジョンに向かう。




 ダンジョンの入り口に到着した。

 門番をしている兵士にギルド証と許可証を見せるとあっさり通るように言われた。

 もっと詳しく確認したりするのかと思ったがそんな事はないようだ。

 まぁ、低ランクなのに入ろうとするなら勝手に死ぬだけだし、ダンジョン外での討伐をせずに入っても正規ルートで売れなくなるだろうから折角狩ってきても割が悪くなる、と思う。

 その上でばれたら罰則もあるだろうから、普通は進んでやる理由はないだろう。

 それらを踏まえた上でもやる連中を一々取り締まるのは非効率だと思われているのかもしれない。

 その様な連中でもダンジョンでモンスターを狩ればそれだけスタンピードが起こりにくくなる。

 だから見逃されているだけとかかもしれないが。

 因みに許可証は一人1枚で期限は月末までの要返却。

 前の月の依頼内容、どの位ダンジョン外で討伐を行ったかをランクに照らし合わせて判断され、認められた者が申請すれば発行となる。

 俺とマリエルは今月と来月は既に認められているので、今月末か来月中に申請すれば来月分も発行してもらえるはずだ。

 だからといってダンジョン外の討伐をしないわけでもないが。


 暫く坂を下り、魔方陣に乗って登録する。

 魔法によって利用した事自体はあるが、あれでは登録した事にはなっていないのでちゃんと登録しておかないと普通の使い方が出来ないのだ。

 「マリエルは・・・もうしているか」

 「はい、ダンジョン探索がメインのPTではありませんので、余り深い所までは進んでいませんが」

 「因みに何階層までなら進んだ事があるのか聞いてもいいか?」

 少し話を聞くために一旦門前から離れる。

 「・・・42階層です」

 それについてきたマリエルが、周囲に人がいないことを確認してからそう答えた。

 意外に浅いな。

 「ランク的にはどうなのだ? 思ったより浅いと感じているが」

 「先程も申しました様に、ダンジョン探索がメインではありませんので余りそちらに時間を割いていないというのもありますし、うちのPTはダンジョン探索をするには人数が少ないというのもありますが・・・ランク的には浅めです」

 冒険者として到達階層が浅いというのは恥ずかしいのだろうか、言い訳にも聞こえる言葉の後に少し俯きながら答える。

 「そのPTの人数とダンジョン探索をする適正人数、後はどれくらい進んでいればランク相応かも教えてくれるか?」

 「はい・・・うちのメンバーは私を入れて4人。1PTが4~6人くらいですので、少なくはありますが少なすぎるということはありません。先日までCランクでしたから40~60くらいまで進んでいればランク的に相応と言えると思います」

 「それなら別に浅いというほどでもないのでは?」

 「一応大まかな区分的には40~60ということになりますが、Dランクの上位なら到達していてもおかしくはない程度ですし、50階層を超える位はしていないとどうしても下に見られますから・・・」

 「でも人数も少ないし何よりダンジョンメインではないのだろう?」

 「はい。ただそういう所は気にしないくせに、到達階層だけは気にする人というのもいまして・・・」

 あぁ、いるよなぁ、都合のいい事だけ見えて都合の悪い事は見えない人。

 「俺が言ってもどうにもならないかもしれないが、気にするだけ無駄だぞ。その手の人は粗探ししてでも言ってくるからな。それにそんな奴等ばかりって事もないだろう?」

 「はい、大体の人はそんなものだろうと言っています」

 「でも気になると?」

 「いえ、いつもは気にしていないのですが・・・」

 そう言って俺の方を窺うように見てくるマリエル。

 「そんな私がルイ様と二人で組んでダンジョン探索をするとかおこがましいのではないかと・・・気になりだしてしまいまして・・・」

 そんな事を考えていたのか。

 「それは杞憂というものだ。そもそも強さだけでPTを組むかどうかを決めたりするか? 違うだろう? 勿論強さも重要な判断材料ではあるが、それ以上に重要なのがその人が信頼出来るかどうかだと俺は思っている。人にも拠るかもしれないが、信頼出来ない相手とPTなど組めるものではないだろう。例えば、幾ら強くても危なくなれば仲間を見捨てて自分だけ助かろうとする相手とPTが組めるか? その点マリエルは会って間もないが、それでも信用に足る人物であると思っている。だからこそ、ただの通訳ではなくPTとして一緒に行動しているわけだしな」

 「ルイ様・・・」

 マリエルが両手を胸の前に組み、感動の面持ちでこちらを見詰めてくる。

 至極当然のことを言っただけのつもりなのだが、想定外に感動されてしまっているようで、瞳は潤み顔も上気している。

 「だからそんな事で気に病むな。それに俺はもっと深い所まで潜る気でいるからな。それに付き合っていたら否が応でも到達階層も深くなっていくさ」

 「・・・・私もお聞きしたいのですが、ルイ様の最高到達階層はどれくらいなのでしょうか?」

 躊躇いがちにそう質問してくるマリエル。

 何時かは聞かれるだろうと思っていたが、ついに聞かれてしまったか。

 だが素直に答える訳にもいかないし、嘘は極力つきたくない。

 仕方がないので、何時も通りの対応をする。

 「どれくらいと思う?」

 「・・・・300階層は超えているのではないかと思っています」

 「ほぉ、どうしてそう思った?」

 「昔、大賢者は300階層よりも深い所まで到達していた、と聞いたことがあります。ルイ様はソロとは言え、その大賢者ですら出来ない事をやってのけておられますので。後は・・・」

 「後は?」

 「女の勘です」

 それはまた何とも反論しにくい理由だな。

 「で、どうなのでしょう? 勿論答えられないということであれば、質問を取り下げますが」

 「誰にも話すなよ?」

 「勿論です!」

 話してもらえると分かったからか、瞳が好奇心でキラキラしている。

 「とは言え、事が事だけに明言は避けておくが・・・否定はしない、とだけ言っておこう」

 本当はもっと深いが当然300階層も超えている、嘘は言っていない。

 「やっぱり!!」

 飛び跳ねんばかりに大喜びのマリエル。

 本当に大丈夫だろうか?

 ついうっかり洩らしてしまったとかありそうな浮かれ様なのだが。

 「本当に話さないでくれよ? 何れはともかく、今の段階で騒がれたり急かされたりしたくはないからな」

 「お任せ下さい。何人たりとも洩らしたりはいたしません!」

 それが逆に心配になるのだが・・・。

 

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