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74話

 魔剣の鞘の注文を終え、奥の商品を見せてもらった。

 そこで先代の説明を受けながら時間一杯まで武器を見ていた。

 だがそのせいだろうか、マリエルの機嫌が悪くなったようなので、ご機嫌取りをしながら屋敷に帰った。




 「今日はダンジョン探索をするぞ」

 朝食を終え、自室に戻ってから脈絡もなくそう宣言した。

 「そう言われるだろうと思って準備は済ませてあります。少々お待ちください」

 何事もないかの様にそう言い、部屋を出て行くマリエル。

 「・・・・えっ?」

 一人になった部屋に俺の戸惑いの声が小さく響く。


 あれから数日が過ぎた次の休日。

 正確には休日ではないが気分的には休日、折角ダンジョン探索の許可を得ているのだから一度堂々と正面から入って、探索経験があると堂々と言える状態にしておこうと思ったのだ。

 こちら側のダンジョンに関しては、余り深くは・・・俺の感覚としては余り深くは攻略する気がないのだが、それでも何れは100や200程度は攻略してもいいかなと考えている。

 ただ、今の所は30階層までしか攻略する気がないが。

 何故か?

 単に死蔵している素材を売る都合上ってだけだったりする。

 自分が現在潜っている階層はもっと深いのに、浅い階層の素材しか売らないってのはどうなんだ? といった考えが浮かんだから、それなら売り切ったら次の階層を目指そうかとなっただけだ。

 それで次は40階層を突破して40階層までの素材を売る、と。

 はっきり言えばそこに意味などない。

 俺の気持ち的にその方がすっきりするというだけの話だ。

 そんな訳で探索とは言っても真面目に探索する気は余りなく、ささっと30階層クリアしてその先にある魔方陣に登録して帰るつもりだったのだ。

 なのでマリエルを連れて行く気はなく、一人で潜る気だったので伝えてもいなかった。

 だというのにそれを予測していたらしいマリエルに驚き、驚いている間に退出されてしまい伝え損なうという事態になってしまった。

 戻ってきてから伝えて置いて行けばいいと言えばそれまでだが、一緒に行く気満々で準備を整え、さぁ行こうという段になって『お前は留守番な』と伝えるのは気が重い。

 しかも原因が自分がちゃんと伝え損ねたからとか、益々気が重い。

 とは言え、連れて行ってたら今日だけで30階層は無理だろう、多分。

 俺一人なら数時間でも可能といえば可能だが。

 そんな事を考えていると、本当に準備万端だったようでマリエルがもう戻ってきた。

 「お待たせしました、ルイ様。ルイ様の準備がよろしければ行きましょう」

 自分が置いていかれる可能性など全く考えていない様子でそう言ってくる。

 「えっとだな、マリエル」

 「はい? 何かありましたか?」

 「実は今日のダンジョン探索は目標を30階層突破と考えていてな」

 「・・・・え? 今日が初めてのダンジョンですよね? それを1回の探索で30階層?」

 「あぁ。なので大急ぎで進行するので、身軽な一人でダンジョン探索をするつもりだったのだ。さっきは言い損ねてしまったが」

 足手まといとは言わない、そんな事で関係を悪くしたくはないからな。

 「ルイ様、それはいけません」

 急に真剣な表情をしたマリエルがそう切り出してきた。

 「ルイ様ほどの実力者であれば一人で、一回の探索で30階層突破も難しい事ではないのかもしれません。ですが、それはする必要がない無理です。勿論職業柄、無理に無理を重ねる必要がある時があることも承知しておりますが、必要がない無理は避けるべきです」

 「先ず、攻略目的での探索は魔方陣の関係で10階層単位が基本です。10階層進めば次からは準備万端でそこから再開出来るのですから。結果的にまだまだ余裕があるから次の10階層を目指すというのなら百歩譲って納得しますが、予定として低階層だからと30階層も進む事を、しかも大急ぎでなどと到底納得しかねます」

 「次に一人で行かれる事も問題です。ダンジョンでの危険は何もモンスターに限った事ではありませんし、時には同じ冒険者が敵になる事だってあります。道を切り開きながら周囲を警戒し時に戦闘もする。疲れたから休むといっても見張りを立てることも出来ません。無理があり過ぎます。普通は少なくても4~5人、多ければ幾つものPTで何十人がかりで探索するものなのですよ」

 「今回はルイ様の実力と低階層であることと私がいることでたった二人でも大丈夫だろうと思っておりましたが、本音を言えば他のPT、例えば私がいつも組んでいるPTですとかと一緒に潜るべき所だと思っております。10階層までしか進まないつもりでです。それを30階層まで進むとか、万が一、不測の事態が起こってしまったらどうされるおつもりですか」

 「あれほどの実力を持つルイ様ですので根拠もなく言っているわけではないのでしょうけれど、どうか必要のない無理などなさらない様にお願いします」

 そう瞳を潤ませ、下から見上げるように訴えてくる。

 言ってる内容は正論だが、その仕草は卑怯じゃないか? 

 言っている内容を置いておいても、その仕草だけで反論しにくくなるじゃないか。


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