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65話

 マリエルとのデートの日が来た。

 マリエルはデートと思っていないだろうがそれはそれ。

 期待するなという方が無理だろう。




 マリエルに促されるままに飛んでいるが、どうも冒険者ギルドの近くが目的地のようだ。

 今はメイドでも元は冒険者のマリエルだ、馴染みの店がギルドの近くにあっても何らおかしくはない。

 そう思うことで嫌な予感を振り払う。

 だがマリエルから指示された場所はギルド前であった。

 「なぁ、マリエル。ギルドなら今更案内されるまでもないのだが」

 「はい、先程ギルドから連絡がありまして、ギルドマスターからの呼び出しだそうです。時間がある時に来てくれとの事でしたので、お連れさせてもらったのですが・・・・・・あ、申し訳ありません、お伝えするのを忘れておりました」

 そう言って頭を下げるマリエル。

 確かに今も時間はあるが、今日でなくてもいいではないかと思ってしまうのも致し方ないのではないだろうか。

 真面目な所があるマリエルだから納得はできるが。

 分かっていた。

 分かってはいたのだ。

 やはりデートとは思われていなかったようである。

 ただ少し、そう少しばかり残念に思うだけだ。

 「忘れていたものは仕方がない、今後気をつけてくれればいい。それに相手はギルマスだ、待たせない方がいいのも事実だ」

 そう言いながら建物の中に入っていく。

 

 ギルドの中は思ったよりも賑やかだった。

 主に併設されている酒場のせいで。

 朝っぱらから酒盛りとはいいご身分だな、と思ったが携帯食の事を思い出し、優しい気持ちでスルーすることにした。

 それに命懸けの依頼をこなす事も多いであろう冒険者には、こういった命の洗濯も必要だろう。

 そうでないと体もそうだろうが、心が壊れてしまうだろう。

 などと考えながら奥に進み、カウンターの奥で作業をしている職員に声を掛けてギルマスに到着を伝えてもらう。

 依頼でも物色しながら待って、時間が掛かるようなら後にしようとか考えていたのだが、すぐ来ると予想でもされていたのか、そのまま執務室に案内される事になった。


 執務室で勧められるままに席に着き、後ろに控えようとしたマリエルを隣に座らせてからギルマスを見るが・・・なんか痩せた?

 「呼び出しがあったと聞きましたが、一連の事が解決しましたか? と言いますか、痩せました?」

 「あぁ、確かに解決はしたよ。結論から言うと、お前さんの要望は通った。その為に儂は本当に、本当に苦労したがな。ここまで苦労する事になるなら、一つと言わず三つか四つは『お願い』を聞いてもらえるようにしておくんじゃったわい。はぁ、今更そんな事を言い出すわけにもいかんからただの愚痴じゃが、今回の件でげっそりやつれてしまうくらい苦労したのじゃ、それを覚えておいてほしいものじゃ」

 「それはそれは、俺のために骨を折っていただき真に有難うございました。で、俺の要望が通ったという事は、俺は1階級昇級だけという事ですか」

 「違うじゃろ!! 2階級昇級と今月と来月のダンジョン探索権という話じゃったではないか。忘れたとは言わさんぞ!!」

 そう叫びつつ両手をテーブルに叩きつけるギルマス。

 「なるほどそちらでしたか。要望が通ったとの事でしたので、てっきり最初の方が通ったのかと勘違いしてしまいました、申し訳ない」

 あくまで勘違いしただけであって、前回の意趣返しなどではない。

 勘違いじゃ仕方ないよね。

 「オノレヌケヌケト・・・まぁいい、それとマリエル嬢はBランクに昇級じゃ。そういう訳じゃから帰る時に下のカウンターで手続きを受けておいてくれ。次に報酬の方じゃが・・・実は討伐に関しては話が纏まったのじゃが、買取に関しては難航しておってな、まだ決まっておらん上に何時になるかも明言できん状況でな、すまんがもう暫く待ってほしいのじゃ」

 マリエルの様子を横目で窺うが、自身の昇級を聞かされても思ったほど強くは反応していなかった。

 まぁ、予め聞かされてはいた訳だし、何日か時間もあったから気持ちも落ち着いたのだろう。

 「それはまた、随分時間が掛かるものなのですね」

 「本来ならこんなにかかったりはせん、今回が異例中の異例なのじゃ。事情は説明できないのじゃが、それを何とか堪えて今しばらく待ってもらいたいのじゃ」

 「勿論構いませんよ。ギルマスには随分骨を折ってもらったようですしね。この程度の事、何と言うほどのこともありません」

 意識的に爽やかな笑顔を浮かべながらそう答える。

 「ぐっ、分かってもらえて何よりじゃ。そういうことなので手続きの際に討伐報酬も受け取ってくれ。因みに50万マカじゃ」

 高いか安いか分からないが、俺からすると雑魚一匹狩っただけの上に素材は別でこれなら十分過ぎるほど美味いだろう。

 「分かりました。用件が終わったのなら、後に用事も控えておりますのでこれで退出させて頂きます」

 そう言って一礼してから部屋を後にする。


 「はぁ、本当にBランクになってしまったのですね」

 執務室を出ると、マリエルがそんな事を言い出してきた。

 「やったね、昇級おめでとう」

 「押し付けたルイ様には言われたくありません。・・・嬉しくない訳ではないのです、ただ微妙に納得しにくいだけで」

 「気持ちは分かるが他人からの評価なんてそんなものだよ。もし分不相応だと感じているのなら、相応になるように自分を磨けばいいだけの話だ。そうすれば少し早くランクが上がっただけということになるからな」

 「そう、ですね。ここの所はCランクの維持ぐらいしかできていませんでしたし、お屋敷での仕事も大分覚えられてはきている筈ですので、これからはもう少し頑張ってみます」

 「そうそう、がんばれがんばれ」

 「ルイ様についていくだけで否が応でも実力はつくでしょうしね」

 「そんな事は、ないのじゃないかなぁと」

 「いえ、そんな事はあります。断言してもいいくらいです」

 そんな断言いりません。


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