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60話

 マリエルから風呂の話を聞き、魔道具の話を聞いた。

 その際につい自分のことを話しすぎてしまったかもしれない。

 マリエルに限った話ではないが、気を緩めすぎてしまっているかもしれないな。




 風呂から上がり、今はバルコニーでペ〇シ片手に涼んでいる。

 既に外は真っ暗だが、部屋の、今までは特に気にしていなかったが魔道具なのだろう、明かりでバルコニーにいてもそこそこ明るい。

 それにしても、なかなかいいお湯だった。

 風呂場は小さめの銭湯位には広かったし、温度もちょうどいい塩梅だった。

 何より良かったのは、ちゃんと浴室と浴槽が分かれているタイプだった事だ。

 個人的に、西洋式の3点ユニットは好きじゃないのだ。

 しかし、浴槽に湯を注ぐ口が何かの雄雄しい動物の顔なのは、世界が違っても感性が近いという事なのだろうか。

 そんな風呂を貸し切り状態で味わったのだ、気分も良くなるというものだろう。

 「さて、先程の続きを聞きたいのだが、いいだろうか?」

 その様に近くに侍っているマリエルに話しかける。

 「はい。・・・・宝箱の目安、でしたか?」

 「そうだな。どれくらいで見付かるのが一般的かという話だな」

 「それに関しまして、これはルイ様もご存知とは思いますが、宝箱は基本的に奥に行けば行くほどよく見付かり、中身の質も良くなります。つまり、浅い階層しか潜れない者と深い階層まで潜れる者とでは、量は勿論質の面でも大きな差が生まれます。ですので一概に言えないのですが、私が聞いた範囲では浅い階層でも数年に1回、深い階層なら年に数回くらいは見付けていますね」

 ご存知ではないが・・・ここの連中の深い階層っていうのは、100階層にも満たない階層のことだろうから、俺なら毎月見付けていてもおかしくはないという事になる。

 なるのだが、かれこれ数年潜り続けているが、ただの一度も見付けた事はない。

 流石におかしいな。

 運で片付けていい問題ではないだろう。

 何をどうすればいいのかは全く分からないが、後でサクヤに相談でもしてみるか。

 「それならもう何度も見付けていないとおかしいという事になるはずなのだが、残念ながら一度も見付けていないのも事実だ。何か心当たりがあったりはしないだろうか」

 「それは不自然な話ですね。ですが申し訳ありません、私には皆目見当がつきません」

 そういい頭を下げるマリエル。

 「いや、そんな事で頭など下げなくてもいい。マリエルに非はないのだからな」

 「もしかしたらですが・・・・そもそも宝箱がないダンジョンなのかもしれませんね」

 「・・・・なるほど、そういうこともあるかもしれないな。そういうダンジョンもあるのか?」

 「いえ、聞いたことはありません。ふと、そう思っただけです」

 「そうか。だが、聞いたことがないからないと決め付けるのは早計だろうからな。可能性の一つとして考えておこう」

 「あやふやな話で申し訳ありません」

 そう言って、また頭を下げるマリエル。

 「だから頭など下げなくてもいいと。こちらが請うて話を聞いたのだ、マリエルが謝る要素は何もない」

 「まぁ、問題が俺になくダンジョンにあるのなら、こちらのダンジョンでは普通に宝箱を見付ける事が出来るだろうさ。こちらでも見付けられないなら、いよいよ俺に何か問題があるという事になってしまうが」

 そうでない事を祈ろう。

 「この話はもういいさ。風呂の前に頼んでいた件はどうだった?」

 「クロード様の教育内容に関してですね。お聞きして来た所に拠りますと、明日の午前は教養の授業で、午後は今日と同じく礼儀作法の授業だそうです。そして当面はこの三日間の授業計画を繰り返し、クロード様及びルイ様の学習状況によって、日数配分を変えられるそうです」

 「思ったより種類が少ないのだな。そして体育に相当するものはないのか」

 「・・・・・・・」

 何やら言いたげな視線を向けてくるマリエル。

 「どうかしたのか?」

 「・・・・・・いえ、何でもありません。それと今日の算術の授業ですが、ルイ様はもう必要ないと仰られておられるので、以後参加はしないともお伝えしておきました」

 おぉ、よくやった。

 流石マリエル、言い難い事をさくっと済ませておいてくれるとは。

 「そうか、ありがとう。手間が一つ減ったよ。しかしそうなると、クロード様は四日に1日休みなのか? それとも七日に1日?」

 「いえ、丸々1日お休みになられる日はございませんよ」

 「なん・・・だと・・・・」

 あの歳の子供に休日が存在しないとか、日本なら虐待判定確実だぞ。

 まぁ、その様な国は地球側でも幾らでもあるだろうが・・・。

 とは言え、貴族の子供といった裕福な家の子供でもそうなのか。

 貴族の子供だからこそ、かも知れないが。

 「貴族にとってこれは普通なのか?」

 「申し訳ありませんが、他の貴族家を知らないので、私にはお答えしようがございません」

 「それもそうか。すまない、愚問だった」

 「いえ、お気になさらず」

 それにしても・・・そうかぁ、休みなしかぁ・・・。

 益々貴族になんてなるものじゃないなぁ、と思ってしまうな。

 この場合は、貴族家なんかに生まれるものじゃないな、か。

 まぁ、現代日本に生きている俺だからそう感じるだけなのだろうけど。

 「だとすると、次に一日空けられる日は三日後という事になるな。俺の身分では、毎日必ず礼儀作法を学ぶ必要もないし」

 多少貴族と接する機会がある程度の俺は、見苦しくない程度の礼儀作法さえ身に着けておけば十分だろう。

 「約束、忘れないでくださいね」

 少し顔を赤くして、そう言うマリエル。

 「勿論だとも。ただ、言うまでもないが、俺はこの街に不慣れだからな。行き先などは任せるぞ」

 「はい、お任せください」

 そう答えるマリエルは、実に魅力的な笑顔を見せてくれるのであった。


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