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1話 - 犬の姿をした神様

頑張って書いていきます。

面白かったら評価とかレビューというやつをお願いします。

「こんにちは、私、フォズと申します」


 晶が目を覚ますと、なんとも殺風景な風景が眼前に広がっていた。

 犬小屋と餌皿。それから犬……白くてモコモコの紀州犬。成犬ほどの大きさだ。あとは、何故か本棚が1つ置いてある。

 

 それから、目を閉じたまま前で手を組む美しい女性がいた。

 天使だ。断じて比喩ではない。

 背中から白い翼をはやしており白いシルクであしらわれたドレスは実に麗しい。

 

 ……もしかしてと、ある発想が晶の中で芽生え始める。

 

「天国?」


 誰にいうでもなく呟く。

 すると、どこからか返事が返ってきた。


神界しんかいですよ。世界と世界の狭間、霊体でも中々入れない場所です」

「神界ってなんだ——って、ん?」


 あまりにも違和感無くその声が聞こえてくるので、思わず返事をしてしまったが、その声は晶の正面から聞こえてくる。

 一瞬天使が言ったのかと思ったが、今聞こえてきたのは男性の声だった。

 それが意味するのは……と考え、晶は視線を下に下げた。

 

「犬が……喋ってる?」


 自分で言って馬鹿馬鹿しくなった晶だが、天使が口を閉ざしている以上それ以外ありえなかった。


「いえ、犬ではなくフォズという名前が……」


 どうやら彼——フォズが本当に話しているのだと実感した晶は、持ち前の好奇心で会話をしてみることにした。


「でも、紀州犬では?」

「いえ、だから」

「紀州犬じゃん」

「…………もう紀州犬の形をしているということにしましょう」


 どこか諦めたような語調だが、やっぱり目の前の紀州犬——フォズは日本語を話していた。

 

「なんで犬が喋ってるんだ……?」


 晶の胸中には、ひたすらに疑問が生まれた。


「それはですね、私が神だからでして」


 晶は宗教勧誘かと思いたくなったが、現にこうして犬喋ってるという事実がある以上、説明を一蹴するのもどうかと思い会話を続けていくことにした。


「……もしかして、ここって……死後の世界? あ、俺は高峯晶って言います」


 フォズの説明を聞きながら、少しずつ意識がクリアになった晶は状況の整理に努める。

 晶の言葉に「存じていますよ」と答えたフォズは、何事かを説明してくる。


「だいぶ落ち着かれてきたみたいですね。正解ですよ、ここは死後に選ばれた者のみが至れる空間——神界です」

「多分あれだよね……あ、敬語のほうがいいのかな?」

「いえ、話しやすいようにしてください。敬語というのはあくまで人が決めた表現、私のような存在にはどちらでも構いませんよ」

「じゃあ今まで通りで。それで聞きたいんだけど、あの猫はどうなったの?」

「生きてます。おそらく何が起きたのかを理解はしていないと思いますが」

「そっか。ふぅ……良かった」


 とりあえず一番不安が消えて、晶は息を吐く。

 

「……お優しいんですね」


 そんな晶の様子を見て、フォズはにこりとした。

 犬なのに笑っているということが明確に見て取れて晶は驚いたが、それをできるだけ表情に出さずに答える。

 

「まぁ……動物が好きだからね。死んじゃったのも自業自得だと思ってるよ」


 自分の人生を今更ながら思い返した晶は、最期に良いことができたと微笑んだ。


 そう言って、フォズは初めて天使の方を向いた。

 

「……はい、フォズ様」

「おお」


 なんとも阿呆らしい声が出てしまった晶だが、それも仕方ないかもしれない。

 それぐらい天使の声は綺麗だった。

 

「紹介が遅れてしまいましたね。彼女はフィルミーナ。私の部下をしてくれている天使です」

「……主様よりご紹介に預かった、フィルミーナと申します」

「か、狩峰晶です」


 緊張して声が裏返る晶。彼女は晶を呑み込むような神性を放っていたからだ。

 普通に生きていれば感じることのない神秘的な気配に、晶は彼女から目を逸らしがちになってしまう。

 

 後のフォズの説明によると、フィルミーナはあまり喋らない性格らしい。

 ……その方が遠慮がなくていいかもしれないしとも晶は思った。

 

 ……その上司であり、相当凄い神様らしいフォズにはなにも感じなかったのは何故かと感じる晶だったが、その答えへと行き着く前にフォズが発言する。


「ふむ。やはりここにお連れするのに値した人物でしたね」 


 フォズは晶の発言を聞いて、満足そうにうなずいた。

 だが、晶はここにきて初めて知った事実に驚く。

 

「君が俺をここに連れてきてくれたのか?」

「ええ。あなたの動物を愛する心を尊いものと見て。本来人は死後に天国、地獄、冥界のどこかへ逝くのですが、あなたは私が気に入ったのでここにんだのです」

「それは……ありがとう。素直に嬉しいよ」


 自分の動物たちに対する純粋な愛情を理解してもらえて、晶は少し感涙しそうになりながら感謝を述べた。

 

「どういたしまして。しかし……残念なのですが、アキラさんを蘇生させることはできません」

「あー、それはなんとなく分かってた」

「そうなのですか?」

「俺が住んでた日本って、まさに今経験しているような展開がある娯楽小説があってさ」

「ラノベですか? 異世界転生系の」

「知ってるの!?」


 世界と世界を管理している特性上、フォズは人間たちの文化にも詳しかった。

 

「むしろこっちが知っていらっしゃったのかと申したい気分ですよ。有名になりましたね、ウェブ小説も」

「まさかの古参かよ! ……神様にも受けるってすげえなウェブ小説」


 見た目は完全に紀州犬だというのに、どうやって読むんだろうかと不思議に思う晶だったが、フォズの声で思考から引き戻される。

 

「ということは話は早いかもしれません」


 暗に、分かりますよねと聞かれるような間を感じた晶は答えておく。


「他の異世界に転移或いは転生していいよ……ってこと?」

「正解です。どうですか? ラノベのように魔法があるような世界のネイトーマ大陸というところですが」

「……それは興味ある」


 晶だって男である。魔法があるような世界に憧れたこともあった。


「それでは転移するのは決まりですね。そしたらその世界に持って行く力を…………ここから選んでくれませんか?」


 言いながらフォズが本棚から一冊の本を取り出す。

 晶は、口で取り出すのは辛そうだなぁと思った。


「……おお、色んなものがあるんだなぁ」


 とりあえず中身をパラパラと捲ってみると、様々な能力が列記されていた。


「でも、うーん……」


 魅力的なものが多いが、これだ! というものが無い。 

 反応が気になったのか、フォズは晶を心配そうに見つめる。


「見つかりませんか?」

「いや、なんとなくいいなって思えるものはあるんだけど……」 

「どうしましょうかねぇ」

「そうだなぁ……」


 そうやって1人と1匹が悩んでいた、その時のことだった。

 

 犬小屋の方から大きな揺れが起き、たくさんの影が飛び出してきた。  

 

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