プロローグ - 動物に好かれる青年
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狩峰晶という青年はあまり人付き合いが得意ではない人間だ。
現在大学3年生の晶は、卒業までの必須単位を取り終えてバイトに精を出しているが、どうやら同級生の中には既に就活の準備をしている学生もいるらしい。
面倒だ……そんな感情が晶の胸中を渦巻く。
これからの晶に待っているのは、ひたすら人に揉まれて人に流されるような、そんな日々だろう。
……晶は、心底自分は人というもの自体が好きではないのだなと苦笑する。
しかし、そんな晶にも好きなものがあった。
「おっ」
バイト先のコンビニから帰り道を歩いていた晶の目の前に、一匹の黒猫が現れる。
——晶が好きなもの、それは動物だ。
「こっちこいー」
黒猫と一定距離離れると、晶はしゃがみ込んで猫を手招きする。
「にゃぁーん」
すると驚くべきことに、黒猫はねこじゃらしといった道具も持っていない晶の股下でされるがままにされた。
「ははは、お前やっぱ野良か」
首輪をつけていないことを確認した晶は、その黒猫が野良であることを確信する。
「まっ、俺にかかればこんなもんよ」
通常、野良猫は人に警戒心を持つものだ。
しかし、晶という人物は、ありえないぐらい動物に好かれやすい。
幼い頃に行った林間学校では、山中で棲息していた野生のリスたちを肩に乗せたほどだ。
「……でも、こんな能力もこんな世の中じゃあんまり役に立たないけどね」
ただ好かれやすいというだけで、別に意志の疎通ができるわけではない。
それが悲しい。
だが晶は、まぁ……と思う。
動物に好かれやすいだけでも嬉しい。できるならば、会話してみたいけど。
「はは」
そんな、なんとなく胸をついて出た荒唐無稽な考えに自分で笑っていた——その時だった。
甲高いクラクションの音が響いた。
「にゃああーん!」
「ちょ、おまえ!」
驚いた黒猫が車道へと飛び出していく。
そしてすぐ側まで迫っているのは自動車だ。
危ない! という感情が先行し、猫を追いかけて、車がすぐそこまで迫る車道へと飛び出した晶。
「待てぇ!」
ヘッドスライディングのような形で目の前の出来事驚いて停止している黒猫の前に飛び込む。
そしてさきほど猫が飛び出してきた茂みに向けて思い切り投げる!
「よ、し——! って、あ……」
身体に幾つか擦り傷を負ったものの、猫を助けられて喜んだ晶だったが、眼前には自動車のナンバプレートがあった。
この光景が最期であり、始まりでもあることを、晶はまだ知らない。
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