エピローグ
目が覚めたあたしは、ふっかふっかのベッドの上にいた。最初に目に入ったのは、会長のニコニコ顔。
「おはよー、つぐみくーん」
「会長……。ここは?」
「結子の家ですー。つぐみくんあれから丸一日ずーっと眠っていたんですよー。やはり急激に能力を使い切ってしまったので疲れたんでしょうねー」
あたしは半身起こして室内をぐるりと見回した。
無意味に広い。
何なの、この高価そうなアンティークな家具一式は。しかも、あたしの眠っているこのベッドなんか天蓋付だし。
バルコニーなんかもあったりして、入ってくる風にレースのカーテンがゆらゆらと揺れている。
童話とかに出てくるお姫さまの部屋みたい。
知らなかった。与謝野さんって、お金持ちのお嬢様だったんだ。
「あ、会長! 棺桶に入っていた人たちは?」
「棺桶はあんまりな言い方ですねー。安心してくださーい。ちゃんとお家に送り届けましたからー」
「そっか。よかったぁ」
安心して、あたしはベッドに身を投げる。
「ボクが軽率でしたー。まさか霧原のような男があそこにいたなんてー。やっぱり君を連れていくべきじゃなかったですねー」
「会長、そんなあたし……」
確かに怖い目には合ったけど、あたしは自分の気持ちに気付くことができたんだし。
「どこか頭でもぶつけましたかー?」
しおらしくしているあたしの頭を、会長はぐにゅぐにゅとなでる。
「どういう意味ですか?」
「いやー、いつものつぐみくんならー、ここでぼかんと一発ー」
あたしはこめかみに血管を浮かばせて、枕を投げつけた。
「こういうことですかっ?」
「そうそう。この方がつぐみくんらしいですよー。あ、これー」
会長はあたしにメガネを手渡す。ちゃんと拾っておいてくれたんだ。
「もういらない」
「いいんですかー?」
「うん」
信じてみるよ、自分を。だって、今の会長はちゃんと制服着ているもん。
いつもと変わらない会長。でも、あの時の会長も会長なんだよ。
それにあたしには会長に言わなければいけない大事なことがあるんだから。
あーっ、言う前からすっごく緊張してきたよ。あたしは真っ赤になっている顔を見られたくないから、目から下を枕で隠す。
「会長……」
「はーい」
「あの……あの……」
「はーい?」
「あたし……あたし……、会長のこと」
これ以上は恥ずかしくって声に出して言えなかった。
「だったら、言わなければいいのよ」
いきなり、怒り二百パーセントな与謝野さん登場。包帯姿がちょっと痛々しい。
テレポートしてきたな。しかも、あたしの心まで読んで。
えぇぃ、こうなれば。与謝野さんに聞かれたってかまわない! どうせ、あたしの気持ちはもう知っているんだから。
「会長、あたしの心を読んで」
す……。す、す……。
「すー?」
「お兄ちゃん、ダメよっ!」
邪魔に入る与謝野さん。
負けるな、つぐみ!
あたしは会長のこと……好き。
つ、ついに言ってしまった。
「ボクはつぐみくんのこと―――――」
会長はその先を与謝野さんに聞かれないように、そっとあたしにだけテレパシーでささやいてくれた。
おわり
最後まで読んでくださってありがとうございます。
ESPものが書きたいと思い立って書いた作品でしたが、何だか違う方向へと進んでいったような気がします……。でも、個人的には気に入っている作品なので続編が書けたらいいなと思っています。
皆様にも気に入っていただければ幸いです。




