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「つっつつつ司さん!?」
航平といた香菜は思わず目を見開いた。
話の内容にあった、司がその場にいたからである。
「どーして…!?」
「あー俺はね、収録の間少しだけ休もうと思って友達と来たんだ。」
そして司は航平を一瞥し、そしてー
「彼氏?」
「違います!」
なんだ、違うのか〜と、つかさはなんともわからない顔をした。
「香菜、この人…」
「あ!そうだった!司さん、この人は航平くんで、私の幼馴染なんです。」
「うす。」
「航平くん、話てた佐藤司さん。声優さんなの。」
「よろしくね。」
「どうも。」
香菜の目に、2人の間に火花が見えたのは気のせいだと思った。
「幼馴染ねぇ…」
「はぁ。」
「香菜ちゃん、俺たちここ座っていい?」
「え?あ、はい!どうぞ!」
(顔赤くしすぎだろ…)
航平はため息をついた。
これでは、司にバレるのも時間の問題である。
「航平くんはさ、」
司は航平の前に座った。つまり香菜の隣である。
「香菜ちゃんのこと好きなの?」
司がニヤニヤと微笑みながら航平に尋ねた。
「幼馴染ってなんか怪しいよね」
「ちょっ…司さんっ!?」
「あ、大丈夫です。彼女いるんで。」
「なんだー面白くない。」
ちぇー、と口を尖らせつつ、司はコーヒーとサンドイッチを頼むことを決めた。
「えーと、香菜ちゃんは?航平くんも、遠慮なく頼みなよ。奢るし。」
「えっでも…」
香菜は司に遠慮してモジモジとしていた。
チラチラと、航平を見るその視線が、航平には鬱陶しく思えた。
「…じゃあ俺ブラックで。」
「ブラックね、香菜ちゃんは?」
「じゃ、じゃあ…いちごパフェで…」
司が店員に頼んだとほぼ同時に、航平は自身が最初に頼んでいたサンドイッチを食べ終えた。
「航平くんは大人だね。ブラック飲めちゃうんだ。俺飲めないからさー。」
「確かに童顔ですもんね。」
「結構気にしてるんだよー?年齢確認で引っかかることもしばしば…」
そこで、香菜がトイレに立った。
2人きりの空間に耐えられないのか、航平はやって来たコーヒーを一口飲んだ。
「航平くんは、香菜ちゃんのことを可愛がってるんだね。」
「まぁ幼馴染だし。あいつの考えてることは大体わかりますし、それに…」
「『妹』みたいな?」
「…はい。」
司は肩をすくめた。
「妹にしては過保護すぎないかい?」
「さっき言いましたけど、俺彼女いますからね」
「ふーん…厳しいお兄さんなんだな。香菜ちゃんもなかなか彼氏ができないわけだ。香菜ちゃんにも原因はあると思ったけど、君はかなり周りの男を蹴落としているね」
「司さん」
航平は司の言葉を遮った。
怖かったのだ。
少し年上の、
何を考えているかわからない、この男が。
「あんた、何がしたいんだ。」
「…香菜ちゃんってさ、可愛いよね」
司は笑顔で答えた。
「…それだけだよ」
「あんた、もしかして…」
「司さん」