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「さてと、まずは…」
司に言われ、声優事務所を調べ始めた香菜は、手始めに司の事務所について調べ始めた。
しかし、
「げっ!…こんな倍率高いの…」
声優事務所は芸能事務所の一環であるから、やはり競争率というものは高い。
しかし、そんなことであきらめる香菜ではない。
めげずに自身の大学で取れる資格と募集要項を見比べていく。
香菜の大学は国際が多いので、使えるものは多いとは言えない。
「こことここならこの資格で、これが…ん?」
調べている途中、ふと香菜は手を止めた。
色々調べたはいいものの、自分には何が向いているのか。
自分には何ができるのか。
「私の長所ってなんだっけ…」
今日はじめてあった人に言われ、
大事な部分を見落としていた。
「こんな、簡単に」
(好きという理由で)
「職業決めていいのかな…親にも先生にも何にも言っていないのに…」
「だから俺に相談したと」
「航平くんなら、ガッツリと厳しーく暴言を吐いてくれると思って」
「お前俺をなんだと思ってるの?」
香菜は次の日、東京に遊びに来ていた2つ年上の幼馴染に相談をしていた。
内容はもちろん、昨日のこと。
「声優事務所で就職とか、大変そうだよなぁ…他人の管理できない俺にはぜってー無理だわ…」
「私自身向いてるかわかってないし。だからこの際、他人から見た私を聞いて、検討したいの。どんな酷いことでもいいから、なんでも言って!!」
お願い!と、顔の前で手を合わせる香菜を見て、目の前の男ー長谷川航平はうーん、と腕を組んだ。
「向いてるってのはその人の良いところとかから取るもんだろ?お前良いところねぇもんな」
「なにそれひっど」
「はぁー…なんでも言っていいんだよな?」
ため息をついた後、チラリと香菜を見た航平を前に、香菜は急いで座り直した。
その喉がゴクリと音を立てる。
「まずはお前の悪いところだな。んーと、人の話を聞かないのが1番かな」
「うっ…」
「だから他人がどうこうアドバイスしても我が道を押し通す。だからお前にアドバイスするのは嫌なんだ。無意味だから」
「…めっそうもない…」
「だよな、
だけどそれが長所でもあるの、知ってたか?」
航平のその言葉に、香菜は顔を上げた。
「え…?」
「確かにお前は人の話は聞かないし我が道を押し通してはいるが、誰になんと言われようが意思が硬く途中でやめることは絶対にしない。お前はお前の道をちゃんと歩けてるっつーか、ブレないっつーか。中途半端じゃないんだよな。」
「航平くん…」
「まぁなんつーか、向いてるか向いてないか、で悩むんじゃなくて、もっとこう…お前がそれがしたいならそのために努力すればいいだけなんじゃねぇn…「こっうっへっいっくーん!!!」…!!うっわ!!だ、抱きつくな!!」
航平の言葉を聞いた香菜は航平に抱きついた。
まるでこれはー喜びに満ちた犬。
尻尾を振っているのがわかる。
「航平くんがそんなこと思ってたなんて、私しらなかったなぁー!嬉しいぞぉ、このやろー!!」
「ってこら!!頭撫でんじゃねぇ!!お前より年上だっての!」
香菜は航平から離れて、改めて航平を見た。
「ありがとね、航平くん」
「別に、クソな幼なじみが変なことでウジウジしてっから猿でもわかる励ましをしてやっただけだ」
「なにそれ可愛くない」
「可愛さ求めてねぇよ」
「昔はもっと可愛かったのになー。なんでこんな、ヤンキーに…さつきちゃんが可哀想だ…」
「誰がヤンキーじゃ、こう見えて公務員だわ。てかさっきも言ったけど、お前より年上なんだからな、しかも2つも」
ちなみに、さつきは彼の彼女である。
「精神は私のが上じゃん?」
「お前この飯奢れよ」
「やだよ、年上でしょ?」
「ぶっ殺すぞ」
その時だった。
「あれ?香菜ちゃん?」