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空っぽの私を  作者: なつ
彼女K
7/9

6

(今日は本当に楽しい1日になったなぁ)

あの後、香菜は司とアニメイトに行った後、少しだけカフェをして、家に帰った。

「今日はありがとう!付き合わせちゃったみたいで、ごめんね?」

「いえいえ!楽しかったので、すごくよかったです。」

2人は香菜のマンションの前まで来ていた。

(もう、お別れなのか…)

帰りたくないな、と香菜は心の中でそう思った。

だけど相手は芸能人だ。声優という世間ではそこまで公とはならないが、やはり有名人であることには変わらない。

(相手に迷惑かけたくないし、そろそろ離れよう)

「じゃっ、じゃあ、私はこれで!!」

「あ、」

香菜が後ろを向いてマンションに入ろうとした時だった。

「待って!!」

司が、香菜を呼び止めた。

「あのさ…」


「連絡先、聞いて良いかな?」



(やばいやばいやばいやばい!!!)

司と連絡先を交換した香菜は家に帰るとすぐにベッドに飛び込み足をバタバタさせた。

(信じられない…私が、私が佐藤さんの連絡先を…)

今まで雑誌やテレビでしか見ることができなかった憧れの人。

しかし今日はその人を直接観ただけでなく、連絡先までわかってしまうという香菜にとっては喜び、いやそれ以上、言葉では言い表せない今までの中での1番の幸福だった。

「そっそうだ!とりあえず送らないと!!」

香菜は手にもつスマホからsignという無料通話アプリを開いた。

彼女は落ち着いて、それでも緊張し て司のアカウントを登録した。

(こんなものかな…)

とりあえず香菜は名前と一言だけを添えることにした。

あまりにも長い文だと、読むのにも返信するのにも時間がかかり、芸能人として忙しい司にとっては迷惑だと思ったのだ。

(それでも、嬉しい。見てくれるだけで…)


風呂から出てきた香菜は自分のスマホにメッセージが届いていることに気づいた。

「あ!!」

慌ててスマホをとり、ベッドに座る。

彼女はドキドキしながら画面をタップした。

〝登録ありがとう!佐藤司です。よろしくね〟

「〜〜〜〜〜!!」

彼女は本日2度目のバタ足をした。

そこから彼女はテレビでアニメを見つつ、司からの返信を待って、来ては返した。

2人はいろんな話をした。家族、友達、大学、仕事、趣味のこと。

2人にとっての趣味、アニメ以外には他にない。

好きなアニメやゲーム、声優の話をした。

話が長くなりそうなので、会話を始めて1時間、2人は電話を始めた。

そして話はどんどん流れ、香菜の就職の話をした。

香菜は声優になりたかったが、自分の声に魅力がないこと、親に反対されたこと、自分のために親にお金の負担をかけることが嫌だ、ということを話した。

司は何も言わず、香菜の話を真剣に聞いていた。

香菜が全てを話し終えた後、彼は香菜に落ち着いた声のトーンで、こう切り出した。

『香菜ちゃんさ、芸能界の裏方の仕事はどうかな?』

「え?」

香菜は自分の耳を疑った。

彼は今、なんて。

『番組とかが好きならADとか、アニメが好きならイラスト…まぁアニメーターは専門学校が多いからあれか…外国語には厳しいかな…そんなこともないかな…』

「え、えっと…」

『声優が好きならマネージャーでもいいし、企画するのが好きならイベント関係者になるのもあるよね、道としては』

自分が、自分が声優のマネージャーやイベント主催者…?

声優になれたら、と思った時はあった。

大好きな人たちと、

この人たちと仕事ができたら、

自分はどれくらい幸せだろう、と。

だけどマネージャーやイベント主催者という表には立たず裏方にある職業の案はなかった。

(や、りたい!!)

香菜は電話を持たない拳を握りしめた。

「佐藤さん、私それやりたいです!」

『本当に?マネージャーとか倍率高いけど…俺は応援してるよ!!』

「はい!ありがとうございます!」

『いえいえ!じゃあねー…』


(大好きなアニメに関わる仕事…素敵じゃないか!!)


司からアドバイスを聞き、電話を切って、香菜はすぐに仕事探しのページに飛んで行った。

今までに考えたことのない職業だったので、香菜は今まで以上に戸惑った。

(まずは手始めに…)

彼女は司の所属する声優事務所を検索した。

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