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空っぽの私を  作者: なつ
彼女K
6/9

5

その後の合コンは香菜にとって最高のものとなった。

いつもの合コンとは違う。趣味を分け合える人がいる。自分の憧れの、好きな人が目の前で笑っていることが、香菜にとっては幸福な時間だった。


しかし、どんな時にも終わりの時間というものがある。

「私、そろそろ帰ろっかなー。」

と、今日の合コンの中で男子から人気が高かった女子の声でお開きになった。

(今は…9時か。タクシー、いや、電車の方が安いし。まだ時間あるからブラブラして帰ろうかな…)

香菜が1人これからの計画を立てている時だった。背中をポンッと軽く叩かれた。

パッと後ろに振り向くと、それは司だった。

「今から帰るの?」

「佐藤さん…」


まだ時間を潰すのだと、そう伝えると、司は香菜の手を取った。

「ついてきて。」

司が行く方向に思うがまま香菜は引っ張られた。

だが、彼女にはどこに何をしに行くのかといった目的はどうでもよかった。

彼女の意識は、全て、司と繋がっている手のひらに注がれていた。

(て、ててててて手が、手がぁぁぁぁあ⁉︎⁉︎⁉︎どうしよ⁉︎私今、佐藤さんと繋いでいるんだよね⁉︎だ、だめ!落ち着いて、見ちゃダメ、見ちゃダメよ!…あああダメ!見てしまう!!こーなったら…バルス!!…目がっ目がぁぁぁ!!!)



着いた先はー


「ア、ニメイト…」

それはもう、アニオタにとっては聖地でしかないアニメイト本店だった。

「いやー!今さ、俺の好きなアニメのカップルフェアみたいなのしてるから、1人ですごく入りづらくて!香菜ちゃんがアニメ好きで本当に安心した!ありがとね!」

…少しでも、カップルの行きそうな場所を想像した自分はバカだったのかもしれない

香菜は、少しでも彼との進展に期待した自分を馬鹿、愚かとまで思ってしまった。


「香菜ちゃんこれ知ってる?『天神様の導きを!!』って言うんだよ?俺がね、ヒロインの弟役なんだ。こっちは女の子は好きじゃないかな?『職恋』。俺は出てないけど、浅田晋助さんとか、逢見昇太くんとか、結構有名な声優が出てるんだよー」

司が語る説明も、香菜の心境からして、彼女の右耳から左耳へと抜けてしまっていた。

だが、

(だ、ダメだ!せっかく佐藤さんの話なのに!しっかり聞こう!…うぅ、緊張するな…)

「そうそう、俺が欲しいのは…」

司が自分の目的のものを探し始めたので、香菜も慌てて付いて行った。

「なんていうアニメですか?探します!」

「ありがとう!といっても、すぐに見つかるとは思うんだけど…『engage』って奴だよ」

「それはどーゆー…ギャルゲー系ですか?」

「いや、ファンタジーだよ。普通の。ただ、少し恋愛要素があって…」


司が言うことには、そのアニメの主人公とヒロインがアニメで結ばれた記念に、アニメイト限定の2人の模様の入ったマグカップを販売し始めたのだと言う。だが、そこには「カップル様大歓迎」という貼り紙が横にあったのだという。

(そーいや、私それは見てないなぁ、録り忘れたのかなぁ?帰って見ようかな。)

「なんせそのヒロインがすげー可愛くてな、絵柄も可愛いし、ちょうどいいかなって思ったんだけど、行けなかったわ〜、独り身だからね笑」

「それはなんとも大変な…あ、あれじゃないですか?」

「ん?…あ!本当だ!あれだよ!ありがとう!!」

香菜はマグカップがたくさん積まれてある店棚を見つけた。横には司が言った通り、「カップル様大歓迎!!」という貼り紙があった。

司は急いでその中の一個を手に取った。

「あー良かった!昨日発売だからまだ売り切れてないとは思ってたんだけど、あまりに売れてるな。今日来て良かった。」

「手に入れることができて、良かったですね!…あれ?」


香菜は気付いた。今の現状に。

(まってまって?「カップル様大歓迎!!」?…カップル?え、ちょ、ま、わ、私、佐藤さんとカップルに見られてるってこと⁉︎)


「?どーかした?」

「ハッ!!い、いえ、なんでもないです!!」

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