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第84話『突き付けられた事実』

「――アルテ、ミリアス……!」


「……おや、君は……確かメイリーの友人だったね。僕の妻が世話になっている」


「何が妻ですか、貴方が一方的に言い張っているだけでしょう……!」


 朗らかに笑ってさも当然のごとく告げるアルテミリアスを、レリアを背後に庇いつつリールが睨みつける。至極不思議そうな顔で首を傾げるアルテミリアスは「まあいい」と笑い飛ばすと、警戒態勢を取るエマに視線を向けた。


「……エマ、エマ。うん、やはりこうして口にしてみるといい響きだ、良い名前をご両親に貰ったんだね。あぁ、名前は魔王様に聞いたんだ、以前は聞きそびれてしまったからね」


「魔王……?何故、魔王が私の名を知っているというのですか」


「さぁ?魔王様は、我々一介の魔族などでは及びも付かないほど高次の高みにいらっしゃる。いやはや、彼女がただのヒトであったならば、彼女も妻に迎えたかったほどさ」


 無駄に優美な仕草で髪を掻き上げたアルテミリアスは、その手とは逆側の手に持った首を明後日の方向に放り投げる。ソレは既に首から下など弾けて消えており、傷口はグチャグチャのスクラップのようになっている。

 ゴロリと転がったソレからは強烈な血臭と紅い液体が溢れ出しており、辺り一面を塗り尽くしていた。


 ソレを見たレリアが青ざめた顔で「ひぃ……っ!?」と悲鳴じみた声を漏らす。と、すぐにリールがレリアの両眼を手のひらで覆って、その地獄のような光景を覆い隠した。


 アルテミリアスの背後――彼が突き進んで来た道には、文字通り屍の山が築き上げられている。街の騒動から逃げる為に密集して避難に当たっていた内、いくつかの学園に通じる大通りの一角だ。今の殺戮だけで、一体何人の命が奪われた事だろう。

 坂道に掛かる重力に従って、撒き散らされた大量の血液がエマたちの足元へとドクドクと流れ落ちてくる。中には、僅かな流れににも攫われてしまうほど小さく吹き飛んでしまった肉片も、幾つか流れてきていた。


「……魔王軍が、この街に何の用ですか。この街は魔族の街、このような侵略を仕掛ける意味があるとでも?」


「さっきも言ったろう?我らが王の真意など、私のような若輩には測りかねる。我ら魔王軍の七幹部、ただただ王の意志に従うのみさ――もっとも、流石に僕の妻まで巻き添えになっては心苦しい。その前に、君達を救いに来たのさ」


 救いに来た、などと。よくもまぁぬけぬけと、この状況を作り出しておいて言えたものだ、などとリールは内心で毒を吐く。あの殺戮を見れば分かる、この侵略行為に関してこの男は一切の抵抗を感じていない。

 寧ろ、積極的にこなそうとしている様子すら感じる。分かっていた事ではあるが、この男は自らの興味がある“妻”しか見逃すつもりはないのだ。


 こんな男でも、一応は魔王軍の幹部級。魔法使いの最高位、『極術使い(ハイエスト・メイガス)』に属しているのだ。真正面から戦ってマトモに勝負になる者など、それこそ同じ『極術使い(ハイエスト・メイガス)』。後は――


「――そうですか。では、もう戯言は結構です、貴方はここで捕縛した方が良いと結論付けました」


 今目の前にいる、この銀の髪を持つ少女の様な。


「……全く。メイリーといいエマといい、少々シャイが過ぎないかな?悪いが少し、今回ばかりは少々時間が無いんだ。強引に行かせてもらうよ」


「リール、レリアを連れて別経路から逃走を。くれぐれも、ピクトラットにだけは注意を怠らずに」


「……!は、はいっ……メイリア様の所に助けを呼んできます、呼んできますから、どうか無事で……!」


「それは助かるなぁ、探す手間が省ける……よッ!」


 リールがレリアの手を引いて、横に在った路地裏へと駆け込んで行くと同時。アルテミリアスの右腕が魔力を帯びて輝く。


 瞬間的に拡大した魔法陣は即座に術式を構成し、コンマ1秒というごく短い時間の内に無数の光の槍を生み出す。彼はそれらの背後で、まるで音楽隊の指揮をするかの様に右腕を振り上げる。

 その動きと連動する様に輝く槍は上空へと上昇し、その穂先をエマへと向けた。


「――っ!!」


 ソレに反応出来たのは、半ば肉体が勝手に動いたというような感覚が大半の理由だ。

 実際の所、今のエマに戦闘経験と呼べるほどのソレは存在しない。本来のエマは既に消滅し、継承された記憶も今の人形(エマ)が身を持って体験したものではない。無論、戦闘における勘も、今のエマには無いというのが正解だろう。


 だが事実として、亜音速にも達する魔法の槍をエマの巨剣は叩き斬っていた。エマ自身、自分にこれほど正確な挙動が出来たなど予想もしていなかった為に、驚愕の感情に似た何かを感じていた。


 無論、黒妃との戦闘により齎された莫大な成長――クロが言うところの“経験値”がエマの能力を軒並み底上げしたと言うのも、その大きな要因ではあるが。


 振り抜いた巨剣の角度を調整する。止まれば捕まる、まずは一歩だ。


 一直線に加速すれば、エマが通った道に次々と光の槍が突き刺さっていく。それらは大通りの石畳に深々とその刃を埋め込むと、次第に液体の様に溶けて石畳の上で物体として硬質化した。

 恐らく、あの光の槍は何かしらの捕縛魔法の一種なのだろう。一撃でも喰らえば体の自由を奪われて、たちまちあの物体に体を飲み込まれる。故に、被弾は許されない。


「へぇ、驚いたな。その剣は魔力を吸収するのか、興味深い性質だね」


「では、参考までに貴方自身の体に一太刀入れて差し上げましょうか?」


「ははは、少し興味はあるが今はやめておこう。メイリーと共に私の城に招待した後で、存分に聞かせてほしいな」


 一歩、構える。二歩、両脚に力を込める。三歩、上半身を捻らせ。四歩、振り下ろす。その一連の動作を、研ぎ澄まされた体捌きで完璧になぞる。エマという少女が残したこの肉体が持つ力は相当のもので、今この敵と戦うには充分なスペックだ。

 だが、振り下ろされた巨剣は、アルテミリアスの寸前で急停止する。アルテミリアスが何かで受け止めた訳ではないというのに、エマが振るう剣は事実完全に停止していた。


 初めてアルテミリアスがエマ達の前に現れた時もそうだった。あろうことかこの男は、微量とはいえ『禁術』すら交えたクロの拳を、この障壁で受け止めたのだ。

 その後の『収納』による攻撃で改めて破ってはいたものの、エマの見立てでは、恐らくそれは『収納』の無敵性による、全ての理論を完全に無視した、極めて強引な突破方法。


 無敵性を持つ攻撃など持たないエマには出来ない攻略法だ。不可能であるならば考えても意味がない、改めて攻略方法を探すべきだ。


 足元で不自然に濃くなる影を警戒して上空に退避すれば、次の瞬間には影から伸びた無数の腕がエマを追って伸びてくる。それらを両手で振るう巨剣で薙ぎ払い、近場の民家の屋根へと一時退避すれば、突如としてその屋根がエマを中心として真っ二つに割れた。


「厄介な……!」


 開いた本を閉じるかのようにエマを挟み込もうとする屋根を、一秒すら掛けずバラバラに斬り刻む。屋根の裏で起動していた魔法陣に剣を突き刺せば、刀身がそこに込められた魔力を根こそぎ吸い上げた。


「……粘るね、エマ。どうしてそこまで拒むんだい?君はこれから起こる惨劇から解放されて、無事に幸福な人生を歩めると言っているのに」


「決まっています。私は(マスター)に生み出されし下僕、裏切りなど有り得ません」


 天井の崩落によって連鎖的に砕かれた壁の残骸に足を掛け、巨剣をアルテミリアスに突き付ける。

 そうだ、自分はイガラシ・クロという一人の“王”に生み出された忠実なる僕。彼が自分を生み出したというのなら、自分に求められる役割を全うする。それだけが、こうして存在する自分の唯一の存在理由。


 この体には、それを成し遂げるだけの力がある。そしてその願いは、この体の本来の持ち主の願いでもある。


 剣の制御機構に手を掛けて、限定的にリミッターを一部解放する。刃の中央に埋め込まれたライヴの結晶体が溜め込んだ膨大な魔力を剣全体に纏わせ、何よりも鋭利な刃とする、ナタリスの族長にのみ伝わるという技術。

 本来なら即刻始末したい所ではあるが、今は何より情報が足りないのが事実だ。この男を捕縛し、情報を吐かせるまで殺す事は出来ない。


「――開典(オープン)、『アダムの遺産』」


 そう、巨剣の真名を告げた。

 両手から、エマの体の中に眠る膨大な量の魔力が吸い上げられる。全身を『末端禁術』の水色の輝きが包み、エマの身体能力を底上げする。『紅の眼』でアルテミリアスを見れば、どうやら避けるつもりは無いらしい。好都合だ。


 瓦礫の台座を踏み割って、一呼吸の内にアルテミリアスへと肉薄する。膨大な魔力を秘めた巨剣を全力の力で、一切のブレなく、一直線に水平へ振り抜く。

 火の型、『焔の太刀』。この肉体が覚えているいくつもの剣技の中で、最も高い威力を誇るものだ。


 空気を切る音と共に、膨大な魔力の放出というブーストを受けた大剣が、アルテミリアスを覆う障壁へと叩き込まれる。ガチガチとエマの手に帰ってくる反動の強さに、エマは無言で歯を噛み締めた。


 ダメだ、一切砕ける気配がない。完全解放しなかったとはいえ、この手応えでは仮に完全解放したとしても傷一つつけられないのがオチだ。いくらなんでも、この防壁はあまりに硬すぎる。


「無駄だよ、僕の『女神の威光(アルテミス)』は無敵の壁だ……あの少年がどういうマジックを使ったかは知らないが、少なくとも君には破れない」


「そうですか、では次の手を講じましょう」


「うーん、僕もゆっくりと享楽に付き合う暇は無いんだけれど……」


 弾かれた巨剣の勢いは殺さない。弾かれたのなら、その勢いを加速させて体を軸に回転して連撃を続ける。反撃の暇を与えてはならない、いくら鉄壁の魔法とは言えども、術者と完全に独立している訳ではない筈だ。

 障壁を形成する事で攻撃を常に防ぎ続けるには、維持するために意識を割かねばならない、とナイアは言っていた。であれば、攻撃している間は反撃をされる可能性も無い。


 上下左右、三次元的動きを織り交ぜて、あらゆる方向から攻撃を叩き込んでいく。時にはフェイクや軌道変化も交えて狙うが、『女神の威光(アルテミス)』の防御は崩れない。


「……面倒な魔法ですね」


「魔法使いとしては褒め言葉だね、ありがとう。それで?いつまで続けるんだい?」


「無論、貴方を討ち倒すまで」


 更に体のギアを上げて動きを早めていけば、アルテミリアスが「参ったな」と困ったような表情で頭を掻く。そんな彼を気にした様子もなく、感情を感じさせない瞳でアルテミリアスを睨みつけたエマは、更に連撃の速度を上げていった。


 やがて彼は「仕方ない」などと小さく呟いて、ジッとエマを見つめる。その視線に何か嫌なものを感じて、エマは渾身の一撃と共に一度離れるべく、まずはその両腕に力を込めた。


「――止めろ、『女神の威光(アルテミス)』」


「……っ!?」


 アルテミリアスがそう起動句をポツリと呟けば、エマの全身がまるで氷に全身を固められたかのように静止する。巨剣に乗せた力も一瞬の内に打ち消されて、エマの全身がピクリとも動かなくなったのだ。

 唯一、魔力を喰らう力を持つ『アダムの遺産』を持っていた手元だけは辛うじて動いたが、それも力が抜けてしまったせいか、取り落としてしまう。すぐに指先すらも完全に動きを固定され、身じろぎひとつ出来ない。


 マズい。これは、マズい。


 これ程に強力な魔法を、たった一言で発生させるのか。たった一瞬、力を込める為に剣を減速させた一瞬の隙に、これ程の魔法を組み上げるのか、『極術使い(ハイエスト・メイガス)』というものは。

 だとすれば、エマは確実に極術使いを甘く見ていたと言わざるを得ない。だってこの分では、この男はこれまで、手を抜いていたとしか思えない。


 アルテミリアスは少々暗い顔でエマの前にまで歩み寄ると、その頰に手を当てて、エマの紅い瞳を真っ直ぐに覗き込む。黄金の瞳はどこか憐れみを含んだ様子で、やがて彼は小さく言い放った。


「あまり、君を傷付けるというのも気が引けたから黙っていたんだけれど、君の言う王とは、あの黒衣の少年の事だろう?」


「……それが、何だと……!」


 エマがそう言ってアルテミリアスを睨み付ければ、彼は何処か悲しそうな表情で首を振る。その行為の意味が分からずに、ただこの拘束から逃れようとするエマに、アルテミリアスは子供へ言い聞かせるかのような様子で、エマにその『事実』を告げた。


 クロがぼかしていた、ナイアが隠していた、その事実を。


「君は彼の役に立とうとするけれど……彼は、“君にそんな事を求めてなんかいない”よ?」


「……は?」


 馬鹿な、と、内心でアルテミリアスの言い放った事を鼻で笑う。

 だって、今の自分はイガラシ・クロという青年に仕える完全に従順なる従者。彼の役に立つ為に命を、この身全てを捧げる装置のような存在だ。だからこそ、この身には『イガラシ・クロを支える』という大前提の基盤が在る。

 

 だって自分はその為に生み出された筈で、それだけが存在意義。彼の役に立つ事が許されないのならば、自分は一体何のために生まれてきたのか分からないではないか。


「……世迷言、を。私は、(マスター)の為に全てを捧げる者……その為に、我が王は私を造られた、筈で」


「何度か彼の様子を見せて貰ったけれど、寧ろ彼は君の事を疎んでいる様にすら感じた。薄々感じてはいたんじゃないかな」


 アルテミリアスの言葉に、クロが今のエマに見せる様子を想起する。確かに、クロが自ずからエマに何かを求めた事は無かった。それに、エマが何かを成そうとする時、彼がそれを許可したのは雑用だとか、そういった時のみだった。

 本当の意味でクロの役に立てる事を、クロ本人が許してはくれなかった。ナイアは『エマが心配なんだよ』などと言っていたが、あの様子に、心配などというものを感じることは出来なかった。


 では、本当に?アルテミリアスの言う通りに、クロは――己が主人は、自分に何一つ求めては……“何も期待してはくれない”というのか?



「……そん、な」


「……君の意志は、脆いんだね。けれど心配することは無いさ、僕の元に来れば、その傷を埋めてあげよう」



 アルテミリアスが笑って、エマの顎先に指を当て、持ち上げる。俯いていた表情は暗く曇って、焦点は合わず、呆然とした様子でただアルテミリアスの瞳を見返していた。

 嘘だ、嘘だ、嘘だ――そう心の中で山彦の様に繰り返す。けれど、どこかその事実を認めてしまっている自分も居て、そんな混濁した意志が人形(エマ)の思考を乱していく。


 全身に籠る力が抜けていく。『末端禁術』がその効力を失って、エマの体を縛る『女神の威光(アルテミス)』が解除された。



「大丈夫、その痛みを誰も責めはしない。君は人形なんかじゃ無いさ、その苦しみを感じている時点で、君はただ一人の少女に過ぎないんだから」


「……ぁ、あ」


 アルテミリアスが、その手でエマの真っ白な手を取る。茫然自失のエマに穏やかな顔で笑い掛けると、彼は転移術式を起動しようと――。


















「――墜ちなさい、『極天撃(カタストロフィ)』ッ!!」


「……っ!?防げッ!『女神の威光(アルテミス)』!」



 突如として、太陽の輝きの如き白光を凝縮した一筋の流星が、アルテミリアスの頭上に出現する。

 音を超え、文字通り光の速さで急降下するその輝きが彼に直撃する直前、展開された『女神の威光(アルテミス)』がその一撃を受け止める。凄まじい衝撃と輝きが周囲一帯に撒き散らされ、余波のみでこの近隣を消しとばさんばかりのエネルギーが、完全なる防御壁とせめぎ合った。


 その余波がエマの体へと届く寸前で、彼女の体は浮遊感に包まれる。しばしの落下感覚に襲われた後に誰かの腕がエマの体を優しく抱き上げた。

 その感触の主を確かめるべく目を開けば、最初に映ったのは黄金の髪であった。茜色の瞳はエマの顔を見るとホッとしたように閉じられて、小さな溜息が耳に届く。


「……大丈夫?何もされてないわね、エマちゃん」


「……メイリア、様?」


「全く……流石にエマちゃんじゃ、アイツとは相性悪いわよ。魔法を使えなきゃ、そもそも同じ土俵にすら立てないわ」


 そうキッパリと言い切ったメイリアは彼女を抱えたままゆっくりと近くの屋根に降りて、その体を地上へと下ろす。空いた両腕で何処からか飛んできた杖を掴み取ると、その先をアルテミリアスへ突き付ける。


「やあ、メイリー。自分から僕の元に来てくれるなんて、嬉しいよ」


「前にも言ったでしょう、寝言は寝てからでも言うもんじゃないわよ」


 キッ、と鋭い眼で睨み付けるメイリアの様子に、アルテミリアスがやれやれとでも言いたげに肩をすくめる。同時にメイリアの背後に無数の魔法陣が組み上げられて、やがて地上からみれば空の一部を覆い尽くす勢いで拡大していった。


「……魔王軍と敵対するのは避けたかったから我慢してたけど、まさか自分達から動いてくるなんてね。やってくれるじゃない、この色ボケメイガス……!」


「何、君が戦う必要はないさ。僕はこの街が沈む前に、君達を助けに来たんだからね」


「アンタの耳は節穴みたいね。いいわ、手加減する理由はもう無いんだもの、徹底的に叩き潰してやるんだから」


 ピキリ、とその額に青筋を立てたメイリアはその杖を掲げると、一気に魔力を収束させていく。広がった無数の魔法陣がそれに連鎖するように輝きを宿し、術式を組み上げていった。

 呆然とその光景を見ていたエマの前で、メイリアがふと彼女の方へと振り向く。未だ上の空のようなエマを見てギリと歯を噛み締めたメイリアは、エマの腕を引っ張りあげると、言い放った。


「何を悩んでるのかは知らないけど、今ここでお荷物になる事はクロ君の迷惑になるわ。事情はどうあれ、それがあなたのしたい事なの?違うでしょ?」


「……っ」


「コイツに何か言われてそんな事になっちゃったって言うなら――コイツを叩き潰して、私が“それは違う”って言ってやるわ。だから、今は立ちなさい」


 術式が起動する。それは、彼女以外の万人が到達し得なかった魔術の極点、勇気の担い手(リトル・ブレイヴ)の相棒として、メイリア・スーが築き上げて来た魔術の全てを結集した最果て。


極術使い(ハイエスト・メイガス)』――()()()()()()()()となった少女。“極点の魔法使い(メイリア・スー)”の全て。




「魔法勝負かい?君とは初めてだね、メイリー」


「元英雄サマを舐めんじゃないわよ、若造が」








 ――術式解放、『星の終わり(カタストロフ)』。






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