episode:3 はじめまして
ガチャ人が引くときはメシウマを期待するよね。
「時間もちょうどいいし」
時計は3時を指していた。ガチャの更新時間だ。
「なんか、ドキドキだわ。ガチャ画面どんなだろ」
「そっかお前ガチャしないで進んでたもんだもんな」
「うん」
「さっきのステージとかどーやってクリアしたんだお前‥‥」
「トリノ進化させてユニット上限までトリノ積んで、あとは遠距離型をいくつか」
「うわあ。時間かかりそうな攻略」
「いや、そうでもなかったよ。上手く序盤で敵を集められたし」
「ほーん。‥‥お前ってほんと策士だよな」
「お前がバカなんだよ」
そういって笑う。
「なんだと?お前、爆死してしまえ!」
「演技でもないこというな!」
ワイワイと騒ぎつつ、ガチャ画面に移動する。【伝説の神シリーズ降誕】という見出しと共に、ユニークユニット排出率UPの文字が躍っている。
「相変わらず何が出るとか書いてないのな」
「まあ、ユニークユニットは無限に用意しないと間に合わないしな。1個ずつは書けないだろ」
「それもそうか」
「よし、10連行くぞ‥!」
ユニークユニットの排出率は1%未満と言われている。2体も持っている和樹がいるから薄れているが、40連爆死もあり得る‥!
『10ガチャを回す』のボタンに触れる。宇宙船が横から追い抜かしていく映像が流れ、ロケットの噴射口の色が変わっていく。
「虹色になったらユニークユニットだぜ」
和樹が横から教えてくれる。
「虹!虹!虹!」
口に出して祈る。
「あー‥‥赤か」
最初の10連は【神シリーズ】ではあるものの『従来型』のみ。
「まあ、この【アヌビス】とかは使えそうだけど」
「ユニークじゃなきゃ別に今じゃなくてもいいしな」
「まあな。次行くぞ」
2回目。今度こそ虹を‥!
「いやー、それにしてもすごかったなあ」
「確率は収束するんだよ」
「俺はもうダメだと思ったね」
「俺も」
マックを出て、帰路につく。2人とも家は近いので、日が沈んでから帰ってもそんなに危険ではない。線路沿いをのんびりと歩く。
あの後、2回目、3回目と計30体の戦士を手に入れて、全て『従来型』だった。しかし最後の望みをかけた4回目で、なんと3体のユニークユニットを手に入れたのだった。
「いやー羨ましい。もっかいみして」
「ふふん」
自慢げに『戦士一覧』を開いてみせる。ソートは『入手順』にしてあるので最後の3つが『人工知能型』だ。
「グラム、アマテラス、アリオシティか。1個だけ神じゃないな」
「あぁ。しかもシティって変な名前だよな」
『へ、へんな名前ですか、やっぱり』
青い髪の小さな少女が白いワンピースをきて涙目になっている。
「あ、いや、シティって街だよな、と思ってさ」
『はい……私はアリオシティの総合統制プログラムです』
「なんか凄そうなのが仲間になったなハル」
「あぁ」
「次はグラムか」
「めっちゃでけえ剣だな。しかもなんか……可愛い」
「お前好きそうな顔だな、わかりやすいんだよお前は。ツンデレ、赤髪、幼顔」
「るせ!それにこれはピンク髪!」
『なに?キモいこと言ってるとぶった斬るわよ」
「うひぃーこわこわ」
そう言いながら和樹はグラムの姿を全画面表示に切り替える。
『あんた、司令官でもないのにうっさいわよ』
「だとよハル。司令官様にワタクシは発言権をお譲りいたします」
「あ、いや、うん。よろしくグラム」
『ふん』
「なんか友情度上げ大変そうだな」
「あぁ‥‥」
手に入れたキャラは使えば使うほど友情度が上がり、強くなっていくのだが、仲が悪いとこれがなかなか上がらないのだ。
「まあ、ツンデレ好きだし」
「モノ好きめ」
「アマテラスはどんなかなー?」
「あ、逃げた」
『逃げたわね』
「グラムまで?!」
そう言いつつアマテラスを表示する。
美しい黒髪の日本人形のような巫女が現れる。
姫カットにして伏し目がちに佇んでいる。
「うわ、なにこの『指示』容赦なくね。気づかなかった」
「あー、それね何度見ても強いよな」
「お前の戦力上がりまくりだろ」
「課金しなくて済んだわ」
冗談めかして言うと「お前の場合冗談に見えねえ」と真顔で返されてしまった。
夜、通信対戦する約束をして、俺らは別れた。