episode:1 フリー・コマンド
春哉と和樹は毎日放課後『フリー・コマンド』を一緒に遊んでいた。
春哉は驚異的な速さで攻略し、ガチャイベントの始まりを和樹に告げる。
「春哉、どこまで進んだ?」
「あー、っと、ステージ12-1」
「うへ、早くね??俺まだ9だぞ」
「お前がおせーんだよ」
可視モードにしたARスクリーンを並べ、昨日の戦果を見せ合う。最近の俺らの日課だ。
「てか、3時から新しいガチャイベくるぞ」
「え、マジ?石ないんだけど」
「ほれ」
そう言って俺はゲーム内の『お知らせ』を開いて見せた。
「ん?なになに。フリー・コマンド最強戦士登場。伝説の神シリーズを手に入れろ‥なんだこれめっちゃ強そうじゃねえか!」
「うん。今日まで勇気石取っておいてよかったわ。絶対来ると思ったんだよね、こーゆー『ゴッドラッシュ』的なやつ」
なにせ、スマホ時代からこの手のゲームはやりまくっていたのだ。キャラを手に入れるためのガチャシステムがあるなら、強キャラが出やすい限定イベントも定期的にくるだろうと予想していた。
「くっそー。欲に負けて昨日回しちまったよ……」
「マジかお前。何でた?」
「マール」
「え、良いやん。ユニークだし」
「そりゃプロトよりかは良いけどさ」
「何より可愛いのが俺としては推せる」
「そりゃ同意だけど、性能はさ」
そう言ってキャラ【マール】のステータス画面を見せてくる。
「どれどれ……あ、ゴミ」
「言うな!!」
そう言って2人で声を上げて笑った。
2091年に登場したリアルフォンは完全AR端末だった。様々な形状で発売されるリアルフォンは携行しているだけで自分にしか見えない映像が空間に映し出される。それに触れたり、目線を当てるだけで、従来のスマートフォンと同等の機能を使用できるようになった。
そんなリアルフォン用に2週間前リリースされたのが『フリー・コマンド』と言うゲームだった。
『ストーリーモード』でゲーム内通貨や課金アイテムを手に入れてストーリーを進め、手に入れたアイテムでガチャを回して強いキャラを手に入れ、それを育てて『バトルモード』で他のプレイヤーと戦う。それがこの『フリー・コマンド』の大まかな流れだった。
キャラは『人工知能型』と『従来型』の2種類があり、前者はゲーム内にたった1体しか存在しない。『ユニーク』はプレイヤーとの会話が可能で、最初からある程度の自我があり、運営の設定したキャラの背景に沿って発言する。『プロト』はゲーム内に複数存在し、決められたセリフを決められた場面に発音するだけだ。
そして一般的に、『ユニーク』の方が強い。
「えー、どうしよ、課金すっかなあ」
下校しながら『フリー・コマンド』のステータス画面を開いて歩く。
「和樹は非課金でいくの?」
「んー、今日のガチャ引きたいから揺らいでる」
「あー、ね」
「お前は毎回廃課金だもんな」
「いやいや、俺なんてまだまだっすよ」
「今石何個あんの?」
「200個」
「げ、40連する気かよ」
「まあ、まだ始めてから一度も回してないしなガチャ。リリース前から登録してたし、課金してないけど貯まったよ」
「お前よくそれでステージ12までいけたな」
「まあ、このゲームはワンチャンノーダメでいけるしな」
「それはお前のPSが高いだけ」
「まあな。どーする?マック寄ってく?俺のガチャタイムを共有しようぜ」
にやりと笑って親友を見る。
「くっそ石の無い俺を笑いやがったな。いいともお前の爆死を見届けてやる」
「ついでにバトルしような」
「おう」
足取りは軽く、駅へと歩を進めた。
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