#18
予約投稿です
「オッケー。打ち抜くね」
「おう。壁には穴開けるなよー」
「だああああああ待て待て待ってくれ!」
この半裸の男性が霧切で、半裸の少年が有馬だ。
はたから見れば半裸の男性が逃げる半裸の少年を捕まえて襲う寸前の状態だ。
「不埒な!」
「最低ね……」
ユーリカとアリスも侮蔑の視線を容赦なく投げつける。
完全に処刑される流れだ。
「ほ、ほんとに違うんだって! ホラ、有馬も何か言ってくれ!」
「……助けて」
「有馬あああああああああ!!」
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「会うのは二度目ね! 久しぶり有馬!」
「お久しぶりですアリスさん」
陽歌、アリス、ユーリカはテラに勧められて、
リビングのテーブルを囲むように置かれている椅子に腰を掛けていた。
有馬はお茶菓子をテーブルに置くと、空いている席に座る。
「おぉ~い……縄ほどいてくれ……せめて服を着せてくれないだろうか……」
「変態紳士は黙ってて。今のところ人権ないから」
「ひどい……」
陽歌にそういわれ凹んでいる霧切は縄で縛られて玄関先に放置されている。
「それで? 実際あの状況は何だったの?」
「僕と霧切さんは一緒にお風呂に入ってたんです」
「よし、ギルティ」
「せめて最後まで聞いてください陽歌さん!」
霧切の叫びを聞いて陽歌は有馬の話を聞く。
「……それで?」
「霧切さんがハットなしで髪の毛を洗おうとしてきたので……」
「よし、ギルティ」
陽歌はベルセルクを霧切に向ける。
「なんで!? そろそろハットなしじゃないと年齢的に……!」
「こんな幼気な少年に手を出した時点でギルティだから」
「おーい、霧切いじるのもそこまでにしとけー?」
キッチンからやかんを持ってきたテラが陽歌の銃口をつかむ。
「ごめんなさい。霧切さんもごめんね」
「勘弁しておくれよ有馬……」
霧切の縄をほどいて椅子に座らせてから陽歌は座りなおした。
「ところでテラ、そのやかんは?」
「ん? コーヒーだが?」
「もしかして豆入れてお湯入れた?」
「コーヒーってそういうもんだろ?」
そこまで聞いていたユーリカは静かにコーヒードリップを取り出す。
テラの家に行く前にバザーでこっそり買っておいたものだ。
「ユッキーもしかしてこうなること予知してた?」
「お肉を生で食べる方ですから、もしかしてと思いまして」
「コーヒーなんて数年ぶりだからな! 飲み方なんて忘れちまった!」
ユーリカがコーヒーをドリップしている間に霧切と有馬、テラに
今の現状を霧切たちの村であったことと合わせて伝えた。
「僕たちの村でそんなことが……。それは済まなかったね」
「僕たちがこの街にとどまってたから……」
「お前らを泊めたのはアタシだ。お前らに責任はねーよ」
沈痛な面持ちをした霧切と有馬。二人を慰めながらテラは陽歌たちに言う。
「実はアタシはクルソアルへの帰り道にジャックに襲われた」
「ジャックって『ジャックと豆の木』の?」
「あぁ。ジャックのバカがドジ踏んで奇襲が失敗したからなんとかなったがな」
「ジャックはバカだものね」
テラの言葉にアリスは頷く。『ジャックと豆の木』のジャックは商業の才がある商人だ。
その商業により様々な道具や魔法具所持しており、自在に操る……のだが……。
「あのバカ催眠ガスを出す魔法具をあたしが来る前に使って自分が眠ってやがった」
「ジャックほんとにそこさえ無ければ最強の一角に数えられるのになぁ」
ジャックは商業以外のことに関してはおそろしく頭が回らないのだ。
「ま、なんにせよ状況は分かった。霧切と有馬はこのままアタシの家にいろ」
「そうね。数人で集まっていたほうが安全だもの」
「私たちはまた他の人たちにこの事実を伝えて戦っているようなら止めに入るから」
陽歌たちはテラの家から出ると。街の中心部にある宿屋――ホテルに泊まった。