#16
予約投稿です
翌朝、陽歌はトントンと何かを切る音で目を覚ました。
ぐつぐつという音も聞こえることから誰かが朝食を作ってる音なのだろう。
陽歌がキッチンに行くとユーリカが謎の物体を煮込んでいた。
「あ、陽歌さんおはよう」
「うんおはよう。ところでその鍋の中身を聞いても?」
「これですか? ちょっと色は変ですけど味噌汁ですわ」
陽歌はもう一度鍋の中を見る。紫と黒を混ぜ合わせたような色。
明らかに味噌汁を作っていた鍋ではない。
「あとはお味噌を入れて完成ですわ!」
「待って、味噌入れてないでその色なの?」
味噌が投入される。それも一箱分まるごとだ。しかし問題はそこではない。
入れたはずの味噌がかき混ぜてもいないのに謎の物体に触れた瞬間溶けたのだ。
「……ユッキー。私ちょっと肉が食べたいからフェンリルと何か狩ってくるね」
「そうですか。アリスさんが起きたら一緒に食べましょうね」
「そう……だね……」
(アリスほんとにごめん)
陽歌は欠伸をしているフェンリルをベルセルクでつついて一緒に森に入った。
「ファッツラビットなら多分この辺にもいるんじゃないかな」
「わふっ」
「お、早速見つけたんだね。流石フェンリル、頼りになるね」
フェンリルが顔を向ける方向にファッツラビット。
さっと視認出来たのは一匹。しかし音からして二、三匹はいるだろう。
「私たちの分なら一匹で十分かな。フェンリル、一匹だけ引き寄せてくれる?」
「ワウ」
陽歌の指示に呼応するようにフェンリルは駆け出す。
陽歌はベルセルクに銃弾を装填していく。ほどなくしてズシンズシンと音がする。
上手く一匹だけおびき寄せたようだ。陽歌は照準をしっかり合わせる。
ズドン
大きな音を立てて銃弾が吸い込まれるようにファッツラビットの眉間に風穴を開けた。
ファッツラビットは恐らく絶命したようでそのまま重力にしたがって崩れ落ちた。
「久しぶりの感覚。最近撃ったのは影人形と樹木くらいだったからなぁ」
フェンリルが運ぶのに必要な大きな木の棒を咥えて持ってきた。
「ん、縄は……この蔦を編めばいいかな」
フェンリルの持ってきた棒に蔦で編んだ網でファッツラビットの手足を縛った。
そして陽歌はそれを肩に担いでアリスとユーリカの待つ霧切の家に戻った。
「さて、アリスいい感じに時間稼ぎしてくれてるといいんだけど」
陽歌がドアを開けようとするとキッチンのほうで爆発が起きた。
ドアが開いてアリスが少し疲れたような顔をして出てきた。
「時間を稼ぐ必要はなかったみたいだね……」
「朝から爆発目覚ましは流石にいい趣味とは言えないわね……」
キッチンへ向かうとユーリカが目を回して倒れていた。
恐らくあの謎の物体が何かの拍子に爆発したのだろう。
「とりあえずさっき狩ってきたファッツラビットの肉、焼いて食べよっか」
「……そうね!」