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オオカミ使いの赤ずきん  作者: 白金 陽介
第一部 動き出す童話
14/46

#14

来週からは夏休み期間になり予約投稿となります

 クルソアルとアリードの間には小さな村が一つある。

朝に出発していれば、夕方にはクルソアルについていたのだが……。


「あー、お昼に出たせいでこれはあの村に止まるコースだ」

「あの村ね……。私も極力避けていた村だわ……」

「ワウ……」

「お三方みんな嫌がるって一体どんな村ですの……?」


 村に着いたが、見た目は特に変わったところはなく、少し整っていて綺麗な印象を受ける。

強いて言えば村の中心にある周りよりちょっとへんな形の家があることぐらいだ。


「……? 特になんの変哲もない村ですけど……?」

「そうだね。村自体は悪くないの。問題なのは……」

「んっ! そこにいるのは陽歌にアリス、そしてユーリカじゃないか!」


 陽歌たちの憂鬱な表情がさらに曇った。そんな彼女たちに歩み寄る男。

彼女たちがこの村に止まるのを渋っていた理由、

『アリとキリギリス』の『霧切(きりぎり)』だ。


「……すぐにこの村を出ましょう。早急に」

「ユッキー、それは無理。霧切に見つかった時点で絶対に野宿させてくれないから」

「『テンションが高い紳士』っていうのが彼の座右の銘なの……」

「さあさあ長旅で疲れただろう! 我が家に招待しよう!」


 拒否する暇もなく三人と一匹は村の中心にある異様な形をした家に連れていかれた。


「ま、どうせ通る際に霧切にも伝えとこうと思ったことあるし止まるついでに伝えよう」

「ん? なんだい?」


 家について早々に、陽歌は現状を霧切に伝えた。


「なるほど。そんな事が今仲間内で起きているとは嘆かわしい……」

「テンション抑えてれば本当に普通の紳士ですのね」

「そうだよ。まぁ普段との落差があれだけどね」


 霧切と陽歌、ユーリカが現状を話している間アリスは家の中を見渡す。


「そういえば前にここに来た時、もう一人いたよね?」

「ん? あーそういや有馬(ありば)がいないみたいだけど……」


 『有馬(ありば)』とは『アリとキリギリス』のもう一人の少年である。

華奢な少年で基本的に争いを好まない心優しい中性的な童顔の少年。

しかしながら、彼は強力な魔法を操れる膨大な魔力を持っている。


「有馬ならそろそろ戻ってくるだろう。お、噂をすれば」


 霧切がノックされた家の扉を開くと童顔の少年――有馬が立っていた。


「久しぶりね有馬!」

「ア、アリスさん! それに陽歌さんもお久しぶりです」


 優し気な笑みを浮かべて挨拶をしてから有馬をユーリカを見る。


「えぇと、貴方が……ユーリカさんですか?」

「えぇ。(わたくし)がユーリカですわ」


 陽歌、そしてアリスはふと、気が付いた。何故この二人はユーリカを知っているのか。

ユーリカ本人は陽歌と旅をしているアリスしか友好関係はないうえに一緒にいる事も教えてない。

どう考えてもユーリカだとわかるわけがない。


「霧切……聞いてもいいかな?」

「……何をだい?」

「なんでユーリカがすぐにユーリカだってわかったのかな?」

「……一緒にいるからそうなんじゃないかなって」

「私、一緒に旅に出たことはおろか、旅に出たことすらも教えてないよ」


 陽歌がそこまで言うと陽歌とアリスはすぐに臨戦態勢をとる。

ユーリカは少し遅れてから陽歌の後ろに周る。


「う~ん騙し切れると思ったんだけどな~」

「陽歌とアリスは鋭いからな……」

「そっか~戦闘慣れしてるとその辺も鋭くなるのか~」


 霧切と有馬の姿が徐々に歪んでゆく。そして二人の男に姿が変わる。

一人は黒い羊を思わせる角が生えているパーマのかかった髪をしている。

もう一人は鴉のような真っ黒な翼を持つ落ち着いた雰囲気を纏っている男。


「演技は上手だったよ。ボロ出さなかったらやられてたよ」

「そいつは嬉しいね~。次も騙せるってことだろ?」

「次はないわよ」


 アリスの右目が金色に変わっている。彼女の持つ魔眼だ。

彼女の魔眼は魔力の流れや魔力そのものを見る事ができる。

いくら見た目は誤魔化せても魔力そのものは誤魔化すことができない。

翼を持つ男はアリスの目を見る。


「あれは……アリスの魔眼『無知の証人(イグナー)』」

「あら、そんな名前がついていたのね。今後からそう呼ぶわ!」


 いうと同時にアリスは魔剣を手にする。


「……アリス? 緊張感が台無しなんだけども」

「警戒することないわ。こいつらはあくまで『使い魔』。それも諜報用の、ね」


 アリスは魔剣を二人に向ける。


「本物の二人はどこ? あなたたちも使い魔とはいえ切られたくはないでしょう?」

「物騒なお嬢さんだ。そこと見た目は姉妹でそっくり……」


 羊男の片方の角が吹き飛んだ。それを見てもう一人の男はぽつりとつぶやく。


「……口は禍の元」

「ほ、本物の二人ならクルソアルに村の名産品を売りにいってるぜ」


 二人の男はそれだけを告げると役目は終わったかのように溶けるように消えた。

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