#13
先日の更新忘れていて申し訳ありません!
(どうする? どうすればあのアリスに攻撃を当てられる?)
陽歌は攻撃を躱し、アリスから距離を取りながら思考を巡らせる。
アリスの魔剣と剣技は二つ合わせて完璧で攻防を剣だけで行っている。
「『審判断罪』」
近距離が強力ならば距離を取ればいいと敵は考える。
しかしながら勿論アリスにも遠距離に対する攻撃方法はある。
あくまでアリスは『近距離が得意であるだけ』なのだ。
「う、わっ!」
頭を抱えてしゃがんだ陽歌の頭上を周りの木々ごと巻き込んで斬撃が通り過ぎた。
審判断罪は空間を切り裂き、切り裂いた空間を飛ばす常軌を脱した技である。
この技は応用が利くため、遠距離攻撃はもちろんのこと防御にも使用できる。
陽歌の光弾乱射を消し飛ばしたのもこの技の応用である。
ここまでの汎用性を持たせられるのはアリスの技量があってこそだ。
しゃがみこんだままの陽歌にアリスはゆっくり歩きながら近づく。
「ぐっ! 光弾乱射……」
「その技はもう見たわ」
追いついたアリスに陽歌は銃口を向けるが魔剣に銃を飛ばされる。
「アリス……どうしていきなり襲って……」
「分からないあなたじゃないでしょう? あなたの限界の解除を促したの」
アリスは魔剣を消して踵を返す。
「解放できるかはあなた次第。そろそろ帰りましょう。ユーリカが心配するわ」
「……」
アリードの宿屋に向かうアリスを見つめ、陽歌は考える。
(全く歯が立たなかった。アリスが最強の一角と言われるとはいえ)
陽歌はアリスの後を数歩離れて続く。アリードの宿屋につくまで二人はお互い無言だった。
宿屋の部屋に戻るころには夜が明けて日の光が僅かに照らす頃だった。
「……ぅん……? ……ってアリスさんに陽歌さん! どこにいってらしたの!?」
「あぁごめんねユッキー。ちょっと修行してた」
たははと笑う陽歌。しかしユーリカには何があったのか大体察しがついたらしい。
「……しばらく待ちますから、お二人は仮眠をとってくださいな」
「ありがとうユーリカ。お言葉に甘えさせてもらうわ」
二人とも夜明けまで一睡もせず戦い続けたのだ。疲れがたまっていないわけがない。
二人はベッドで横になると、ほどなくして静かに寝息を立て始めた。
次に目を覚ました時は丁度、日の光が真上に上っている時間だった。
「ありがとユッキー。ガッツリ寝れたよ」
「まさか陽歌さんがここまで寝起きが悪いとは……」
「いつもユッキーより早く起きてるもんね。そういえばアリスは?」
「一足先に起きて昼食を食べてますわ。私はもう食べたので陽歌さんも」
「ん、それじゃあ食べ終わったら出発しよっか」
宿屋の食堂に行くとアリスがサンドイッチをほおばっていた。
「あら、おはよう陽歌! いい朝ね!」
「おはようアリス。もうお昼だけどね」
昨日の真面目モードは既に解除されているようで、いつもの無邪気なアリスに戻っていた。
陽歌はアリスの向かいに座ると店員に同じものを頼む。
「私が食べ終わったら出発だから、アリスも食べ終わったら準備しておいてね」
「わかったわ!」
アリスはそういうと手に持っていたサンドイッチを早々に食べ終わらせて部屋に戻っていった。
「お待たせいたしました」
「はいどうもー。さて、私も食べ始めますか」
陽歌が食べ終わると二人がちょうど荷物をまとめて降りてきた。陽歌の荷物も一緒だ。
「それでは、行きましょうか」
「うん。あ、その前にコーヒー買っていこう」
陽歌は宿屋で売っている特別ブレンドを小さい一袋を買う。
「ここのコーヒー気に入ったの?」
「いや、マッチ売りの少女――テラは何故かいつも極限の食生活送ってるから」
「そういえば私が立ち寄った時も野生のファッツラビットを生で食べてたわ」
「ず、ずいぶんとワイルドな方なのですね……」
三人は街はずれで待っていたフェンリルと合流して次の街『クルソアル』に向かった。
アリードから出る際、陽歌の持つベルセルクが僅かに点滅しているのに気付いたものは誰もいなかった。