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オオカミ使いの赤ずきん  作者: 白金 陽介
第一部 動き出す童話
12/46

#12

「何のこと?」

「陽歌はまだ本気出してないでしょ」


 陽歌はアリスの翠色の瞳を見つめる。


「さっきの戦いだってそう」


 アリスは続ける。


「本気を出していたら相手にすらならない戦いになってた。どうして?」

「私は……」

「もしかしてだけど陽歌……」

「…………」


 押し黙る陽歌からアリスはベルセルクを奪い取る。


「……! 返して!」

「……やっぱり、リミッターが外れてない。まだ悔やんでるのね」


 アリスに言われて陽歌はまだ押し黙る。図星だったのだ。


「もう何度も言ってるけどあなたの母親は童話殺しに殺されたの。貴方が殺したわけじゃない」

「でも私が足を引っ張ったからお母さんは……」


 陽歌の母親は陽歌がまだ幼い頃に、童話殺しによって命を絶たれた。

力が陽歌に備わったのは母親が最期に陽歌に力を譲渡したからなのだ。

 アリスはベルセルクを陽歌に返した。陽歌はベルセルクを撫でながら言う。


「このリミッターは私への戒めなの。お母さんから私への、ね……」

「あなたそれ本気で言ってるの?」


 アリスは陽歌の胸倉を掴む。


「馬鹿な事言わないで! あなたの母親がそんなこと考える訳ないじゃない!」


 陽歌は驚いた。今までここまで怒りを爆発させたアリスをみたことがなかったからだ。

何度か生まれ故郷にいたころに旅をしていたアリスと遊んで怒らせたことがあったが、

ここまで起こったアリスを見たのは初めてだった。


「陽歌。立ちなさい」

「え……? 急になに……?」

「いいから」


 アリスに言われるままに陽歌は立ち上がると突然首元に魔剣を突き付けられる。


「アリス……?」

「殺す気で来なさい」


 陽歌はすんでのところでしゃがみこんだ。アリスが突き付けた魔剣を横へ薙ぎ払ったのだ。

陽歌が避けていなかったら首と胴体が離れていた。


「本気なの?」


 陽歌の問いに答えることなくアリスは魔剣――狂ったお茶会《マッドハッター》を振りかざす。

その剣先は殺意に満ちている。間違いなく本気だ。陽歌は的確に魔剣の軌道を読んで躱す。


「ととっ、危ない。素早いけどまだ躱せる速度で……」

「『チェシャ猫の悪戯(キャッツ・トリック)』」


 アリスの魔剣が鈍く光るとアリスが二人に分身した。『チェシャ猫の悪戯(キャッツ・トリック)』は魔剣の能力の一つ。

所有者の実体のある分身を生み出す能力で、人数に制限はない。

人数が増えれば増えるほど分身の能力は下がってゆくのだが、分身一人の場合殆ど能力の低下はない。

つまり現在二人のアリスを陽歌一人で相手する状態なのだ。


「ほらほら!」

「このままじゃ死ぬわよ!」

「いやほんとに死んじゃうから! 二人は卑怯でしょ!」


 アリス二人分の攻撃はどちらも遜色ないほどの速度で鋭い。一撃でも当たったらただの怪我では済まない。

本来なら躱せること自体が奇跡なのだがそれは陽歌の実力が伴ってこそだ。


「……はっ!」


 陽歌は少し大振りな攻撃を見極めて大きく後方へ跳ぶ。そしてアリス目掛けて引き金を引いた。


「『光弾乱射ライトニング・バレット』!」


 陽歌の持つベルセルクから大きな光弾が発射され、それが分散して一斉にアリスへ襲い掛かる。

しかしアリスは慌てることなく魔剣で一閃。襲い掛かる光弾を一掃した。陽歌は唖然とした。


「うっそでしょ……」

「こんなもの? 失望を通り越してガッカリだわ」

「それどっちも失望してない!?」


 再び跳びかかるってくる二人のアリスによる猛攻を陽歌は躱し続けた。

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