#11
アリスがケーキを食べ終えてから陽歌は今まで起きた事の顛末を話した。
「なるほどねー。観測者の話したことは私と大体一緒」
「そう。なら話は早い。一緒にこのふざけた茶番を終わらせよう」
陽歌の差し出した手をアリスは握った。
「今更だけどこれからよろしくアリス」
「こちらこそよろしくね陽歌」
カフェオレを飲み干したユーリカが問う。
「えぇと……とりあえず確認したいのですけど、次はどちらに向かいますの?」
「そうだね。アリードの隣にある『クルソアル』に向かおうか」
「クルソアルには確か『マッチ売りの少女』がいたはずね」
三人は喫茶店からでると宿屋に向かった。
「私たちはいいとして、アリスさんはどうされますの?」
「私は野宿するから平気よ!」
「そうそう。なんならアリスの代わりにユッキーを野宿させればいいわけだし」
「なっ……!」
ユーリカが絶句していると陽歌が朗らかに笑う。
「心配しなくてもいいよユッキー。最初から三人で部屋とってあるから」
「用意周到ですのね……」
宿屋に到着するとアリスは突然陽歌に問いかける。
「陽歌、どうする?」
アリスの問いかけに陽歌は答える。
「私はフェンリルにアリスと無事合流した事も伝えるから先に宿に入ってて」
「分かった! 行きましょうユーリカ」
「分かりましたから引っ張らないでください……」
アリスとユーリカが宿に入るのを確認すると陽歌は街のはずれに向かう。
「……」
陽歌は無言のまま街はずれの森に入ってゆく。
森は深く、夜になっていくせいもあるのかどんどん薄暗くなっていく。
しばらく無言で歩き続け、そして大分暗くなってきたところで立ち止まった。
「さて、このくらい離れてるんだしいい加減姿現したら?」
陽歌の声に答えるものはいない。
「全く……」
陽歌は素早くベルセルクを構えるとおよそ200メートル程離れた木を打ち抜く。
「あれ、ばれてた?」
打ち抜いた木の後ろからゆっくりと男が出てきた。
背はそこそこ、筋肉質な腕におぞましい渦を彷彿させるような入れ墨。
手には紫色の刃を持つ短剣。
「なるほど、童話殺しの集団『悪魔の書庫』ね」
「そこまでばれてたかー」
男は白々しく拍手する。陽歌はベルセルクを構えて男を撃つ。
しかし男は手に持っている短剣でベルセルクの弾丸を弾いた。
「アリスといる時は無理だと思ったけどまさか一人になってくれるなんてね」
陽歌は何度もベルセルクの引き金を引くが男は喋りながら全弾を短剣で弾く。
まるで弾丸を何もなかったかのように弾き続ける男に陽歌は焦りを覚える。
(この男、気配を消すのは下手だけど……かなりの手練れ……)
「俺は悪魔の書庫の幹部をやってるんだけど戦える力持ってなくてさー」
「くっ……!」
撃っては弾かれ、撃っては弾かれ……。何度も何度も弾かれ続ける。
「で、君たちに目を付けたんだけどアリスと合流されて困ってたんだよね」
「あらそう。それじゃあまた困ってもらいましょうか」
その声が聞こえた瞬間余裕の表情を強張らせて男は後方に跳ぶ。
跳んだ次の瞬間には先程まで男が立っていた場所に剣で切りつけた跡が付いた。
もし男が跳んでいなければ今頃真っ二つになっていただろう。
「アリス……! 助かった」
「帰りが遅いと思ったら雑魚じゃなくてまさか幹部だったなんてね」
声の主はアリスだった。手には怪しく輝く魔剣、狂ったお茶会を携えている。
「やっぱりアリスにもばれてたか。だから暗殺紛いな事を俺にさせるなっていったのによぉ」
男は大きくため息をつく。
「ま、あくまで今回は偵察ってことで引かせてもらうわ」
「黙って引かせると思う?」
男の周りの空間が歪み、男は結界内に閉じ込められる。
「それじゃ、結界とともに消えなさい」
「アリス、ちょっと待って」
結界ごと切り刻もうとしていたアリスを陽歌は引き留めた。
「どうしたの?」
「この男、様子がなんか変」
陽歌に言われてアリスは結界内の男を見てみると、男は力尽きたように倒れこんでいる。
よく見ると腕に入っていた入れ墨もなくなっている。
「……なるほどね。憑依系の能力者だったのね」
「そうみたいだね」
陽歌は緊張が解けたのか、その場で座り込んだ。
「いやー危なかった。アリスほんとにありがとう」
「……陽歌、真面目な話をするけど」
アリスは敵対するモノに対する冷たいものとまた違う声色で話し始める。
「なぜ本気を出さないの?」
また忙しくなってきたのでもしかすると更新止まったり延期するかもしれませんが
できる限り週一更新守っていこうと思います。