#10
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陽歌とユーリカに二人は喫茶店で彼女を待っていた。
陽歌はこの街にアリスが来ることを彼女自身から聞いていたのだ。
アリスは世界中を旅しているため、本来なら連絡を取ることは困難だ。
しかし、パーミルには特定の相手に者を送ることができる『念力』を持っていたため、
彼女の力を借りれる陽歌だけが唯一アリスに連絡をとれたのだ。
「本当はあの街に残ってるつもりだったけどこんな状況だし、ね」
「アリードへ出発する前にパーミルさんに何か言っていたのは……」
「そ。アリスにアリードに向かうって伝えといてもらったの」
二人がそんな話をしていると喫茶店の扉が勢いよく開いた。
「お、噂をすれば」
「陽歌! ユーリカ! 久しぶり!」
扉を開いた主はアリス。
水色の大きなリボンに水色と白を基調にしたエプロンドレス。
美しい金色の髪色を靡かせ、大きくて好奇心に満ち溢れた翠の瞳をした少女。
「ほんとに久しぶり。正直会えるかどうか心配だったんだ」
「私もここに陽歌たちがいるってローブのおじさんに聞いたの!」
「ローブのおじさん……? あぁ、観測者の事か」
「そうそうその人! それと一つだけ聞きたい事があるんだけど……」
アリスはそこで言葉を切る。すると突然周りの空間が歪み、
陽歌とユーリカに強烈な殺気が放たれる。
「あなた達は……どっち……?」
先程の明るく無邪気な声とは全く違う、背筋がゾクリとする程冷たくて鋭い声色。
もはや別人とも感じるアリスを見据えて陽歌は答える。
「私たちは止める側。つまりアリスと目的は一緒」
少しばかりの沈黙。ほんの数秒のはずが永遠のようにすら感じた。
「……そう。嘘はついてないみたいね」
アリスは結界を解く。その様子を見て陽歌は安心したように椅子に腰を掛ける。
ユーリカはあまりの殺気に腰を抜かしている。
「ごめんねー。現状で誰が敵か味方かもまだわかってないから」
「いいよいいよ。むしろそのくらいの心持ちでいてくれる方が安心できる」
アリスの声はもう明るく無邪気なものに変わっていた。
ユーリカはようやく立ち上がってアリスに恐る恐る聞く。
「もしの話ですけれど、敵だった場合は……?」
「さっきの結界ごと『狂ったお茶会』でバッサリ切るつもりだったよ?」
ユーリカの質問に事も無げに答える。
『狂ったお茶会』
彼女――アリスの持つ愛用の魔剣である。
普段は姿形がないが彼女が必要とすると現れる伝説の魔剣。
剣としての切れ味もさることながら最も恐ろしいのはその能力にある。
人数関係なくアリスの視認するすべての敵を結界内に閉じ込め、
その結界ごと敵を切り裂く必中で絶対の斬撃。
アリスを童話に語られる者最強の一角と呼ばせる要因の一つである。
「敵対していたらと思うとゾッとしませんわ……」
「その分味方にいると心強いでしょ?」
ユーリカが青ざめているのをよそにアリスは隣の席に座った。
「そうそう! ここのケーキってとってもおいしいの!」
「へぇアリスはここ来た事あるんだ」
「一度だけね! ケーキ頼んでもいい?」
「いいよ。私たちももう少しだけくつろいでるから」
こうして陽歌とユーリカは新たな仲間、アリスを迎えた。