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クレイトリア物語  作者: ミラ
竜人アウルスと半竜族編
15/21

街中の事件

ステルスバリアのおかげで、魔物や狩人に見つかることなく、コニリオスに辿りつくことができた。


「ありがとね、アウルス。」

「役に立てれば、私はそれでいいの。」


ヴィリジアが、アウルスに礼を言いながら着地する。

彼女は彼のその表情を見て、照れくさそうに頭を掻きながら微笑み返す。


「さて、行こう!」


そして二人は、はぐれないように手を繋ぎ、都市の中へと走り出した。



「うぅ・・・人混みは苦手だよ・・・。」

「でも、ここなら誰にも襲われたりはしないはず。」


ヴィリジアが息苦しそうに顔をしかめているが、アウルスがそんな彼を落ち着かせようと背中を軽く叩く。

少しして彼が落ち着いたのを見ると、アウルスはヴィリジアが探す青年について情報を探ることにした。


大通り、各店、そして情報屋。

全ての場所に聞き込みをして数時間。未だに青年の手がかりはつかめずにいた。


「うーん・・・今のところ手がかり無しかぁ・・・。」

「しばらく歩いて疲れたし、今日はこの辺で宿でも取る?」

「そうした方がいいかもね。」


二人が今日の情報収集を打ち切り、次の日に回そうと話す。

この近くに宿屋はなく、また少し歩く必要がありそうだ。


「うぅ・・・遠いよ・・・。」

「じゃあ僕が背負って行ってあげるよ。」

「ヴィリジア、ごめんねー・・・。」


ヴィリジアがアウルスを背負った。そのせいで翼を使うことはできなくなったが、この街中で飛べば間違いなく撃ち落されると感じたためかえって自分が竜系半獣族だと分かりづらくなっただろうと彼は思っていた。


「しっかり掴まっててね?」

「わかってるよ!」


ヴィリジアはアウルスをしっかりと背負い、アウルスはヴィリジアの肩をしっかりと掴む。自らの肩に重みを感じると、彼は遠くに見える宿屋の照明に向かって走り出した。



宿屋まであと少しといったころだろうか。彼の背後で何かが光った。

それは真っ直ぐに彼の背を捉え、一直線に飛来する。


「うぅっ!」

「アウルス!?」


当然、背負われている状態のアウルスにそれは直撃した。

彼女が体勢を崩したためにヴィリジアも前のめりに崩れるように倒れ、アウルスの背に刺さったものを確認する。


「麻酔針・・・!奴らか!」

「ちっ、もう一人背負ってやがったのか。」


ヴィリジアはその声を聞くなり、アウルスに刺さった麻酔針を抜き、彼女を建物の壁にもたれかける。


「その様子だと、やはり狙ったのは僕のようだね。」

「街中に半竜族がいるだなんて、まるで飛んで火に入る夏の虫だぜ!」


直後、彼の目の前に立つ狩人と思しき人物を光が照らす。

人数は二人。麻酔針係と戦闘係だろうか。


「こんな街中でも僕を襲おうとするなんで、お前らの気が知れるね!」


ヴィリジアもやる気のようだ。

腰に提げていた鞘から黄金の剣を抜き、呟く。


「ごめんね、ユーリル。少し借りるよ。」


直後、彼の腕に麻酔針が突き刺さる。


「そっちが来ねぇならさっさと終わらせちまうぜ!」

「ぐぅ・・・っ!」


彼は咄嗟に針を抜くも、視界がわずかにぼやけ始めた。

足元がふらつき、壁に手をつく。


「これまでに撃たれた麻酔針よりも、かなり強力みたいだ・・・!」


剣を右手に持ちながら、壁に左手をつき身体を支える。

周りの人々がざわついているようだが、誰一人として保安官に知らせようとしないのは何故だろうか。


と言うのも、竜系半獣族自体が珍しいために、人々は彼に見惚れているのだ。


「今までの狩人とは一味違う、俺が作った麻酔針の効き目はどうだ?たった一発でまともに立てやしないだろう?」

「はぁ・・・はぁ・・・。」


既に目の前にいる狩人の姿すら視界に入らなくなり、彼の意識が飛びかける。

ついに右手に持っていた剣を落としてしまい、アウルスの隣に座り込んでしまった。


彼はもう、何も考えられなかった。

身体に力が入らず、壁にもたれた状態からさらに倒れる。


「あと少し・・・なのに・・・。」


目の前に近づいて来る狩人たちに彼はもう完全に諦めていた。

やはり、自分には無理なのだと。


「へへ、終わりだな。」

「・・・。」


彼の意識は、とうに闇に消えていた。

狩人が鋸刃のナイフを彼の角に当てようとしたとき。


カキン、とそのナイフが何かに弾かれた。


「あんた、何してんだ?」


狩人が顔を上げてその声の主を見ようとするが、首元に剣を向けられそれも阻まれる。


「こんな子供に手を出して、俺が黙って見てる訳には行かなくてな。」

「貴様、誰だ!」

「俺が、誰かってねぇ・・・ははは。それを聞くのは野暮ってもんだぜ。」


剣を離し、その声の主は狩人の顔を上げる。


「メーベル・エールラー。覚えてるんだな。」


メーベルと名乗るその青年が手に持っているのは、黄金に輝く剣。どうやら、そこに落ちていた彼の剣を拝借したようだ。


「その子たちから離れなければ、今ここで俺がお前を塵にするが、どうだ?」

「ひぃっ!」


彼がそう脅すと、狩人たちは二人揃って逃げ去っていった。


「リリー!アルス!こっちだ!」

「もー!メーベルってば早いよー!」

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・やっと追いついた・・・。」


人混みのなかからリリー、アルスと呼ばれた少女と少年が現れ、メーベルに近づく。


「さっき、この子たちが狩人に襲われてるのを見たんだ。ちょうどそこに宿屋があるし、今日はここで宿を取るとしようぜ。」


青年が、ヴィリジアを背負いながら言う。


「アルス!こっちの女の子を頼む。」

「ぜぇ・・・わ、わかったよー!」


青年が少年に指示し、アウルスを背負い宿屋へ向かった。

その時、その青年がふらつき、小さいが声を漏らす。


「うっ・・・。」

「メーベル?どうかした?」


それを心配した少女が彼に声をかけた。


「・・・いや、何でもねぇ。」


その青年は、彼女にそう言って、宿屋へと姿を消す。


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