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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第二章 身魂融合 命を受け継ぐ者
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獅子王

ツツオウの体から溢れる、桃色の光は…とどまる事を知らなかった!


「にゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!」


その光はやがて、フィールド上のあらゆる物を取り込んでいった。

ツツオウを中心に、形作られていく巨大な一頭の獣。

あれは…獅子だ!


そこには、桃色の獅子が出現していた。

生物的な獅子では無く、機械的な獅子だ。

要は、戦闘用のロボット的なデザイン。 カッコ良い!


『ゴォォォォォォォォォンッ!!』


鳴き声も、獅子らしく低くゴッツイ声に変貌!

これはもう、ツツオウじゃ無く『獅子王』だな!(確信)


「何か…凄い事になってるねぇ?

 アレは…ツツオウ自身が、ゴーレムコアになってるのかな?

 だとしたら、前代未聞の出来事だよっ!?」


ゴーレム自身が、ゴーレムコアになる!?

これは、合体と言うのか…進化と言うのか?

…分からん。 おしえて! ザッキー先生!!


『こ…これは!? ツツオウ! 

 フィールドの素材を吸収し、巨大な獅子へと変貌したぁぁぁぁぁっ!?』


『恐らく…ツツオウ自身が、ゴーレムコアとなっているのでしょうね。

 ホビーゴーレムを作った事がある方なら…

 先ほどの光景を見て、ピンと来た事でしょう?

 長いゴーレムマスターズでも、この様な事例は報告されていません。

 このチームのゴーレム達は、本当に驚かされますね』


桃色の獅子と化した、ツツオウが臨戦態勢を取る。

大きさ、およそ60cmはあるだろうか?

その巨大な獅子が…リックに狙いを定め、攻撃しようとしているのだ。

その様に、思わず後ずさるリック。


リックも大きい部類のゴーレムだが…

今のツツオウに迫力負けしていて、とても小さく見えた。


「リック! ビビんじゃぁ無いよっ!!

 お前は倒れた、ドゥとムゥの思いが託されてんだ!!

 それに…応えな!! 男だろっ!?」


ガイナさんの叱咤激励!

ツツオウの迫力に押され、弱腰になっていたリックの目に強い光が戻る!

単眼の目が「グポーン」と光り、リックもまた臨戦態勢を取る。


笑っても泣いても…この一騎打ちで、勝負が付きそうだった!


「シシオウ! 勝って戻って来い!

 そして…お前の兄弟に、自慢してやれ!」


『ゴォォォォォォォォォンッ!!』


ライオットの言葉に、ツツオウが吠えて応える。

そして…ツツオウが爆発的な速度で駆け出した!

また、リックも同時に飛び出していた!


早い…! ツツオウは巨体であるにも関わらず、リックに引けを取らない速度だ!

お互いの距離が近づいて行く。


先に、遠距離武器を持つリックが仕掛けた!

手に持った大筒を、乱射する! 全ての弾を使い切るつもりで撃っていた!

対するツツオウは…そのまま直進! かわす気も無い様だった!


「ツ…ツツオウ!?」


俺の悲鳴に近い呼びかけにも応じず、突撃するツツオウ。

そして…リックが放った、大筒の弾は全弾ツツオウに命中した!


『あぁぁぁぁぁぁっと!? 

 リックの攻撃が全弾、ツツオウに命中したぁぁぁぁぁっ!!

 これは勝負あったかっ!!』


だが…視界を塞ぐほどの黒い煙から、無傷の桃色の獣が飛び出して来た!


「いけぇっ! シシオウ! 獅子の怒りを…叩き込んでやれ!!」


ライオットの激が飛ぶ!

更に加速するツツオウ!!


ツツオウを良く見ると…たてがみが展開していた。

そして前方には…魔法障壁!?


『シールド!? シールドです!! 

 ツツオウは、自分の前方にマジックシールドを展開して

 リックの攻撃を防ぐと共に…恐らくは、体当たりを仕掛けるつもりでしょう。

 これは、攻防一体の恐るべき技ですよ!?』


リックは、油断をしてはいなかった。

既に、背中の剣を抜いてツツオウに突撃している!


「リック! 最高の一撃を、食らわせてやんな!

 決勝に行くのは…私達だっ!!」


その言葉に、リックの力が限界を超えた様に見えた。

恐ろしいまでの力の塊。

これが、歴戦のゴーレムの底力か!?


ホビーゴーレム、玩具の戦士。

にも拘らず、俺の目には…

実際の戦士達にも、引けを取らない程の存在に見えた。


ツツオウ、リックの距離が更に縮まる!

決着は近い!


最早、俺に出来る事は…ツツオウを信じて祈る事のみ!


「ツツオウ! 全てを…お前に託す!!」


俺は祈った。

祈りまくった!


『ゴォォォォォォォォンッ!!』


『グポーン!』


互いが激突した!!

余りの衝撃で、砂煙が巻き起こる!!


「うわっぷ!?」


…目に入った、痛ひ。

だが、今はそんな事如何でも良い! 勝ったのは…どっちだ!?


『両者激突ぅぅぅぅぅぅぅっ!!

 凄まじい砂煙が、巻き起こっている!!

 果たして…勝ったのは、リックか!? ツツオウか!?』


やがて…砂煙が晴れる。

其処に立っていたのは…桃色の獅子! ツツオウだ!!

リックの剣は中程から圧し折れている。

余程の衝撃だったのだろう。


『勝ったのは、ツツオウだぁぁぁぁぁっ!!

 リック、健闘むなしく敗北して…あぁっと!?』


その時、リックが起き上がった。

ガクガクと、震えながらも立ち上がる!!


『リック! 立ち上がったぁぁぁぁぁぁっ!!

 まだ、勝負を諦めていないぞぉっ!!』


震える足を一歩…また一歩出して行く。

ツツオウに向かって…


「まだ、そんな力が!? ありえないよ!!」


プルルが驚く。

うん、俺も同じ気持ちだ。

根性あり過ぎぃぃぃぃぃぃぃっ!!


俺はリックを見る。

もう、リックに戦う力は残ってないだろう。

リックは弱々しい足取りで、ツツオウに向かって行く。

もう、滑る様に移動する力も無いのだろう。

ツツオウは動かない。 じっ…とリックを見守っている。


そして、遂にリックはツツオウの元に辿り着き…

弱々しく震える拳を、ツツオウに叩き込んで…

前のめりで、ゆっくりと倒れた。


『ゴォォォォォォォォォンッ!!』


天を仰ぎ、雄叫びを上げるツツオウ。


「…リック!!」


ガイナさんは…泣いていた。


力を使い果たしても…尚、主人の期待に応えようと立ち上がるリックに

俺は最大限の尊敬と敬意を覚える。


最後の攻撃を、その身で受け止めた『獅子王』にも…


『ウィナァァァァァァァァッ!! モモガーディアンズッ!!』


会場に大歓声が響き渡る。

勝ったんだ…俺達が!


『やりました! 「モモガーディアンズ」! 決勝進出です!!

 初出場ながら決勝に歩を進めるとは! これは優勝も期待できるぞ!!』


『いやぁ…見応えのある試合でした。

 決勝でも彼らが、一波乱見せてくれそうですね』


大歓声は、暫く止む事が無かった…

皆が俺達と、最後まで諦めなかった『ブラックスターズ』を称えていた…


◆◆◆


「…見事だ、シシオウ。

 良く、最後の一撃を受け止めてやったな…」


戻って来たツツオウと、運ばれて来たムセルとイシヅカ。


「お前達も、よく頑張ったな! 偉いぞ!!」


弱々しく手を上げて、嬉しがるムセルとイシヅカ。


本当に良くやったよ…あら? 目から熱い汗が?

今日は、熱いから仕方無いね!


「しかし、ツツオウ凄い事に…おや?」


プルルがツツオウを観察していると…ボロボロと、ツツオウの体が崩れて行った。

そして、中から何時ものツツオウが「にゃーん」と飛び出て

体中に付いた埃を、猫の様にプルプル振るって弾き飛ばした。


「ありゃ? 元に戻っちまった」


「にゃーん」


「ふぅむ? 時間制限があるのかねぇ? 何れにしても興味深いよ!」


制限時間ありか…でも強力なスキルだな。

これで、ツツオウも戦力として数えられる。やったぜ!


「やぁ、負けたよ」


そこに『ブラックスターズ』のお姉さん達がやって来た。

腕には、大事そうにリック達を抱きしめている。


「良い試合だった、リック達も限界を超えて

 戦えた事を…凄く喜んでいたよ。」


「決勝がんばってね!」


「絶対に優勝だよ!」


清々しい笑顔で、俺達を激励するガイナさん達。


「おう! 任せろ!! 絶対に優勝してみせる!

 皆の期待に応えるんじゃない!

 応えてしまうのが『モモガーディアンズ』!!」


ふぉぉぉぉぉぉぉっ!! 燃えて来たぜぇ!!

俺の闘志は、とどまる事を知らなかった…!


「シア…! エスザク! 先に決勝で待って居るぞ!!」


今は、此処には居ないライバルに向けて

俺とムセルは、腕を天に突き上げ叫んだ。


遂に辿り着いた、再戦の場所へと…

俺達は、あの時の約束を果たすぞ!!

早く決勝に来い! チーム『アークジオ』!

そこが…俺達の最高の力を、ぶつけ合える場所だ!!


俺達は、決勝で行われる戦いに胸を膨らませ、選手控室に向かったのだった。

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[一言] デスザウラーの次はシールドライガーかよ!?
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