眠れる獅子
イシヅカに釣られていたムセルが地面に着地する。
そして、瞬時に射撃体勢に入った!
「ムセル! やっちまえっ!!」
「リック! 迎撃!!」
ムセルが持っている、全ての銃器から弾丸を放った!
いち早く、立ち直ったリックが…それを迎撃する!
ゴウンッ! ガガガガガ…!
か…カッコ良いじゃない!
ムセルは当然として…
ムセルの攻撃を、背中の剣で切り払って防いだ、リックもカッコ良い!!
「ドゥ! リックを援護!」
「ムゥ! 体勢を整えて!」
ぬぬ!? またしても、シューティングストリームをする気か!?
そうそう、好きにさせてはいかんぞ! ムセル!!
「ムセル! やらせるな!」
俺に言葉に反応したムセルが、再びリック達に突撃する!
そしてリックに、アームパンチを繰り出し…命中した!
「良し! 良いぞぉ、ムセル…?」
が…リックの様子が変だ。 何で、あんなに「ぐにゃっ」ってなってるんだ?
…やっべ! 身代わりか!?
「ムセル!!」
俺は慌てて、ムセルに呼びかけるが…時、既に時間切れ!
哀れ…ムセルはまともに、シューティングストリームを受けてしまった!
『ああぁぁぁぁぁっと!? ムセル!
シューティングストリームを食らってしまったぁ!!
これは、大ダメージ必死だぞぉっ!!』
『ダミードールとカムフラージュマントですね。
このコンボは、本当に脅威ですよ?』
片膝を付くムセル! イカン! 深刻なダメージだ!!
「ムセル、頑張れ! 此処で倒れたら
エスザクと戦うなんて、夢のまた夢だぞっ!?」
その言葉に、気力を振り絞り立ち上がるムセル!
頑張れ! 出来る出来る! ムセルは男の子!!
「シューティングストリームを受けて立ち上がるか…!
だけど…此処までだね!? リック! 止めだよ!!」
再び、シューティングストリームを繰り出すリック達!
ムセルは…立ってるだけで精一杯の様だった。
「ムセル!!」
俺は悲鳴に近い声で、ムセルの名を叫んだ。
まさか、こんな序盤でムセルが…やられる!?
そしてムセルに、リック達が迫った時!
何者かが、物凄いスピードで突っ込んで来た!
「イシヅカ…!?」
多分、イシヅカ。
恐らく丘から、転がって来たのだろう。
身体を丸くして、猛スピードでシューティングストリーム中のリック達に突っ込んだ!
ガッシャーンッ! と、リック達が吹っ飛んだ!
「ボウリングぇ…」
まさに、ボウリングだった!
イシヅカは本当に、発想がとんでもないな!?
が…イシヅカ本人も、ダメージは大きかったらしく
そのまま倒れてしまった。
『あぁ~と!! イシヅカ! 起死回生の策を敢行するも、倒れてしまった!
「ブラックスターズ」もドゥが、倒れている!
双方にリタイアが出ている模様!! 如何なる! この戦い!!』
『「モモガーディアンズ」苦しいですね。
主力のムセルが、追い詰められている上に…イシヅカの戦闘不能。
ブラックスターズは、リックとムゥが健在です。
ピンチですよ! 「モモガーディアンズ」!!』
「イシヅカッ!!」
プルルが初めて倒れる姿を見て、悲しげにイシヅカの名を呼んだ。
くそっ! ムセルもピンチだ! 如何すれば…!?
「おい! シシオウ! そろそろ起きろ!」
流石にライオットも、ツツオウを起こそうと
さっきから名前を呼んでいるが…
「にゃうん…」と、熟睡中のツツオウであった。
そうこうしてる間に、リックとムゥが攻撃を仕掛けて来た!
ふらふらの身体で、何とか攻撃をかわすムセル!
だが…やがて攻撃が当たりだした。
「ムセル! シッカリしろ!!」
俺の応援も空しく…ムセルは倒れてしまった。
丁度、イシヅカに重なる様に倒れるムセル。
「ムセルッ!!」
何て事だ! ムセルまで、やられちまった!!
これじゃ…約束所じゃ無いぞ!?
その時! 肩に乗っていた、いもいも坊やがリングの端に飛び乗り…
短い足を「ぺしぺし」とリングに叩き付け、何かを言ってる様に見えた。
「立て~! 立つんじゃぁ! ムセルゥ!!」と、言ってる様に聞こえた。
いもいも坊やは、眼帯のおっさんの可能性が…?
いもいも坊やの、励ましが届いたのか…再びムセルが立ちあがった!
「な…何だって!?」
流石に驚く「ブラックスターズ」のお姉さん達!
『何と!? 倒れたムセルが、再び立ち上がったぁぁぁぁぁっ!!
何と言う根性だ! ムセルは不死身かぁぁぁぁぁっ!?』
…違う! ムセルは友の声に応えただけだ!
けど! 俺には分かった!
ムセルは倒れる度に、友の励ましで立ち上がり…強くなっている!
ならば、俺のやる事は…一つだ!!
「ムセル! 俺はお前を…信じているぞ!!」
その言葉に、ムセルが応える!
全身から薄っすらと桃色のオーラが溢れだしている。
それは足に集まりだし…そしてムセルが、爆発的な速度で突進を行った!!
手に持ったヘビィマシガンを投げ捨て、アームパンチに全てを賭ける!
リックとムゥに、迫るムセル!
「決めろ! ムセルッ!」
「…ムゥ! リックを守るんだ!!」
なん…だと!?
その言葉に、瞬時に反応するムゥ!
リックを突き飛ばし、ムセルの攻撃を一人で受けた!
渾身の攻撃を受けて、倒れるムゥ。
だが…ムセルもまた、限界だった。
拳を放った姿勢のまま…動かなくなったムセル。
「ムセル…お前って奴は!!」
あぁ…試合が終わっていれば、直ぐさま駆け寄って抱きしめてやりたい!
だが、まだ戦いは終わっていない。
「ムゥ…お前の行動、無駄にしないよ?
リック! あの山の天辺で寝てる呑気な奴に…?」
そう言いかけて…視線を、イシヅカの倒れている方に向けた。
そこには、ツツオウの姿が…何時の間に?
「…にゃ~ん?」
ぺろぺろと、イシヅカの顔を舐めているツツオウ。
まるで「起きてよ?」と言ってる様に…
続けて、ムセルにも同じ事をするが…
「ツツオウ…」
俺は胸が「ズキッ」とした。
今になって…ツツオウって戦いを望んでい無いんじゃないのか?
と、言う事に気付いた。
そうだ、全てのゴーレムが戦いが好きっ! …て訳じゃ無いんだよな。
「リック…試合を、終わらせてやるんだ」
ガイナお姉さんも、ツツオウの性格が分かったのか
リックに一撃で仕留める様に指示した。
正直…ツツオウじゃ、まともに戦っても勝てる相手じゃない。
相手は、歴戦の戦士なのだ…
リックを見て、怯えるツツオウ。
…勝負あったか。
「シシオウ! お前は…悔しくないのか!!
兄弟をやられて、お前は悔しくないのか!?
獅子の子として…悔しくないのか!!」
ライオットの叱咤激励が飛んだ!
ビクッと、ツツオウの体が震えた。
「シシオウ! どんなに、その体が小さくても…お前は獅子だ!
誇り高き獅子! それがお前だ! シシオウ!!」
…ライオットの字が下手過ぎて「ツツオウ」に、なってしまったんだがな。
けれども、ライオットの普段見せない顔に…ツツオウが反応した。
「な~~~~~~~~~~お…!!」
生まれて初めて…臨戦態勢に入ったのだ!!
「そうだ! それで良い! 兄弟をやられたら…怒れ!
絶対に許すな! それが百獣の王! 獅子の中の獅子!!
シシオウ…お前の事だ!!」
結構考えて、名付けたんだな…ライオット。
そして、俺は見た…ツツオウが桃色のオーラに包まれる姿を。
と言うか…異常です。
『こ…これは、何だぁぁぁぁぁぁぁっ!?
ツツオウが突如、ピンクのオーラに包まれ出したぁぁぁぁっ!!』
『これは…!? 今までの例に、当てはまらない現象ですね?
いったいこれは…!?』
この二人にも、分からないらしい。
当然だ、これは間違い無く…桃先生の祝福に依る物だ。
ムセルとイシヅカは、これ程凄くは無かった。
何故だ…? ツツオウだけこれ程とは…
「これで、俺達の勝ちだ…『ブラックスターズ』は
『眠れる獅子』を、起こしちまったんだからな!!」
ライオットの顔が…おっかなかった。
牙を剥きだしにして、笑っていたのだ!
「オマエマルカジリ」とか、言いそうだった!!
お願いだから、俺をムシャムシャしないでね?
ともあれ…遂に戦いは、最終局面を迎えた!
勝つのはリックか!? それとも…ツツオウか!?