対決! ブラックスターズ!!
俺達は、残った時間で戦いに備えた。
まぁ…ムセル達に、全部任せてるんだがな!
「正直な話…俺じゃ、何をして上げれば良いか分からんしな?
ムセルに任せるのが一番だ。
パーツは沢山あるぞ? 好きなのを持って行け!」
俺はフリースペースから…ドバーッと、オプションパーツを床にぶちまけた。
…如何して、こんなに買ったし?
中には良く分からないパーツもある。
「…これは、何に使うんだろうな?」
俺は小さな箱に入った十個の、茶色い小さな三角形のパーツを見て
首を捻っていた。
良く見ると…その三角形の先っちょは、筒が出ていて何か出そうだった。
「分からないで買ったのか!?」
ライオットが、呆れ顔で俺を見て来た。
…ちょこざいなっ!?
俺は仕返しに、ほっぺをフグの様に膨らませて威嚇した! ぷく~!
「あぁ…これは、遠隔操作できる小型の砲台だね」
「へぇ…使えれば強そうだな?」
ムセルに見せたが…如何やら使えないらしい。
要らない、と返されてしまった。
「使えれば強い武器だけど、使えるゴーレムが極端に少ないのさ。
おまけにコレ…高いんだよ? たしか…金貨一枚だった筈」
プルルが、俺を見て苦笑いする。
俺は「やっちまったなぁ!?」と、脳内で誰かの台詞が再現されていた。
「うぎぎ…何て、こったい!」
俺は、イシヅカにも見せたが…やはり使えないらしい。
ツツオウは…転がして遊び始めた。 …しくしく。
「皆、適正無いみたいだねぇ? …仕方無いさ」
「くそぅ、勿体ないから…取り敢えずツツオウに着けとくか。
丁度茶色だし、たてがみ見たく見えない事も無いぞ?」
俺はペタペタと、値段の高い三角形を…たてがみの様に付けてやった。
「にゃおーーーー!」
「ほぅ…微妙にライオンっぽく、見えない事も無い」
「んふふ…良く似合ってるよ? ツツオウ」
「急に、大人になったなシシオウ?」
完成! パーフェクトツツオウ!!
…まぁ、唯の飾りなんだがな。 使えないし。
「そろそろ時間だよ? 皆、準備は良いかい?」
「もう時間? 早いな、まだ…余裕あると思ってたが」
「ムセル! 出撃準備は良いかっ!?」
ムセルは腕を上げて、準備万端だとアピールした。
ムセルは、何時もの装備だ。 機動力を重視したらしい。
イシヅカは…一回戦と変わらない装備だった。
でも、イシヅカフリースペースがあるしな…
臨機応変に色々、装備を変えそうだ。
ツツオウは…先程付けた、たてがみ以外に
背中に、大きな盾がくっ付いていた。
「いやぁ…防御力が皆無だからさ? 一応な?」
ライオットの親心か…これが吉と出るか、凶と出るか?
これで…ツツオウの機動力が、落ちたのは間違い無い。
でも…ツツオウが、まともに動いてたのって見た事が無い。
あっるぇ~? 機動力が仕事してねぇぞ!?(呆れ)
「さ、いこうかねぇ? 相手は強敵『ブラックスターズ』だよ?」
「おぉ! 燃えて来たな!?」
「っしゃ! やるぞ! ばかやるるぉ! 俺はやるぞぉ!!」
俺達は、元気良く戦いの場へ向かうのだった!
◆◆◆
俺達が試合会場に入ると、大歓声が巻き起こった。
同様に『ブラックスターズ』にも、大歓声が浴びせられる。
唯…俺達の方には、動物達の鳴き声が混じっている。
「ふふふ…我らが、野良ビースト達の応援は勇壮無比であるな!!」
「唯、吠えたり鳴いてるだけ…だけどな」
花道を堂々と歩き…ムセル達をリングに上げる。
これで、戦いの準備は整った。
『さあ! 遂にグランドゴーレムマスターズも準決勝です!
勝ち上がったのは「モモガーディアンズ」「ブラックスターズ」
「ゼンバネンス帝国」「アークジオ」の四チームだ!
この四チームから、優勝チームが決定するぞぉっ!!』
『いずれのチームも強敵を破って、準決勝に歩を進めた強者達です。
素晴らしい戦いを、見せてくれる事でしょう』
リングを挟んで向こう側に、ブラックスターズのお姉さん達。
「やぁ、また会えたね? 約束…守ったよ?」
「おう! 流石はお姉さんだと感心するが、何処もおかしくは無い!
尋常に…勝負だっ!!」
此処まで来たのなら、言葉は不要ら!
後は行動で示すのみ! 最高の試合を見せてやれ! ムセル!!
お姉さん達も同様の様だった。
ニヤリと笑い、ゴーレム達に指示を与えている。
「ムセル、イシヅカ、ツツオウ!
俺達は応援位しか出来んが…共に戦っているつもりで応援する!
だから…勝って戻って来い!」
ジャキン! とヘビーマシンガンを掲げ、俺達に応えるムセル。
イシヅカも釣竿を掲げる。
ツツオウは普通に「にゃーん」と返事をした。
『いよいよグランドゴーレムマスターズ準決勝開始です!』
『フィールドは「荒野」このフィールドで「ブラックスターズ」が
「アークジオ」を破って優勝したのは鮮明に記憶してます。
果たして「モモガーディアンズ」がどう戦っていくか?
注目したいですね』
「両チーム、準備は良いですか?」
と、審判のお姉さんが聞いて来る。
両チーム頷き…
『それでは…ゴーレムファイトォ! レディィィィィ…ゴォォォォッ!!』
戦いの火蓋が切って落とされた!
ムセル達が戦う「荒野」はそのまんま、西部劇に出てくるような乾いた大地だ。
草も生えて無い様な山があったり、枯草の塊がコロコロと転がっている。
そこを、猛スピードで突っ込んで来る「ブラックスターズ」のゴーレム達!
「うおぉ!? くっそ早えぇぇぇぇぇ!?」
荒れてデコボコな地面を、滑る様に移動する黒い巨体のゴーレム達。
しかも、隊列に乱れが無い。
訓練され過ぎぃ! ちょっとは乱れても良いのよ?
いっぽう、我らが「モモガーディアンズ」は…
ムセルが突っ込み、イシヅカは姿を消し…ツツオウが、お山でお昼寝。
「おぃぃぃぃぃぃぃぃっ!? 何時も通りかっ!!」
ツツオウ、貫録の昼寝! 圧倒的…昼寝っ!!
お前に緊張感は無いのかっ!?
「何か…すまん」
遂にライオットも謝る始末!
いったい如何なる? この戦い!?
『さあ! 試合が始まりました! 「ブラックスターズ」は何時も通り
機動力を生かした戦法の様です!
対して「モモガーディアンズ」は、主力のムセルが突撃してますね?
そして、イシヅカは姿を消し…あ~、ツツオウは、これは寝てますね?』
『「モモガーディアンズ」のムセルは今大会唯一のランクSSSゴーレムですが
「ブラックスターズ」のゴーレム三体では、分が悪すぎるでしょう。
ですが…姿を隠したイシヅカが不気味です。
この戦いを握るのは…イシヅカの行動かもしれません』
ムセルがローラーダッシュで「ブラックスターズ」のゴーレムに突撃する。
そして…互いに射程内に入った!
「リック! ドゥ! ムゥ! シューティングストリーム!!」
いきなりソレかよ!?
「ムセル! 相手の必殺技だ!! 気を付けろっ!?」
ムセルは、更に加速した!
ムセル!? 何を…!?
『おぉっと!? 「ブラックスターズ」! 序盤からしかけて来たぁぁぁぁ!!』
『ムセルさえ潰してしまえば…後は何とかなる、と言う作戦でしょうか?
確かに、残りはランクCゴーレムですが…』
「ブラックスターズ」のゴーレム「リック」が大筒を放つ!
それを、かわすムセルに…立て続けに「ドゥ」が剣を抜き、ムセルに切りつけた!
ムセルは少し身を傾けて、それをかわすが…体勢が崩れた!!
「ムセルッ!!」
止めとばかりに「ムゥ」が大筒をムセルに向ける!!
放たれる弾丸! 当たれば、タダでは済まない!!
当たる寸前…ムセルが浮いた! 不自然な体勢で!
『う…浮いたぁぁぁ!? ムセル不自然な格好で、浮いてかわしました!!』
『あれを! …イシヅカです! 釣竿でムセルを釣り上げたのでしょう!
やはり、一筋縄ではいきませんよ!? チーム「モモガーディアンズ」!!』
少し高い丘から、釣竿を引っ張っているイシヅカ。
すっげー命中精度だな! おい!?
「よし…良い子だねぇ、イシヅカ!」
プルルもご満悦だ。
そして「ブラックスターズ」のゴーレム達は動揺して、隊列が乱れている。
チャンスだ! ムセル! お前の力を…見せて差し上げろ!!
戦いは、序盤の山場を迎え様としていた…!