小さな動物園
◆◆◆
珍獣、選手控室なう。
「…狭い」
其処はまさに、混沌としていた…
部屋を覆い尽くす…蠢く物体。
「わんわん!」「な~お」「にゃーん!」「チュチュ!」「め~!」「も~!」「はっ!!」
…野良ビーストと、マッスルアニキ達のせいである。
尚、ライゼンさんとリカードさんも同行している。
…何か、すみません。
「流石に、これだけ居ると狭くなるよな?」
「まぁ、ねぇ…?」
ライオットとプルルが、苦笑いする。
…見渡す限り、動物だらけなのだから。
「わはぁ、どーぶつさんが、いっぱいだよぉ?」
プリエナ…君もちょっとした動物だよ?(たぬき)
そして、ゴーレムも…狸だよ! 親子だよ!(確信)
「ちょっとした、動物園だよな?」
ダナンが紙に、動物園と書いて壁に貼り付けている。
紙には、見学料大銅貨一枚と…ちゃっかり書かれていた。
お前なぁ…金取るのか?
俺達が呆れていると、先に部屋で待機して居たチームの人が、怒鳴り声を上げた。
「おい! てめぇら!!」
うおっ!? チーム「野獣」の皆さんだ!
…いや、「あにまるず」だったっけ? どっちだ!?
流石に、怒ってるのだろう。
どかどかと、大足で歩いて来て…
俺の目の前に来て…しゃがみ、俺の目を見て…
「…俺達も混ぜて」
と…目を、キラキラさせて言った。
混ざりたかったんかい!?
と言うか、その顔にキラキラは似合いません!
「…許可しる」
俺は許可した!
こんなに、必死に頼み込んで来るのだ!
断れば…男が廃るってもんだ!
だが…チーム「野獣あにき」(過ち)が動物園に加わった事で
動物臭さが、危険な領域に突入した。
…収拾、付かなくなっちゃーう!
最早、完全な動物園だった!
珍獣である俺、ライオットにプリエナ、ツツオウと野獣のおっさん達に…そのゴーレム。
いもいも坊やに、野良ビースト達と…マッスルブラザーズ。
更に…リックのニワトリゴーレムに、プリエナの狸ゴーレム。
「これは、ある意味…凄いな?」
フォクベルトも、開いた口が塞がらない様子。
象さんのゴーレムが、フォクベルトにすり寄っていた。
お気に召したようだ。
「ちょ…!? 何これ!? 凄い事になってる!?」
試合の準備に来た、チーム「ブラックスターズ」のお姉様方が驚いていた。
…ですよね~? 控室に入ったら、そこが動物園になってた。
なんて展開…誰が想像するかっての!?(呆れ)
「あはは! 見て見て! 狸の親子だ! 可愛い!」
「ふぇぇぇぇぇ!?」
ガイナお姉さんに抱き付かれる…たぬ子とぽんぽ。
「しっかし、この子達大人しいね?」
と…野良にゃんこを、一匹抱きしめてるナッシュお姉様。
野良にゃんこは、ウットリしていた。
…其処を代われ! にゃんこよ!?
「…どさくさに紛れて、貴方達も居たのね?」
「ここは…パラダイスさ」
オルテナさんと、グレーアニキが会話している。
知り合いなのかな?
「ふむ…おいぃぃ!? 野良ビースト共よ! お姉さん達に場所を開けるのだ!」
次はチーム「ブラックスターズ」とチーム「イレギュラー」の試合だ。
準備もあるし、邪魔してはいけない。
「あぁ、良いよ良いよ? 別に、準備するまでも無いから?」
…それって、もう諦めてるって事ですかねぇ?
「…うち等は何時でも、何処でも即試合が上等だからね?
常に何処でも戦える…セッティングにしてあるのさ!」
ガイナお姉さんが、自慢げに話す。
うんうんと、ナッシュお姉様とオルテナさんが頷いた。
つまり…何時でも喧嘩上等だと!
すげー! スケ番みたいだぁ!(憧れ)
「ま…試合まで、リラックスさせて貰うさ」
手をヒラヒラさせて、胸をのけぞらせる…ガイナお姉さん。
プルン! と、おっぱいが揺れる。
「ふぉぉぉぉぉ…」
ピッチリとした黒いスーツは、ナイスバディを魅力的に魅せる。
思わず、口から声が漏れる。…エロイ!
「さ…英気を補充だ!」
と、言いつつ…俺を抱きしめるガイナお姉さん。
何と言う、自然で無駄の無い動き! 先程の動きは…フェイントか!!
「し…しまった! 無駄の無い、無駄な動きに惑わされた!?」
「ふふふ…お嬢ちゃんが、胸に興味があるのは分かっていた!
利用させてもらったよ!」
何と言う…洞察力! これが…歴戦の猛者の実力か!?
だが…この魔性の誘惑には、勝てにぃ!
「おぉう…フカフカだぁ」
く…おっぱいには勝てなかったよ。
悲しいけど、俺って…元男なのよね!
それ以前に…こう、胸元に抱きしめられると安心するって言うか…
その…なんだ? うん、落ち着く。
「あっははは! 親子みたい!」
「笑わないでよ…でも、そろそろ欲しいかもね」
ガイナお姉さんが、満更でも無い様に言い返す。
そんなやり取りをしていると…試合時間が来てしまった様だ。
「ガイナ…出番だよ!」
「もう時間? あ~あ…良い所だったのに」
俺は、ガイナお姉さんに弄くられまくって…ウトウトしてた。
く…絶妙な攻め具合だ!(睡眠不可避)
「それじゃ、行って来るわ! 次は…リングで合いましょうね!?」
「…! おう! 楽しみにしてるぜ!!」
パシンッ! と手と手をぶつけ合い、互いに約束を交わす。
だが…相手は、去年の優勝チーム「イレギュラー」だ。
厳しい戦いになるだろう。
堂々と、試合会場に向かう彼女達の姿は…格好良かった!
うむ…将来は、あんな風に格好良くなりたいものだ!(憧れ)
「さて…僕等も、見に行くかい?」
「いや、行かない」
「え? 行かないのか? エル」
「あぁ」と、言って…ドカッと腰を据える。
ガイナお姉さんは「リングで合おう」と、約束して戦いに向かった。
ならば…次に会うのは、リングの上でだ!
「次に会うのは…リングの上って、約束しちまったからな!
俺は此処で、こいつ等と待ってるよ」
「そっか…じゃ、俺も待つとするか…!」
ライオットも、俺と一緒に待つ様だった。
「くうぃ~ひっひっひ! 良いねぇ! そのやり取り!
でも…賢い行動じゃ無いよ?」
プルルは行って来る…と言って試合を見に行った。
俺は「いってらっしゃい」と言って見送った。
うん、分かってる…プルルが、実は誰よりもこの大会に入れ込んでいるって事を。
だから…俺は、何も文句は言えない。
「良いのか?」
「良い、これは俺の我儘だからな。
さっきのやり取りが無ければ…俺も見に行ってた」
「そうか」と言って、ツツオウと一緒に寝るライオット。
…完全に親子だな! 寝顔がそっくりだ!
暫くは、クラスメイト…野良ビースト達や、野獣アニキ達と戯れていた。
野獣アニキ達は、見た目こそアレだが…気さくで良い人達だった。
ガイナお姉さんが、試合に行って十分は過ぎただろうか?
「試合は…如何なったかな?」
グランドゴーレムマスターズの試合は一試合、十分の制限時間で…
決着が付かない場合、判定になる。
…恐らく、この戦いは、判定にもつれ込んだのだろう。
プルルが、戻ってこないのが理由だ。
その時…選手控室のドアが開いた。
ガチャッ! と、ドアが開き…プルルが戻って来た。
「やぁ、ただいま」
「おかえり! …如何だった?」
俺の予想だと、チーム「イレギュラー」が、勝ち進むだろう。
…そう予想していた。
「…んふふ! 勝ったのは『ブラックスターズ』だよ!
いやぁ、大どんでん返しだったよ!!」
「マジで!?」
「マジだよ!」と返すプルル。
冗談を言う子じゃ無いので、本当に勝ったのは「ブラックスターズ」の様だった。
「…そうか、約束守ったんだな」
「うん! それでね…」
プルルが、試合の様子を熱く語り始めた…