『給食』目 エルフ幼女王都に行く
今、俺はでっかい門の前にいた。
正確には、その門を潜るための入国検査の列に並んでいるところだ。
その門を抜ければこの世界最大の都市と言われている
ラングステン王国『王都フィリミシア』である。
人口約八千人を有する巨大都市で、施設も充実しているとの話だ。
まぁ、元住んでいた世界じゃそれ程でもないが
この世界であれば大したものらしい。
いやぁ……遠かった。廃村出てからここまで二週間もかかったぜ!
馬車だともっと早いらしいがそんな金持ってないしな。
しっかし長い列だな? キビキビ検査しちまえよな~とか思ってたら
前に並んでいた冒険者らしきおっさんが話しかけてきた。
「今日は随分混んでるな……嬢ちゃんはお父ちゃんと都市観光か?」
……と、気さくに話しかけてくる。
おそらく後ろの中年のおっさんが、俺の親だと勘違いしているようだ。
尚、後ろのおっさんは人間の中年でメタボだ。商人か何かなんだろうか?
リュックサックをパンパンにしたものを三個も持っていた。
パワー半端ないな!?
俺は今、初代から受け継いだローブを身に着けている。
緑色のいかすヤツだ、フードもしっかりかぶっているので耳は見えていない。
それで勘違いしたのだろう。
「いや、俺にとーちゃんはいないぞ? 後ろのおっさんは他人だ」
と、しっかり否定しといた。
メタボとーちゃんは嫌なのであ~る。
「はぁ!? おまっ……浮浪児か? でも身なりは小奇麗だし……」
冒険者のおっさんはちょっと考え込んでしまった。
俺はおっさんを観察してみる。
年の頃は三十代後半辺りか、青い髪を短く刈り上げている。
同じく青い瞳に……男の観察なんてどうでもいいか!!
面倒臭くなった! 簡単に言えばモブだ! モブ!
よく背景に居るフツーの冒険者だ!考えるだけ無駄だ!
と……考えることを放棄した俺だが、
冒険者のおっさんは考えがまとまったらしく再び話しかけてきた。
「いや、実はな……最近盗難騒ぎが続いててな。どうも犯人は子供らしいんだよ」
「ほう……」
続けて、とんでもないことを俺に告げる。
「しかもエルフの子供だって噂だ」
「なん……だと……!?」
おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!?
ピンポイントで俺が疑われるだろうが!?
なんでこのタイミングで、そんなことやらかしてるヤツがいるんだよ!?
ふじゅけるなぁぁぁぁぁっ!!
「……お、おい? 大丈夫か?」
怒りのあまりプルプル震える俺を、心配そうに見るおっさん。
心配してくれるのはありがたいが、今この問題のことで頭がいっぱいだ。
「おっさん、エルフでも問題なく中に入る方法ってあるか?」
取り敢えず小声でおっさんに聞いてみる。
何か上手い手を、持ってないだろうか?
「なんでそんなことを聞くんだ?」
変なことを聞くなぁ? って表情のおっさん。
まあ、今日会ったばかりの子供だしな。
俺はおっさんをしゃがませ、フードの中の耳を見せる。
「嬢ちゃんエルフか! しかも白エルフじゃねぇか!?」
ぶぅぅぅぅぅぅっ!! 声でけぇよ!!
なんのためにコソコソやってると思ってんだ!?
列に並んでいた人達が一斉に俺を注目する。
オワタ。これは完全に詰みってヤツだ。ちくしょう。
もう開き直るしかないな!
俺は被っていたフードを取り払った。
金色に輝く長い髪と、大きくて長い少し垂れ気味の耳が露わになる。
「……小声で喋ってたのが無駄になったじゃねぇか」
その場にいた人が俺を取り囲む。
ちぃ! 俺を取り押さえるつもりか?
無実の罪でそんなことしたらたとえ天が許そうと
この俺はゆるさんぞっ! 超魔法『ファイアーボール』の餌食にしてくれる!
「うおぉ……本物だ! 初めて見たな白エルフの子供!」
……何だ? 人を珍獣でも見るかもような視線は?
「あの引き籠りで有名な種族の……しかも子供!
いやぁ、長生きはしてみるものじゃ……」
と、禿げた爺さん。
次は二十代ぐらいのお姉さんに抱きつかれ。
「か~わ~い~い~!! お持ち帰りしていい!?」
とか言われ最後には皆に揉みくちゃされた。
おいぃぃぃぃ!? 耳に触るな! くすぐったいんじゃ!
髪の匂い嗅ぐなおっさん! ヴァー!? 誰だケツ触ったの!?
かなりカオスな状態になったのは言うまでもなかった。
話に因ると、この世界にもライトエルフとダークエルフがいるらしく
単に肌の色で白エルフ、黒エルフと分けているらしい。
白エルフは超引き籠り体質で、基本エルフの国から出てくることはないそうだ。
それでも数百年に一度、人里に現れて魔法を伝授したりするらしい。
人間との繋がりを維持するためだそうだ。
黒エルフは千年も前から人間の奴隷として扱われていたらしい。
なんでもエルフの王国で罪を犯した者が、肌の色が黒くなる呪いをかけられ
王国を追放された者の末裔って話だ。
呪いによって魔法が使えなくなった黒エルフは人間に捕えられ奴隷となった。
まあ後はよくある話になっていく。
近年ラングステン王によって奴隷解放令が敷かれ、
晴れて自由の身になったらしい。
子孫はいい迷惑だったな。
てなわけで、白の俺はそれ程警戒されるでもなく
無事に王都フィリミシアに入ることができた。よかったよかった。
因みに入国料は銅貨五枚、おっさん冒険者のアルフォンスに払わせた。
迷惑料として。
◆◆◆
やって来ました! 王都フィリミシア!!
ヴォー! 屋台がいっぱいだ!! 食いてぇ!! でも金ねぇ!!
おんぼろ小屋のような店が道の脇を埋め尽している。
食べ物の店が多いが道具等を売っている店もあった。
フィリミシアの町の外観はまさにファンタジーゲームの町って感じで
中世の西洋風建物が立ち並んでいる。
お? 遠くには城も見えるぞ!? すっげーな!
「ははっ、凄いだろ? ここが南門名物の露店街さ」
アルフォンスのおっさんが言うには
ここで冒険前に必要な物を買うのが良いと言っていた。
ちゃんと値段見ないとぼったくりがいるとのこと。
どこの世界でも同じことしてるヤツがいるなと感心していると……
「ほら、あそこがヒーラー協会だ。登録してきな」
「うん? ヒーラー協会? なんじゃそりゃ?」
俺が首を傾げていると、アルフォンスのおっさんは不思議そうな顔で
再び俺に話しかけてきた。
「ん? 白エルフは治癒魔法の素質が高いから
てっきり治癒魔法の修行に来たのかと思ったんだが?」
初耳です。本当にアリガトウゴザイマシタ。
「アリュ……俺は冒険者になりたい」
………名前噛んだ。
「ん~でも……お前さんまだちっこいからなぁ? 登録無理だわ」
が~ん。
なんてこった……金が稼げないじゃないか。
「けど、治癒魔法覚えりゃ何かと役に立つぜ?」
と、アルフォンスのおっさんは露店で治癒の仕事をしているヤツがいる
との情報をくれた。
ほう、それならばお金を稼げるかもしれん。
この世界では治癒魔法の使い手は少ないらしい。
素質がある種族は白エルフ、つまり俺だ。
他の奴らは、超引き籠りなので居無いのと同じらしい。
もっと出てこいよ白エルフ。
「ま、治癒魔法が使えれば……の話だがな?」
中には、詐欺まがいレベルの治癒魔法しか施せないヤツ等がいるらしい。
そこで登場したのがヒーラー協会。
登録には素質を調べる魔法を使い適性があれば指導、
訓練を経て晴れて登録となるらしい。
その後、身分を証明するカードを貰えるそうだ。
これは元いた世界でいうところの国家資格だそうな。
取得できるなら損はないな!
「取り敢えず行ってみようぜ? 大丈夫、おまえさん素質あるよ」
なんでも白エルフはS~Eまである6段階のランクの内、
最低でもCは余裕らしい。ちょっと期待してもよさげだ。
まあ、素質あっても努力しないと腐るから油断はできない。
ってアルフォンスのおっさんが言っていた。ふきゅん。
「……よし、それしか稼ぎようがないならやるしかないなっ!」
気合いを入れて、俺はヒーラー協会に突撃した。
うおぉぉぉぉ! とてとてとて……(遅い)
協会の中は人でごった返していた。
ケガ人が沢山いる、そのケガ人を必死に治療するヒーラー。
治療の甲斐なく冷たくなり、二度と起き上がらないであろう冒険者。
その冒険者に縋り付き泣いている仲間達……
「何この戦場……」
アルフォンスのおっさんは、顔を手で押さえ俺を見ながら言った。
「ここはいっつもこの有様さ……足りないんだよヒーラーが」
成程、ここにいるケガ人はだいたい冒険者なのだろう。
要はへっぽこ共が無理した揚句、ご覧の有様状態になったと。
そう告げるとアルフォンスはあさっての方向に顔を背けた。
「……痛いところ突くなおまえさん、そのとおりだ」
改めて俺に顔を向ける。
「現状……優秀なヒーラーがいないのさ、前に魔王討伐で優秀なヤツが
軒並み死んじまった。しかも討伐は失敗……最悪の結果さ」
げぇ!? 魔王!? お約束なヤツまで完備とかマジ勘弁!
「でだ、おまえさんがヒーラーとして活躍してくれれば
冒険者達も少しはマシに活動できると思うんだ」
続けてこう言う。
「育つ前に……死んじまうんだよ。若いヤツ等は無理するからな」
わかるわー俺もよく無理して酒飲んで吐いてたから。
え? ちょっと違う? 大して変わらんだろ?
「まあ……よくわからんが、俺がヒーラーになって
金稼げば冒険者が喜ぶってことか?」
アルフォンスのおっさんは苦笑して、それでも嬉しそうに「そうだ」と告げた。
でも、俺の頭を豪快になでるのは止めろ! 髪がぐしゃぐしゃになるだろっ!
「ま、取り合えずそこの登録コーナーに行って登録してきな」
指差す方には登録と書いた看板の下で、女性スタッフが待機していた。
暇なのか時折、欠伸を噛み殺しているようだ。
彼女は茶色い髪の毛を刈り上げたおかっぱ頭に、丸い眼鏡をかけた童顔で
物凄く爆乳(重要)だった。その胸に突撃したい。
「おいぃぃ? 登録してくれ」
女性スタッフは驚いた顔をした。
何だ? その珍獣を見たって顔は……デジャブ?
あ~そうか、もうフード被ってないから耳が丸見えなんだった。
これはうっかり。でも、気にしない気にしない!
こういうことは、稀によくあることだ!
「うあぁぁぁぁぁぁ!? 白エルフだぁ!?」
ざわ……ざわ……
急にロン! とか言いたくなる雰囲気になる。
いや……そうじゃない、今はそんなことどうでもいいんだ。
問題は……何故叫んだんだ、ということだ。耳が痛いわっ!(ぷんぷん)
「き……救世主が来ましたよ! マスター!
あ、少々お待ちください!」
そう言って、バタバタと女性スタッフは奥に走っていった……あ、こけた。
ほぅ……押しつぶされたおっぱいも中々だと感心する。
暫くすると奥から、先ほどの女性スタッフと
三十代前半のイケメンが姿を見せた。イケメン爆ぜろ。
「これは……珍しい。ようこそヒーラー協会へ」
大げさなお辞儀をして俺に挨拶するイケメン。
イケメンは存在するだけで罪だ、ということに気付いているのだろうか?
許せん。
「私はヒーラー協会のギルドマスター。
レイエン・ガリオ・エクシードと申します」
以後よろしくと再度仰々しく挨拶する。
……向こうも挨拶したなら、こっちもしてやらんこともない。
今日の俺は紳士的だ、命拾いしたなイケメン!(超尊大)
「エルティナ・ランフォーリ・エティル、登録しにきた」
バシバシ机を叩きながら早よ! と急かす。
実際にはぺちぺちとしか鳴ってないが
俺の迫真の演技で十分過ぎる迫力になっていることだろう。ふきゅん!
「え……? エティル? 男爵家の方ですか?」
イケメンが、わけのわからんことを言ってくる。
芋じゃねぇよ! ポテト食いたいけど今は登録が先だっ!
あ~もう! ポテチ食べたくなってきたじゃないかっ!
俺の胃袋に謝れっ!
「エルティナで登録! はやくっ、はやくっ」
再度リズミカルにバシバシ机を叩いて催促する。
相変わらずぺちぺちとしか鳴ってないが。
「は、はあ……ではまず適性を調べますので、
このカードに魔力を注入してください」
と、何やらカードを渡してきたので
俺は言われたとおりに魔力を注入することにした。
「きぃぃぃぃぃぃぃえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇいっ!!」
無駄に入れてやった。げへへ……これで少しはストレスも発散できよう。
「はい、結構です」と事務的に言われカードを返す。
「では、適性は……!?」
口を押さえ、顔を青ざめるイケ面。
なんだその顔は?
まさか適性低くて信じられない、と言うのを我慢してるのか?
そうだったら泣くぞ俺?
「申し訳ありませんが、奥の部屋まで御同行をお願いします」
と奥のドアまで俺達を案内した。
ドアに掛かっていた表札には『ギルドマスタールーム』と書いてある。
なるほど、何か聞かれたくない話でもあるのだろう。
俺達はイケメンに促され部屋の中に招き入れられた。
ギルドマスターの部屋は、彼の趣味であろうティーカップや皿が飾られていた。
部屋の内装も渋い茶色で統一された、落ち着いた雰囲気の部屋だ。
俺達は黒い大きなソファーに座らされる。
「申し訳ありませんが三十分程度お待ちください。
ある方にお会いしていただきますので、ただいま呼びに行ってまいります」
そう言い残しイケメンは小走りで部屋から飛び出して行った。
その姿をポカーンと見送る俺とアルフォンスのおっさん。
「三十分は長いんだぜ……」
「では、短く思えるようにいたしますよ~?」
先程の爆乳受付嬢が、トレーに良い香りの紅茶とクッキーを持ってきてくれた。
ガタッ!
俺は思わず立ち上がって紅茶とお菓子を凝視した!
ほほぅ……マーブルクッキーか! それに紅茶か『良いセンス』だぁ……
「落ち着けよ嬢ちゃん、お菓子は逃げたりしないぜ?」
はははっと、笑うアルフォンスのおっさん。
ソファーに色を合わせているであろう黒いテーブルに置かれた
少し赤みがかった紅茶を手に取り香りを楽しんでいる。
俺も紅茶を手に取り香りを嗅いでみた。
おおぅ……なんとも華やかな香りだぁ……
俺は白いティーカップに映える、赤い宝石のような液体を口に含んだ。
口の中に広がる苦みと僅かな甘みが素晴らしい。
そして口に含むことで感じる、圧倒的な紅茶の香りが鼻腔を通り抜ける。
「お? 嬢ちゃんも砂糖を入れないのか?」
「あたぼうよぉ……紅茶が死んじまうぜ」
そう、俺は紅茶に砂糖は入れない。これはこだわりだ。
入れるのが悪いわけじゃないし止めもしない。
それは個人の自由だし、楽しみ方のひとつだ。
紅茶にジャムを入れる楽しみかたもあるくらいだしな!
「甘味を感じたいなら、ここに頼もしい相棒がいるじゃないか」
そう言って俺はマーブルクッキーをひとかじりする。さくっ!
クッキーをかじるごとに広がる甘味……そして歯応え!
やがて唾液と混ざり合い、ねっとりとした物になるのだが、
それもまた甘くて美味しい。それを名残惜しくも喉に流す。
しばらくは口に残るクッキーの香ばしさにうっとりするのだが
紅茶の香りに誘われて、再び紅茶に手が伸びる。
あとはそれの繰り返しだ。んん~幸せだなぁ……
「おまえさんは、本当に美味しそうに飲み食いするなぁ?」
「美味しいのだから仕方がないんだぜ!」
こうして、俺達は紅茶を堪能しつつ時間を潰していった……
◆◆◆
三十分後……
現在この部屋には俺、アルフォンスのおっさん、イケメンに
七十代ぐらいの偉そうな爺さんが座っていた。
「初めまして……
私はマイアス教最高司祭デルケット・ウン・ズクセヌと申します」
うわ、宗教出て来た。ろくな予感がしない。
なんで、ここで宗教が出張ってくるんだよ!?
アルフォンスのおっさんなんか、顔青ざめてなんでここにいるの?
って顔してんぞ!? とっととお帰れっ!
「では……適性の結果をお伝えします」
イケメンが緊張しながら結果を告げる。
「……Sランクです」
ざわ……ざわ……
四人しかいないのにそれはどうよ? とか突っ込みたくなる。
周りをみやれば爺さんは眉間の皺を深くし、
アルフォンスのおっさんは半分魂が出ていた。
イケメンは青ざめてはいるが、おっさんよりはましといったところだ。
「……その結果は、本当なのだね?」
「ええ、間違いありません」
爺さんとイケメンで勝手に話が進んでいる。
何なの、本当に……
ささっと、登録済ませて俺に金の生る木を与えるのだっ!
はりー! はりー!!
「エルティナ様、貴女は間違いなく聖女としてこの世に遣わされたのです」
おい!? じっさまっ! 今なんつった!?
聖女だと!? 凌辱率トップを爆走するキャラじゃねぇか!!
冗談じゃないぞっ! 絶対お断りだ!!
「今この世は魔王に因って破滅の危機に向かっていますが、
いずれ異界より勇者が現れ世界を救います。
ですが、それまでに多くの犠牲が出ることでしょう」
爺さんは唇をかみしめ続ける。必死な表情だ。
「このタイミングで貴女が現れたのは間違いなく女神マイアス様のお導き!
どうか……どうか我々を御救い願いたいっ!!」
そう言うと、ガン!! と、テーブルに額を叩きつけ頼み込む。
「ふきゅん!?」
驚いて変な声を出してしまったじゃないか……ん?
おいぃぃぃぃ……テーブルに亀裂はいってんぞっ?
ひぃ! 流血ぅぅぅぅぅ!? 医者! 医者を呼べぇぇぇぇぇ!!!
「あばばばばばばば……」
俺がおろおろしてると、イケメンが助け船を出してきた。
「デルケット様『聖女様』が困惑しております」
はっ!? と我に返った爺さんが顔を上げる。
血が額からドバドバ出てたが爺さんは魔法ですぐ治した。
治癒魔法便利。
あとイケメン、ちゃっかり『聖女』って言ったな……?
「申し訳ありません。遂……取り乱してしまいました」
申し訳ないと、謝る爺さん。年なんだから無理スンナ。
「ですがこの五百年間Sランクの者は現れず
魔王復活に合わせ貴女がこの地にいらっしゃいました。
これを、運命と言わずして何になりましょうか?」
あ、これはやばい。断れないパターンだ。
『はい』って選ばないと永遠にループするヤツだ。
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「どうか……どうか、我々にお力を!」
まいったな。世界食べ歩き計画があるのに……
む……ティンときた!!
どうせ断れないのであれば、こちらも条件を付ければいいのだ!
「わかった……引き受ける」
おおっ!! と声が上がる。
甘いな! 最後まで言葉は聞くものだ。
「ただし魔王を倒すまでな? 俺にもやりたいことがあるんだ。
だから、それまでは……協力してあげるんだからねっ!
勘違いしないでよねっ!? ぷんぷん!」
……なんか最後の方が、ツンデレ風になったが気にしない。
話が纏まり、明日から早速治癒魔法の訓練が始まる。
いきなりとんでもないことになったが、
まあ自分の身になることだし良しとしていた。この時までは……
後に……この決断がとんでもなく、くっそ面倒なことになるとは知らずに……