聖女とチーム『ホーリー』
ふふふ…今、俺は最高にカッコいいぜ!
大勢の観客達に、見守られながら…堂々と歩く俺!
この為に、コッソリ練習した甲斐があった…ってもんだ!
今は普段着と違い、少し動きにくいドレスだが…何とも無いぜ!
…そう、思った時期がありました。
ガツッ!
俺は何かに、つまずいた!
な…何ぃぃぃぃぃぃっ!? この、エルティナがっ! 練習に練習を重ねた!
この、エルティナが…転ぶだとぉ!?
ならぬ! 断じてならぬ! 堪えろ、我ボディよ!!
…ダメみたいですね!
「あんっ!」
俺は転んでしまった!
「ひゃっ!? ちょ…ちょっと! きゃん!?」
更にプルルも、俺につまずいて転倒。
「ん? 何の悲鳴…あいた!?」
よそ見して、歩いていたライオットも仲良く転倒した。
残念! チームは全滅してしまった!
『あぁ~と! 「モモガーディアンズ」仲良く転倒してしまった!
大丈夫でしょうか!? …大丈夫みたいですね!
ライオット選手が、ラッキースケベだった模様です。』
「彼は、主人公体質なのでしょう。
注意深く、観察する必要がありますね』
会場は、笑いに包まれた!
こら、ゴーレムマスターズ以外に実況解説するな!
尚…ライオットは顔を、プルルのお尻にぶつけていた。
ふぅ…まだ子供だから良い物を。
少し、成長してたら責任問題だぞ!
…まぁ、原因は俺なんだが。(暗黒微笑)
「わ…わりぃ! 大丈夫か?」
「う…うん。僕は大丈夫だよ…」
顔を赤くしている、ライオットとプルル。
ほぅ…これは、意外と…? 俺はニヤリと笑った。
「ほら、行こうぜ!? エル!」
とと! こんな事している場合じゃなかった!
気を取り直して…ユクゾッ!
「おう! いくぞ!」
俺達は再び歩き出した…ひざ小僧が痛かったので、こっそりヒールを施したのは内緒だ!
◆◆◆
特設リングに、集った八チーム。
これから、くじ引きによる抽選が始まろうとしていた。
『それでは、くじ引きにて…対戦相手を決めます!』
『これは重要ですよ? 対戦相手の相性が良ければ、決勝まで被害を軽減できますからね』
…しらん! どんな相手だろうと、ムセル達が勝つに決まっている!
むしろ…初戦でエスザクと当たれぃ!
俺はトコトコ…と、くじ引きを引きに行った。
「…たかい」
くじ引きの箱は、高い所にあった。届かぬぇ…
「ははは…お嬢ちゃんじゃ、届かないか…ほら!」
と、俺を持ち上げてくれる…確かガイナってお姉さんだ。
…ふぉぉぉぉ!? おっぱいが後頭部に当たっている!
ふかふかだぁ…(恍惚)
俺は、心地良い柔らかさを堪能しながら…くじを引いた。
「…いちばーん!」
見たか! 最早「優勝したまえ!」 と、言わんばかりの数字ではないか!
『如何やら、「モモガーディアンズ」1番を引き当てた模様!』
『何やら、凄く喜んでいますね? 見ていて微笑ましいです』
ガイナお姉さんに、抱っこされたまま喜ぶ俺。
…もう、重いでしょ? 下ろしても良いのよ?
「…ナッシュ、貴女引いて」
「ガイナ…独り占めする気?」
…嫌な予感がした。
これは、間違い無く『抱き枕』フラグ!!
結局、ガイナお姉さんは渋々…俺を手放した。
俺はすかさず、逃走しようと試みるが…
「我々からは…逃げられない!」
な…なにぃ!? 取り囲まれただと!?
これが…じぇっとすとりんむ攻撃と言う物か!?
「…おおい」
多かった。
ナッシュお姉さんと、オルテナお姉さんだけかと思ったら…
カスミってお姉さんも、パフティーって人も…
こらこら! シア! 一応ライバルっって関係だろ!?
「…すまない、我慢できなかった」
キュッと、抱き付くシア。何だかなぁ…
そう言う俺も、されるがまま…だったのだが。
抵抗しても、敵わないしね!!
『抽選とは別に、エルティナ選手の抱っこ権を奪い合っている様です!』
『あの、ほっぺは重要ですよ! 私も「ふにふに」したいです!』
おもえ等…
てな事があったが、滞り無く抽選は終わる。
我れ等が『モモガーディアンズ』は1番…対戦相手の2番は…『ホーリー』だ!
プルルが気になっていたゴーレムを所有しているチームだな!
「やぁ、君達が対戦相手の『モモガーディアンズ』だね?」
そう声をかけて来たのは、対戦相手の『ホーリー』の選手ミカエルだ。
「初めまして僕は、ミカエル・ムウ・ラーフォンと申します」
「同じく、メルト・ラオ・フォースンだ」
「サンフォ・スウ・クランです」
と、優雅とも取れるお辞儀付きで自己紹介をして来る三人。
見事な紹介だと感心するが…何処もおかしくは無い!
「俺はエルティナ! こっちがプルルで、そっちの大きいのがライオットだ」
「んふふ…ヨロシク」
「お? 対戦相手か! よろしくな! 手加減無だぜ!?」
「勿論!」と言ってライオットとミカエルは熱い握手を交わす。
やっぱり男は、こうでなくては…な!!
「ふふ…僕達のゴーレムは聖女の神殿にて、祝福を受けたゴーレムです。
果たして、この子達に勝つ事が出来ますかね? …楽しみです」
俺達の前に現れた、三体のゴーレム。
が…俺の前に来て跪いた。
「………」「………」「………」
「………ふぁ?」
え? これって、俺が聖女だって認識しちゃってる?
どどど…如何したら、良いんでしょうかねぇ?
仕方無い、この子達は純粋な気持ちでやってる訳だし…
ちょこっと、撫でてやれば良いか。
俺は跪いている、三体のゴーレムの頭を撫でてあげた。
すると、ほんのりと輝くゴーレム達。
…嬉しかったのかな?
「こ…これは!?」
「じゃ、試合で合おう! サラダバー!」
俺達は颯爽と去って行った。
振りをして、対戦組み合わせを見に行った。
◆◆◆
チーム『モモガーディアンズ』僕達の初戦の相手。
正直、負ける要素が全く無い。
聖女の神殿の祝福を受けた、ホーリーゴーレム達。
あらゆる敵を退ける…聖なる戦士達だ。
「まぁ、取り敢えず…顔見せしとこうか?」
「そうだな、教えにある通り礼を尽くさねばな…ミカエル」
相変わらず固いな? メルト。
そこが良い所であり、悪い所…なのだが。
「あのエルティナって娘、可愛いよね?」
サンフォは、少し軟派過ぎるか。
でも、冷静に状況を判断出来るので、ワザとやっている節がある。
まったく、僕の友人達は癖のある奴ばかりだ。
「良し、挨拶に行こうか?」
こうして、僕達は『モモガーディアンズ』に、挨拶をする為…移動を始めた。
彼女等は…直ぐに見つかった。
エルティナと呼ばれた少女は、白エルフだ。
透き通るような白い肌に、大きく長い耳。
美しいプラチナブロンドの長い髪は、それだけで芸術品であるかの様だ。
小さいのに、兎に角…良く目立つ。
容姿も大人しくしていれば、儚げで可憐な美少女である。
ただ…性格は明るくて元気の塊の様な少女に見えた。
凄まじいギャップだ。
彼女の元に歩み寄り、挨拶を交わした。
それからは、各々の自己紹介がされ…ゴーレムを紹介する事になった。
…が、アーク達は驚くべき行動をした。
エルティナの前に並び…跪いたのだ。
アーク!?
思わず、口に出そうになったが思い止まった。
何も意味無く、こんな事をするアーク達じゃない!
これは…まさか!?
僕はエルティナを見た。
優しく微笑み、アーク達の頭を撫でている。
すると如何だ!? ほんのりと…ゴーレム達が輝いているではないか!!
しゅ…祝福、聖女の祝福か!?
思わず、口に出しそうになるのを堪える。
「こ…これは!?」
「じゃ、試合で合おう! サラダバー!」
と言って、そそくさと去って行くエルティナ。…いや、エルティナ様。
「…いらっしゃったぞ?」
「ああ…俺も、奇跡を目のあたりにした」
「あの子が聖女様か…ふふ、やる気出ちゃうなぁ!」
だが、これは神聖な試合だ。
手は抜かない、多分…聖女様もそのつもりだろう。
ならば、一切の手も抜かず戦うのみ。
「アーク! 分かっているな!?」
頷く、三体のゴーレム。
以前とは、比べ物にならない程…力が溢れている。
「我ら『ホーリー』全力で戦わせていただきます!」
僕達は、聖女エルティナに、そう誓った…
誤字 ゴーレムマスターズ意外に実況解説するな を
ゴーレムマスターズ以外に実況解説するな に訂正。