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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第二章 身魂融合 命を受け継ぐ者
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祝福

おでこを、ぶつけてから一夜経ち…新しい朝が来た!


「ふあぁ…良く寝たぜ」


むくりと、体を起こす俺。そして、転がる猫達。


「また君達か…転がるなぁ」


それでも…起き様としないコイツ等は、大した者だと思った。

窓際には、もっちゅ達が「ちゅちゅ!」と、賑わっている。

そしてベッドの下には、わんこ達がだらしなく寝っ転がっていた。

…お腹を見せて、仰向けに寝るなよ。(苦笑)


ムセル達も俺が目覚めたのに気付き、近づいて来た。


「おはよう! ムセル、イシヅカ、ツツオウ!」


「にゃーーん!」


返事をするのは、ツツオウだけだが…ムセルとイシヅカは、体を使って意志を伝えている。

腕を上に上げるのはムセル。ガッツポーズするのがイシヅカ。


ムセル達が生まれてから、毎朝このやり取りだ。


挨拶を終えて、寝間着から普段着に着替える。

そして、朝飯まで桃の聖域でトレーニングだ。

勿論、桃先生に挨拶するのは忘れない! 基本だな!


「桃の聖域での訓練…いいぞ~! 強くなりそうだぁ!」


ムセル達と一緒に、俺もトレーニングする。

今まで、一人で黙々と行っていたので寂しくなくなった。

やっぱり、皆でするトレーニングは…良い物だぁ!


こんな感じで、本戦開始の日までトレーニングに明け暮れたのだった。

あ、ちゃんとお仕事もしてたぞ!? この間の様な、失態は避けなければな!


◆◆◆


「諸君! 今日は、決戦の日であーる!」


俺達は朝早くから桃の聖域に集まり、戦いの準備を行っていた。

ライオットとプルルも『おめかし』してやって来た。


「別に、普段着で良いって言ったんだけどな?」


ライオットは、普段着ている拳法着みたいな服では無く…

Yシャツにネクタイ、紺色のズボンの姿だった。

髪型もボサボサでは無く、きちんと整えられている。

ライオットのかーちゃんが、施したものだろう。

うむ、おりこーさんっぽく見えるぞ!


一方、プルルは白いワンピースの出で立ち。

ピンクの髪の毛が、良く映える。身嗜みは、完璧だ!

文句の付けようが無いぜ! 流石、女の子!


そして、俺は…全身をピンク色で、染め上げて差し上げた。

ピンクのドレスに、ピンクのでっかいリボン!

リボンには、アクセントに真ん中に金の飾りがあった。

尚、おパンツもピンクだ!


本来…豚の着ぐるみで、本戦に臨もうと思っていたのだが

本戦出場をパパンとママンに、報告に行ったところ…全力で説得された。


そこで、用意されたのが…このピンクのドレスと言う訳だ。

これで…桃先生のご加護が受け取れるに違いない!(確信)


「見事にピンクだな?」


俺を見た、ライオットの感想だ。


「見事なピンクだと感心するが…何処も、おかしくは無いぜ!」


そして、俺の返事。


「話が通じてるのか如何か、分からないねぇ?」


と、プルルが苦笑する。


うむ! 何時も通りだな!

それでは、桃先生の御前でムセル達に祝福を授けよう!

前に、エレノアさんに教わったが…実は一度も使っていない!

無駄に素性を隠しているから、依頼者いないんだぜ!


…と言う訳で、偶には聖女らしい事でもしてみよう。


「ムセル、イシヅカ、ツツオウ…こっちにおいで」


言われた通りに、こっちにやって来る三体…いや、三人で良いな!


三人を俺の前に立たせる。

そして、俺は目を瞑り精神を集中させる。


祈るは三人の無事、思うは三人の勝利、授けるは三人に、くじける事無き勇気。


俺から三人に向けて、力が解き放たれるのを感じた。

良かった、ちゃんと発動したみたいだ。


効果は…ぶっちゃけ、殆ど無いらしい。

祝福を受けた者が、やる気になる程度だそうな…


「汝らに、愛と勇気と勝利が有らん事を…

 聖女エルティナ・ランフォーリ・エティルと、桃先生の祝福を与えん…」


最後の決め台詞も、噛まずに言えた! …ふぅ、やったぜ!


俺が、ホッとしたのも束の間…不思議な事が起こった!

俺と桃先生の芽の力が合わさり、とんでもない現象が起こった!


ムセル達を包む、桃色のオーラ。

これは…間違い無い! 桃力だ!!


桃の聖域を、埋め尽くさんとばかりに膨れ上がる桃力!

桃先生! ハッスルし過ぎです!

桃先生の芽を見ると…「やり過ぎちゃった」と、言ってる気がした。


やっぱり、やり過ぎだったのか~


やがて…桃力はムセル達に、吸い込まれる様に吸収されて行った。

ふぅ…一時は、如何なるかと思ったが…何とも無かったぜ!


「よし…後は、お前達次第だ。

 思いっきり戦って! 悔いの無い試合にするんだ!」


三人は再び、桃先生の芽の前で…誓いを行った。


今日は決戦である。ホビーゴーレム達が、凌ぎを削り…頂点を目指す!

それはもう…熱い戦いが待ってるに違いない!


「うおぉ…エル、お前…本当に聖女だったんだな?」


「くっそ失礼だな? 君は?」


ライオットの失礼な発言に、若干しょんぼりする俺。

まぁ…確かに、聖女っぽい事してないけどさ…


「うん…凄いね。 食いしん…いや、聖女エルティナは…」


プルルが、本当に凄い物を見た目で俺を見つめていた。

止せ、ムセル達が見ている。

俺は「ふっ…」と笑い、前髪をクルクル回したくなる衝動を抑える。


本当に凄いのは、桃先生であって俺じゃない。

そこん所を、きちんと説明しなくては…


「良し! そろそろ行こうぜ! 会場のフードコートで腹ごしらえだ!」


「はい! 行きます!!」


…はっ!? 説明する機会を失った!

ぎぎぎ…ライオットめ! やっぱり鼻にミントの刑だ!


そんなこんなで…桃先生に挨拶をして、決戦の地へ出陣する俺達。

目指すは優勝! 打倒シアとエスザク!!


俺達は勇ましく、試合会場へと向かった…


無論、いもいも坊やと野良ビースト達も、一緒だ!

皆、この日を…楽しみにしていたのだ!


◆◆◆


フードコートなう。


現在、午前…八時ぐらい。

それでも、フードコートは開店していた。

何故ならば、今日はグランドゴーレムマスターズ本戦の開催日だからである。


グランドゴーレムマスターズは、この国において…一種のお祭りである。

老若男女問わず、観戦にやって来る。

昔、ホビーゴーレムで遊んだ大人。

今も現役で、ゴーレムマスターズをやっている人。

血を見るのは苦手でも、戦いを見るのが好きな人達…等。

多くの人々の関心を集めているのだ。


「朝早くても、人が多いなぁ? 流石、本戦だな」


ライオットが、そう言うのも無理は無い。

普段は、人が居ない時間である。

にも拘らず…大勢の人で溢れていた。


「殆ど、大会関係者だけどねぇ…ほら? お偉いさんが、見に来るだろう?

 今回は国王陛下も、いらっしゃるって噂だよ?」


…王様来るんかい!?

まあ、偶には…こう言う物見てストレス発散しても良いのかもしれないが。

と、言う事はエドワードも来るかもしれないな…


そんな事より…朝ごはんだ!

俺は験を担いで、カツサンドを注文している。

ライオットは、大盛りのかつどぅんだ!

朝から良く、そんなに食えるな…


「お待たせしませた、カツサンドです」


運ばれて来た、カツサンド。皿に二つ乗っている。

俺には、多すぎるので一つはプルルにあげる事になっている。

時間差で、ライオットの…おいぃぃ!? 大盛り過ぎるだろ!?

何に挑戦しているんだ…?


ライオットのかつどぅんは、バケツに入れられていた。

ヤケクソ気味に突っ込まれたご飯に、三人前はありそうなカツの山。


「へへ…やってくれるじゃねぇか!? 恩に着るぜ!!」


店主のおっちゃんと何やら話していたが…まさか、コレの為か?

…ま、まぁ良い! 温かい内に食べよう!


「「「いただきます!」」」


食材と、作ってくれた人に感謝を込めて…俺達は食事を行った。


俺はカツサンドを一つ、プルルに渡してもう一つの方に齧り付く。はむっ!


かなり、大き目なカツサンド。

ボリューム、値段、味。

何れも、満足できる逸品だ!


カツを挟むパンは軽くあぶられ、バターを塗られている。

間に挟まった肉厚のカツ、調味料は粒マスタードにウスターソース!

シンプルだが…それが良い!

しかも、お弁当として持って行った場合に無い、熱さが…このカツサンドにはある!


「はむっ! んぐんぐ、ごくん! はむっ!」


…と、止まらん! 一気に食べないと…熱さが逃げてしまうじゃないか!

罪作りな、カツサンドだな!?


一気に食べ終えてしまった。ふぅ…満足満足!


「ごちそうさまでした!」


感謝を込めて、食材にお礼を言う。


チラと、ライオットを見れば…既に食べ終えていた。

おいぃぃぃ…如何言う胃袋してんだ? おもぇ?


「げっぷ! いやぁ、満足…満足!」


本当に、満足そうなライオット。


「んっふふ…僕も満足だよ。誰かと一緒に食べる食事は…美味しいねぇ」


穏やかな笑みを浮かべるプルル。

うん! やっぱり、ご飯は皆と食べるのが一番美味しいぞ!


「そうだな! 皆と食べるご飯は…格別さ!」


俺は、迷う事無く言い切った。

誰かと、共に食事を摂る。普通そうで、普通でない事だ。


心許した、友人と食事を摂れた事に…心から感謝した俺であった。

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