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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第二章 身魂融合 命を受け継ぐ者
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ドス黒い何か

「チーム『モモガーディアンズ』の皆さん、宜しいですか~?」


審判の人が、呼びかけて来た。なんじゃらほい?

俺達の前まで来ると、金色のカードを差し出して来た。


「はい、おめでとうございます! これは本戦で登録時に使うカードですよ!

 絶対に、無くさない様にしてくださいね?」


差し出された、金色のカードを受け取り…ジックリと眺める。

カードには『グランドゴーレムマスターズ本戦出場』と表記されている。

裏には…チーム名『モモガーディアンズ』と俺の名前。

そして、ムセルの名前が書いてあった。


「うおぉ…かっちょえぇ!!」


俺は、年甲斐も無く興奮した!

…ん? 適正年齢か? まぁ、良いか! 誤差だよ、誤差!!


「んふふ…これは、ちょっとした物だよ? 実は身分証明にもなる。

 特にゴーレムギルドには、効果バッチリさ!」


「へ~大した物だなコレ!」


ほっぺにカードを、スリスリして大喜びのプルル。

喜んでいる様で良かった。俺も嬉しいぜ!


「うん…嬉しいんだが、シシオウの名前がなぁ…」


諦めろ! その子は既に『ツツオウ』として、ライバル達にマークされているぞ!


自分より格上のゴーレム達に、一歩も引けを取らないツツオウは何時の間にか…

「凄いゴーレムだ!」と、絶賛され一目置かれている…らしい。

遠くから、ヒソヒソ話している声を拾っただけだから、何とも言えないが…


実際、ツツオウの戦績は凄まじいからな。

内容は兎も角…うん、アレな内容ばっかりだけど!

勝てば、良かろうなのだぁぁぁぁぁぁっ!!(確信)


「さて、これでグランドゴーレムマスターズ本戦に出れる訳だよ!

 まさか、新造チームでいきなり本戦とは…ついてるね!?」


と、言って…「いや、違うね」と、言うプルル。


「このメンバーだから…本戦に進めたって事かねぇ?」


プルルは俺とライオット、ムセルとツツオウを見渡す。

そして…俺とライオットを抱きかかえた。


「ありがとう! 僕の念願が叶ったよ!」


「それ程でも無い」


「へへ…何だか照れるぜ」


此処は、尊敬するあの方に習い…謙虚に答えて置く。

プルル、本当に良かったな!


予選も、終わり…そろそろ帰る事にした。

野良ビースト達も連れて帰らないと…

その前にリリーちゃんと、ジュリアンちゃんを送って行かなければ。


試合を見終わったリリーちゃんと、ジュリアンちゃんは凄く満足そうだった。

野良ビースト達も、試合の感想を話し合っている。


…俺は何時から、こいつ等の話が分かる様になったんだ…?

まぁ、未だに何となく…なのだが。


「んじゃ、帰るか~?」


「そうだねぇ? 今日は色々、疲れただろうし…戻って休もうか?」


「そうだな! 親父には自慢出来ねぇが、かーちゃんなら…言っても良いかもな!?」


ライオット! それは…ばれるフラグだ!

ウキウキしながら、ツツオウを肩に乗せ帰り支度をするライオット。

おとんに認めて貰うには、優勝しかないな!

結果を見せれば、文句を言われまいて!


周りを見れば、観客達も帰り支度をしている。

如何やら、全ての試合が終わった様だ。


「俺達も帰るぞ…!?」


不意に…俺を襲う、何か…

何だ? これは…!?


憎しみ? 怒り? 悲しみ? 妬み? …殺意!? 猛烈な…飢え!?


ドス黒い何か、異常な気配。

この場にあってはならない、何かを…俺は察知した。


「………!?」


キョロキョロと辺りを見渡すが…それらしき者は居なかった。

やがて、気配はしなくなる。


「エル~帰ろうぜ…如何した? エル?

 汗でびっしょり、じゃねぇか!?」


「…え?」


言われるまで、気が付かなかったが…俺は、汗だくになっていた。

極度の緊張…に、よる物だろう。


「だ…大丈夫だ、何でも無いよ」


努めて、平気な振りをするが…実際は、まだ動揺している。

あんなドス黒い、感情の様な物を感じたのは…初めて? …かな?

分からん、昔…あった様な…無い様な?


「おいおい…大丈夫かよ? また、おんぶしていくか?」


「…おんぶ? ……!!」


おいぃぃぃっ!? ライオット! 俺の黒歴史を、思い出させるんじゃねぇ!!

もう絶対に、あ~ん。は、しないからな! 絶対だぞっ!?


「だだだだ…大丈夫だ! 問題無いです! はい!」


俺はムセルを抱えて、試合会場を走って出て行った。

ひ~! なんて物を思い出させるんだよ!? うぎぎ…!


走って行った、俺の後を追う野良ビースト達。

プルルも、悪い顔をして追いかけて来る。

ライオットはキョトンとした表情で追いかけて来る。


あ~! この時だけは、足の遅い自分が恨めしい!

俺の怒りの咆哮が、空に吸い込まれて行った…


◆◆◆


「ライゼンさん、リリーちゃん連れて来たよー?」


「おやおや? 姿が見えないと思ったら、食いしん坊の所におったんかい?」


町の中央に位置する商店街から、東にある放牧地帯にライゼンさんの家がある。

リリーちゃんは何故か、俺がお気に入りなのだそうな。


「め~」


「はは…随分と満足気だなぁ? 良い事でもあったか?」


俺は今までの、経緯を説明した。

ライゼンさんは、ニコニコしながら俺達の話を聞いてくれた。


「いやぁ、大したもんだ! 俺も小さい時、良くやったが…本戦には、一度も出れなかったよ!」


俺の頭を、ワシワシ撫でながら笑うライゼンさん。

うへへ…うれしいなぁ!


「こりゃぁ…本戦は応援に行かないとなぁ! チーズいっぱい持って駆け付けるよ!」


手を振って、見送ってくれるライゼンさんと、リリーちゃん。

俺達も手を振って、次の目的地…リカードさん家に向かう。


時間は、午後二時頃かな? 太陽が燦々と輝いて…暑い事、暑い事。

このままでは、干からびてしまう!


「よし! 水分補給を、せざるを得ない!」


俺は、フリースペースから桃先生を取り出し、食べやすい様に切り分けた。

んん~瑞々しい果肉が、太陽の光に照らされて輝いている! 美味しそう!!


「召し上がれぃ!」


「頂きます!」


と、次々に桃先生を頬張って行く皆。

無論、野良ビースト達の分も切った。当然だな!


皆、尻尾をブンブン振って…大喜びで食べていた。

全員、桃先生に感謝するように!


その後、大きな木の下で休憩する。

日影が出来ているので涼しい。

いもいも坊やには、桃先生の葉っぱを食べさせた。果肉の方は食べれないらしい…残念!

…美味しそうに食べている! 良かったな!


「ふぃ~…良い風だぁ」


吹き抜ける風が、上昇した体温を下げてくれる。

周りを見れば、辺り一面緑色。

空を見上げれば、目が冴えるような青空。


「…自然って良いなぁ」


思わず出た言葉に、クスクスと笑うライオットとプルル。


「何、当然の事を言ってるんだよ?」


「んふふ…そうだねぇ? 自然って、良い物さね」


二人とも、空を見上げる。

野良ビースト達も、同じく見上げていた。


広大な牧草地の緑、天を染める青。時々、雲の白。


昔の記憶では…こんな光景を見た事が無い。

灰色の石と、黒い道。淀んだ空に臭い空気。

今思うと、便利さと引き換えの、つまらない世界に見えた。

人は、無くしてはならない物がある。

それを、無くしちゃったのが…元の俺の世界だったのかな?


「ふぅ、良し! そろそろ行くか!」


俺は背伸びをして、元気良く立ち上がり…バランスを崩して坂を転げ落ちた。


「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


慌てて、俺を追いかける野良ビースト達。

幸いにも、転がった先はリカードさん家だった。

ふ…計画通りだ!(震え声)


「ん? お~ジュリアン! ま~た食いしん坊の所に行ってたか~?」


「リカードさん、ジュリアンちゃん連れて来たよ?」


「も~」と言って、リカードさんの元に駆け寄るジュリアンちゃん。

やっぱり、家族の元が一番なんだな。


「わるいねぇ、何時もジュリアンがお邪魔して?」


「いや、良い子にしてるから問題無い」


そして、ライゼンさんにした説明を、同じくリカードさんにもする。

「うんうん」と、笑顔で聞いてくれた。


「こりゃぁ、俺も応援に行かないとな!」


手を振って、見送ってくれるリカードさんとジュリアンちゃん。

俺達も、手を振ってその場を後にする。


ヒーラー協会に着いた時には、日も傾き薄暗くなっていた。

「またな」「お疲れ様だよ」と言って、ライオットとプルルも家に帰って行った。

友達が帰って、普通なら寂しい所だが…

俺には、ムセル達ホビーゴーレムと、野良ビースト達が居るので大丈夫だ。


「よし、俺達も帰ろう」


こうして、長い一日が終わりを迎えようとしていた。


だが…あの時、感じたドス黒い何かが…俺の頭から離れなかった。

いったい、何だったのだろうか?

俺は考えながら、歩き…ヒーラー協会の壁に、おでこをブツけた。…いたひ。

誤字 …熱い事、熱い事。

訂正 …暑い事、暑い事。

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