テスタロッサ
試合会場に戻る、俺とマフティ。
マフティの肩にはてっちゃ。俺の肩には、いもいも坊やが乗っている。
いもいも坊やには、店でピンクのリボンを買って上げた。
緑の身体によく似合うぜ!
会場に着いた俺達を、熱気が迎えてくれた。
おぉ…やはり、会場は熱量が違うぜ。
戻って来た俺達に、熱い視線が注がれる。
「よぉ、またせたな? お前達!」
マフティの言葉に、野太い声が応える。
太っちょのお兄さんや、ガリガリの眼鏡お兄さん達だ。
「うおぉぉぉぉぉぉ! 来たぞ!」
「ど…どんな衣装だ!?」
「ハァハァ…」
何だか、この世界にも…その筋のお方が居る様だった。
まぁ…無理も無い、この完成度だ。
改めて、マフティの肩に乗っている、てっちゃを見た。
…? んん? 良く見たら、マフティと顔がそっくりだな?
成長したらマフティも、てっちゃ見たいな顔付になりそう。
違うのは髪の色だけだ。
マフティも、きちんと手入れすれば良いのに…
艶のある黒い髪は…良い物なのだよ?
マフティは、普段はきつい表情だが…気がゆるむと、非常に可愛らしい顔になる。
今のマフティと、てっちゃは…同じ顔だ。可愛い。
「ん? 如何した? 早く、試合を始めようぜ!」
「お、おう! そうだった! よぅし…やるぞ! ムセル!」
リングに降り立つてっちゃ。
「テスタロッサ、服をお披露目してやれ」
ふふん! と、自信満々でてっちゃに指示する。
てっちゃは、素直にボロキレを外した。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」と、野太い歓声。
姿を現した、てっちゃの衣装は…安心と信頼の『黒バニースーツ』だ。
尚、タイツは灰色である。
これで、チーム名に恥じない出で立ちになっただろう。
てっちゃは元々、自前の耳と尻尾が有るので…余った付け耳と尻尾は俺が貰った。
後で、イシヅカとツツオウに着けてやろう。
しっかし、スタイル良いからスッゴイ似合うな!
再びボロキレを、マントの様に羽織るてっちゃ。
何か髑髏マークを付けたら、何処ぞの宇宙海賊みたいだぁ…
「はい、それでは試合を始めますよ?」
審判の人が、促して来た。
うし! やるか!!
「チーム『モモガーディアンズ』対『黒い三人組』の試合を始めます!
ルールは、分かってますね?」
頷く俺達、マフティ達も同様に頷く。
「それでは、試合開始!」
わぁぁぁぁぁぁぁぁっ! と言う歓声が上がる。
試合が始まった!
先ずはムセルが、牽制のマシンガンを放つ。
今までは、ほぼ…この攻撃で試合が決まっていた。
だが…ダイブルトンが、てっちゃとわららの前に立ち…二人を庇う。
マシンガンの弾は全弾命中するが…ダイブルトンは全くダメージを受けて無さそうだった。
圧倒的な耐久力! その鎧は、伊達では無いって事か…!?
「何て装甲だい!? ステータス如何なってるのかねぇ!?」
プルルが慌てて、ダイブルトンにステートかける。
そして、驚愕した表情になる。
俺も見させてー!
◆ダイブルトン◆
腕80 耐380 俊20 知20
スキル 守護者
アーマードゴーレム 『SSS』
製作者 ブルトン・ガイウス
「ラ…ランクSSSだって!?」
「うわぁ、すっげぇ偏った能力だな?」
「何だとぉー!?」
とんでもないゴーレムを創り出したな!? ブルトン!
腕組みをして、満足そうにダイブルトンを見るブルトン。
それに頷くダイブルトン。
会話は無い、だがそれ以上の意思疎通があった様に見えた。
彼らも、似た者親子か。
しかし…SSSか! 俺の時は、魔力が暴走して出来たが…
色々、作り方が在るのかも知れないな。
ここで、てっちゃが動いた!
ボロキレをマントの様に、はためかせ…回り込む様に動く。
そして、人差し指をムセルに向ける。
「テスタロッサ! 見せてやれ、お前の力を!!」
マフティがそう言った瞬間、てっちゃの指先から極太の魔法光線が放たれた。
光線がムセルに当たる前に…イシヅカは動いていた。
ムセルを突き飛ばしていたのだ。
間一髪の所で、難を逃れたムセル。
しかし、凄いなイシヅカ。今のを予測していたのか?
それとも、勘か…?
「うわ!? 何か凄いの出たぞ? あのウサ子も、ランク高いんじゃないのか!?」
てっちゃの、放った光線に驚くライオット。
騒めく試合会場、ゴーレムが魔法を撃ったと言う事実に。
会場の、その筋の者がヒソヒソ話し合っている。
「…今調べるよ! ステート!」
◆テスタロッサ・ラビックス◆
腕5 耐30 俊465 知500
スキル 魔法行使
ホムンクルス 『SSSSS』
製作者 マフティ・ラビックス
「はぁ!? 何だいこれ!? ランクSSSSS!?」
「こいつも、偏ってるなぁ…」
「そんな事より…ホムンクルスってゴーレムなのか?」
ゴーレムコアで、人工生命体を創ってしまったマフティ。
しかも、魔法行使って…とんでもなくないか?
魔法を撃ち終わったてっちゃは、ダイブルトンの陰に隠れた。
そう言う戦法か! 理にかなっているな!
遠距離からてっちゃで攻撃して、ダイブルトンで守る!
これは手堅い! 如何する…?
…やっぱり、てっちゃから退場して貰うしか無いか!
「ムセル! てっちゃから、やっつけろ!」
俺の指示に従い、動き出すムセル。
だが…何かに絡まって倒れた。
「けけけ…わららの恐ろしさ、とくと味わえ!」
ムセルに絡みついていたのは…わららの体だった。
自らの身体を解して、絡みついていたのだ。
これじゃ、てっちゃに狙い撃ちされる!?
てっちゃが、狙撃の体制に入った! …やられる!?
ぺろぺろぺろ…
「きゃ!?」と消え入るような声。
てっちゃ喋れるんじゃないのか?
原因は…ツツオウが、てっちゃの太ももをペロペロしていたのだ。
何時の間に…けしからん子だな。
その隙にムセルが、わらら本体にマシンガンを撃ち込むが…寸前で避けられた。
意外に、すばしっこい奴だ!
「ステート! …この子も!?」
◆わらら・わらわら◆
腕105 耐100 俊200 知295
スキル バインドボディ
カースゴーレム 『SSSS』
製作者 ゴードン・ストラウフ
「最後の試合でまさか、こんな化け物達に当たるとはねぇ!?」
「全部S越えのゴーレムかよ!?」
「そんな事より、おうどん食べたい」
わららの解けた体を見たら、うどんに見えた。
仕方無いね!
「おまえなぁ…」とライオットに呆れられた。
正直、すまんかった。さーせん。
「けど、性能が勝負を左右する訳じゃ無いのは…エスザクで体験済みだ!
ムセル! お前の力を…みせつけろ!」
俺の言葉に応える様に、立ち上がるムセル。
イシヅカも、次に備えて何かしている。
一方…ツツオウはてっちゃを、ペロペロしまくっていた。
その度に「やんっ!」とか「ひゃんっ!」とか聞こえる。エロぃ。
大分、小さな悲鳴なので…多分、俺以外には聞こえないと思う。
あ、マフティも耳が良いんだっけか?
マフティは、顔を真っ赤にしてプンプン怒っていた。
「こら! このね「獅子」こが! テスタロッサから離れろ!」
「わらら! あのね「獅子」こを、引きはがせ!」
ライオット…既に慣れたものだな。
『ねこ』の部分に、巧みに介入するライオットに感心した。
わららが、ツツオウを引き剥がそうとするが…
ちょこまかと動き回り、中々捕まらない。
ダイブルトンは、ムセル達に睨みを利かせているので動けない。
てっちゃは、ツツオウに体中を舐められて悶えている。
わららは、ツツオウ捕獲に手間取っている。
ツツオウは、逃げながら…てっちゃを舐めている。…器用だな君は?
ダイブルトンの、前と後ろの差が酷かったのは言うまでもない。
少しの間…にらみ合いと、ドタバタ劇が続いた。
…ツツオウ、おまえってやつぁ。(呆れ)
誤字 ふっとちょのお兄さん を
太っちょのお兄さん に訂正
それとも、感か…? を
それとも、勘か…?