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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第二章 身魂融合 命を受け継ぐ者
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てっちゃ

最初の試合を勝利した、我らが『モモガーディアンズ』は勢いに乗り

次々と、勝利を積み重ねて行った。


「勝ったな…」


「ああ…」


俺とライオットのやり取りだ。

ぶっちゃけ、俺達は何もしていない…応援してるだけだ。


並み居る強敵を寄せ付けず、圧倒的な火力で敵を殲滅するムセル。

そのゴツイ体に似合わない、知恵と策略を以ってチームを引っ張るイシヅカ。

どんな状況でも、マイペースなツツオウ。


この、絶妙な三体のゴーレム達の連携の前に、成す術も無く敗れ去る相手チーム。


「圧倒的では無いか、我チームは」


「んふふ…そうだね? 後、一勝すれば本戦に出場確定だよ」


「おぉ! スゲェ! シシオウ…後、一勝だぞ! 気合入れて行け!」


ライオットの声援に「ふにゃ~」と、欠伸で返すツツオウ。

本戦出場、目前にも関わらず…マイペースなのは変わらない。

流石、ツツオウ!


「チーム『モモガーディアンズ』四連勝! 次に勝てば本戦出場が決まりますよ!」


おぉぉぉぉぉぉぉっ!? と観客が沸く。

「わんわん!」「にゃ~ん!」「チュ!」「めぇ~!」

と、野良ビースト達も沸く。


めぇ~!? …良く見ると、ライゼンさん所の『ヒツジのリリーちゃん』が混ざって居た。

何時の間に混ざった? まぁ…大人しくしてるし良いか。


次も、さくっと勝利だ!

そう思っていたが…相手チームの顔触れを見て、その考えを思い直した。


「へぇ…やるじゃねぇか!? 食いしん坊さんよぉ!?」


「へへへ…相手に不足無ってか?」


「よぉ…」


我クラスの悪たれ三人組、マフティ、ゴードン、ブルトンだ。

こいつ等は、油断出来ない。

行動力のあるマフティ、何でも器用にこなすゴードン

冷静沈着で、どっしりと据えた度胸を持つブルトン。


「お前らも、ゴーレムマスターズをやっていたのか!?」


ライオットが驚いている。


「でも、ここで君達を見かけるのは…初めてだねぇ?」


プルルは、三人組を興味深く見つめる。

そして…マフティがニヤリと笑って言った。


「今日が初めての試合だ」


「ははは!」と、豪快に笑った。


…おいぃぃぃぃ! ぶっつけ本番かよ! おもえ等!!

ゴーレムマスターズを、ペロペロしてんのか!?


「…いやぁ、マフティの奴が急にやりたいって言ってよぉ」


「…好きに…やらせてやれ」


ゴードンとブルトンは、巻き込まれたっぽい。

マフティ、お前って奴ぁ…


「良いだろっ! 俺だって…やってみたかったんだよ!

 この為に今日まで、ちまちまと小遣い貯めて来たんだからよ!!

 くっそ! ホビーゴーレム高いんだよ!」


安心しろ、高い分の価値がある。

いや…それ以上の物が手に入るぞ!


「ほぅ…良い心がけだと感心するが、何処もおかしくない。

 むしろ、その頑張りに拍手を送る」


俺はパチパチと、手を叩きマフティを祝福した!

その話を聞いた、観客も共感したのか拍手を送る。

凄い数の拍手が、マフティに送られた!


…あ、マフティ照れて顔真っ赤だ。可愛い!


「や…やめろよぉぅ、そんなんじゃ…ないんだってばぁ」


消え入る声で言っていたが、俺の大きな耳はキチンと拾っているぞ!

ふふふ…意外と照屋さんの様だな!


拍手が一段落すると、頃合いと見たのか審判の人が「試合を始めますよ?」と言った。

はっ!? そうだった! 早く試合を始めよう、そうしよう!


「それでは、試合を始めます!

 チーム『モモガーディアンズ』対チーム『黒い三人組』!」


…何だか、誰かが踏み台にされそうなチーム名だな?


俺達『モモガーディアンズ』の面々は、既にリングに上がっていた。

そして…『黒い三人組』のゴーレム達がリングに上がる。


先ずは、ゴードンのゴーレム。

細身で背丈が高い…紐? と言うか藁人形だコレ!?


「…けけけ、俺のゴーレム『わらら』の強さ、見せてやるぜ!」


藁人形のゴーレムとは驚いたな。

観客の一人が「がたっ」と身を乗り出して見ていた。

目の下に隈がある、不健康そうな少女だ。


…きっと、五寸釘打つのに丁度良い、とか考えてそう。怖い。


「…いけ『ダイブルトン』」


次に、ブルトンのゴーレム。

予想通り、どっしりとした大柄なゴーレムだ。

アイアンゴーレムだろうか? 超巨大な鎧騎士の様なゴーレムだ。

イシヅカよりも大きい。 俺の腰位あるぞ!? でけぇ!!


「へへ…いけっ! テスタロッサ!」


最後にマフティのゴーレム?

…おい、何だそれは?


マフティがリングに上げたゴーレム? は、女性型ゴーレムだった。

その容姿は…あれだ、所謂…美少女フィギュアって奴だ。

異常に精巧に作られていて、一種の芸術品だ。


乳白色の長く美しい髪には、ウサギの耳が生えている。

マフティの魔力の影響だろう。


くりくりとした、大きい目には赤い瞳。

形の良い鼻筋に、ふっくらとした唇。

出る所は出て、引っ込む所は引っ込む艶めかしい身体。


可動フィギュアに良くある、間接溝は無く皮膚で覆われていて

パッと見は、小人にしか見えない。


問題は…ボロキレしか纏っていない事か。

動くと、色々見えてはいけない部分が見えそうだ。


「如何だ、俺のゴーレムは! カッコいいだろう!?」


マフティ…この子には、カッコ良いより…可愛いと言って上げなさい。

それよりもだ…


俺はテスタロッサ…ええい! 長いわ! お前は『てっちゃ』だ!

を、むんずと掴み…ボロキレをめくった。


其処には、素晴らしくリアルな裸体があった。

豊かな乳房、折れそうな腰…大きな安産型のお尻には、ふわふわの丸い尻尾。

無論、女の子の部分も「こんにちは」していた。

これは、問題だ。映像的に。


「審判! これを見てくれ!」


俺は審判の人に、てっちゃの裸体を見せた。


「あ…エッチ」


審判の人は照れた!

因みに女性で、可愛い一般人と言った所だ。

良いよね! 可愛い一般モブ!


「てっちゃに服を着せる時間を!」


「認めます」


大きいお兄さん方が、ブーブーと不満の声を出したが…

プルルと観客の女性陣が睨むと、小さくなった。

気持ちは分かるが…自重しろ。


「おいぃぃ…マフティ、せめて服は用意してやれよな?」


「素体を買うので、精一杯だったんだよ。

 それだって、俺が徹夜で縫った物だよ」


うん? …良く見ると、ボロキレに見えるが…加工した後が見える。

マフティの指には、赤黒く染まった包帯が巻かれていた。


そうか…それで、嫌がった素振りを見せていなかったんだな。

俺は少し、マフティを誤解していたみたいだ。


彼も、精一杯の愛情を注いでいた様だ。

これは、先輩として何かしてやらねば…


「ふむ…てっちゃに、服を奢ってやろう」


「は?」


キョトンとする、マフティ。


「てっちゃが、服が無くて恥ずかしい、と言う理由で負けたとか…

 そんな理由…納得出来ないだろう?」


「お…おう! 当然だ!」


うん、一目見て分かる。

すっげー目をキラキラさせてる…親と子。


俺は二人を連れて、ハッスルボビーの着せ替え人形コーナヘと向かった。

こう言う時、近くて便利!


俺達はハッスルボビーの着せ替え人形コーナーに辿り着いた。


様々な人形と、色様々な煌びやかな衣服がズラリと並ぶ。

女の子、憧れのコーナーだ。


「へ…へぇ、いっぱいあるな?」


マフティの顔が嬉しさで、綻びそうだ。

やっぱり、娘にボロキレしか上げれなかった事に責任を…?


早速、似合いそうな服を選びに掛かる。

時間が無いのだ、待って居る観客達に申し訳ない。


「本来なら、もっとジックリと選びたいが…時間が無い!

 そこで、良い考えがある!」


「嫌な予感しかしねぇが…」


マフティが不満そうな顔をしたが、後日ゆっくりと服を選ぼうという案に乗ってくれた。

ふふふ…、これで会場の皆も盛り上がるだろう。

俺は、一着の服をてっちゃに着せて、その上からマフティの愛情が籠った布切れを羽織らせた。


「良し…これで、取り敢えずは大丈夫だ」


「礼は言わないぜ?」


ニヤリと笑う、マフティ。


「ふ…てっちゃの為にやっただけさ」


俺はそう笑う。


がしっと、お互いの手を握り合う。

其処には…同じゴーレムを子供に持つ、幼い親が居た。

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