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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第二章 身魂融合 命を受け継ぐ者
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桃の守護者達

「落ち着いた、凄く落ち着いた」


プルルに「まだ時間があるよ?」と教えられた俺は、冷静さを取り戻していた。

今…俺は二人に服に付いた埃を、払い落してもらっている。


「助かった、もう駄目かと思ったよ」


「大袈裟だな…エルは」


「それ程でも無い!」と、ふんぞり返って言う俺。

「褒めて無いよ?」と、突っ込んで来るプルル。

その顔は笑顔だった。


最初に出会った時は、兎に角…無表情だったが

最近は、良く笑ってくれている。

うんうん! 女の子は笑った方が、かわゆぃんだぜっ!


「それで、チーム名は如何するんだ?」


「うむ! 良い質問だな、ライオット君!

 差し当たり…俺に良い考えがある!」


俺は人差し指を、ピンと立て自信を持って発表した。


「はぐれ三匹のゴーレムが切る! 旅情編。

 湯けむり舞う温泉地で、起こる事件! 家政婦は見た!! チーム」


「長い長い! 何だ? その、舞台の予告みたいな名前は!?」


むぅ…結構自信があったのだが?

ライオットはお気に召さなかったらしい。


「インパクトは大事だと思った」


「インパクトはあるけど…言いにくいねぇ」


ふむ…それは一理ある。

寧ろ、略されて『三匹のゴーレム』なんて、呼ばれてしまうかも知れない。

…良いんじゃね?


「面倒くさいから『ああああ』で、良いんじゃね?」


「おいぃぃぃぃ…優勝した時、おもえは『ああああ』チーム優勝おめでとう!

 て、言われたいのか? くるるぅあ!?」


「確かに…」と言って、小さくなるライオット。

ツツオウに慰められてる。

…しっかりしろ、おとーちゃん。


「それなら、『桃の守護者達』ってのは…如何だい?」


ほぅ…中々、見事なチーム名だと感心するな。

うん、特に桃が入ってる部分が良い。


「モモガーディアンズか…良いな!」


「んふふ…お褒めに預かり光栄だよ」


「へぇ、良いな! じゃあ、それで決定だな!」


こうして『モモガーディアンズ』は、結成されたのであった!

そして…俺達は受付の人に、参加を申請する。


「…はい、登録完了です。

 予選は、十一時から始まります。それまでに、予選会場に来てくださいね?」


そう言われた俺達は、時間を確認した。

会場には、デッカイ時計が設置されている。…便利!


「今…十時か。ん~微妙な時間だな?」


「ハッスルボビーは、開店しているし…行ってみるかい?」


「はらへった」


おいぃぃぃ…ライオット君。

俺ですら、まだ腹減って無いぞ? 食って来なかったのか?


「いやぁ…どんぶり飯二杯は、少なかったな」


「あははは!」と笑うライオット。

普通に食い過ぎです。

俺も、沢山食べたいなぁ…


出来立てのご飯を、んぐんぐと掻き込む快感は、何とも言えないからなぁ…

塩辛、梅干し、納豆もあれば尚良し!

大根の漬物なんて物も、堪らない!


味噌汁は忘れるな! 具は、ワカメか油揚げが良い。


ぐ~…


「んん~? 如何言う事だ!? ぽんぽんが鳴いた…だと!?」


「よし! 何か食おうぜ!」


と、言う事でフードコートに行く事になった。

間違い無く、ライオットのせい。

…俺は、悪くないもん! ぷんぷん!


◆◆◆


と言う訳で、フードコートにやって来た俺達。


野良ビースト達は、予選会場で子供達と戯れている。

大人しい奴らなので、子供に大人気だ。


そして、俺達は早速…軽食をパクついている。


俺は卵サンドを、プルルはプリン。

ライオットは…『かつどぅん』を食べていた。


軽食とは、いったい? うごごご…


「良く…朝から、そんなに食べれるねぇ? 見てるだけで、お腹いっぱいだよ」


「プルル…ライを、普通の奴と一緒にすると死ぬ。気を付けろ」


「ひでぇ」


さり気無く…かつどぅんを、お代わりしている。

食い過ぎじゃね?


因みに…かつどぅんは、普通のカツ丼である。

何故か、メニューには『かつどぅん』と、表記されているが…

気になって聞いてみたら…

間違って書いていたのが、何時の間にか定着してしまったので、そのままにしているそうな…


衣の付いた、ブッチョラビのロース肉は分厚く、2cm位の厚みがある。


肉はレア、衣はサクサク。

成程、寄生虫が居ないブッチョラビの肉を、上手く使ったカツだ。


具は玉ねぎに卵と、シンプルだ。

それ位が、丁度良いのかもしれない…肉がメインだから。


ライオットがカツを一切れ齧る度に、肉汁と油が溢れ口周りを汚す。

もうちょっと、静かに食べなさい。

気持ちは、分からんでも無いが…


「はふっ、はふっ! がつがつ! んぐんぐ…ごくん! …ぷふ~」


「ごっそさん!」と、腹を擦り満足そうに笑うライオット。

因みに、彼が食べた…かつどぅんは三杯である。


く~い~す~ぎ~!!


暫し、談笑し時間を潰す。

付いて来たムセル達も、リラックスしている。


「ふむ、そろそろ良い時間だねぇ? 予選会場に行こうか」


「もう、そんな時間か~」


「げふぅ…腹も膨れたし、そろそろ行くか!」


俺達はお会計を済まし、予選会場に向かった。

いよいよ、予選だ! …緊張して来た! ぷるぷる。


「ん? 緊張してるのか、エル?」


「そそそ…そんな事、ありますよ?」


「してるのかい」


うん、してます! 超緊張してます!!


「ムセル達が、してるなら分かるが…エルは別に戦う訳じゃ無いだろ?」


「そんな事は…にぃ! …唯、見守るのってキッツイんだぞ?」


そう、自分は何も出来ない。

唯、応援するだけ…


「ふ~ん? そうなのか…」


ちょっと、真面目な顔をして…俺を見たライオット。

どうすた?


「…いや、何でも…ねぇよっ! 行こうぜ!!」


そう言って、俺の背中をバシバシ叩く。

「ふきゅん!」と、悲鳴が俺の口から洩れる。


「こらこら、そんなに乱暴にしたら…食いしん坊が壊れちゃうよ?」


「あ! わりぃ!?」と、慌てて止めるライオット。

だが、許さん! 後で鼻に、ミントを詰めて差し上げる!!

かくごー!!


…てな事が有ったが、俺達は無事に予選会場に着いた。


既に会場は、異様な熱気に包まれていた。

…予選でこの熱気、本戦では如何なるのか?


「うおお…スゲェ熱気だ! ビリビリ来るぜ!」


ライオットも、そう感じたのかテンション上がりまくりである。

うん、分かるぞ~! 男なら、この雰囲気に気合が入ると言う物だ!


「さて…後は、時間を待つばかり」


と、言った所で「予選を開始します!」との声。

遂に、戦いが始まるのである。


数ヶ所あるリングで、次々に戦いが来り拡げられている。

足が沢山付いたゴーレムや、くっそ細いゴーレム。

恐竜型のゴーレムや、昆虫型のゴーレムまで…多種多様のゴーレム達が鎬を削っていた。


「ふぁ~すげ~! かっくいい!」


自分の対戦相手に、全力で立ち向かうゴーレム達の姿…思わず声が漏れる。


「ふ…そうさ、彼らは凛々しく勇ましく…そして美しい」


そう言って、俺の隣に立つ赤服の少女。

シア・スイセンだ。


「私は一足先に、本戦で待つ。

 追って来るが良い、エスザクと戦う為に」


グポーン! とエスザクの目が光る。


これは…挑発だ! 俺達に対する!!


「上等だ~! お米洗って待ってろ!」


ちょっと、首を傾げたシア。可愛い。


でも、言わんとしている事は伝わったようで…

「楽しみにしている」と、言って颯爽と去って行った。


「んふふ…これは、何としても本戦に行かないとね?」


「当然だ! 俺達は…ムセル、イシヅカ、ツツオウは、負けない!」


「シシオウ…」


ライオットもう諦めろ! その子はツツオウだ!


しょんぼりしているライオットと、それを慰めるツツオウ。

すっかり、馴染んだ光景だ。


「次の対戦チーム! 『モモガーディアンズ』対『ラブリーゴーレムズ』!」


遂に、我らが『モモガーディアンズ』の出番が来た!

並み居る、強敵共を粉砕して…本戦に出場するのだ!!


「そして…エスザクと勝負だ!」


俺の言葉に、ムセルが応える様に拳を突き出す。


イシヅカが、ムセルの左肩に手を置く。

まるで「冷静にな…」と言ってる様だった。

それに頷くムセル。


欠伸をしながら、リングに上がるツツオウ。

常にマイペースって、意外に凄い事だと思う。


三体のゴーレムは、リングに威風堂々と参上した!

頑張れ! 我らが『モモガーディアンズ』!

初戦を勝利で、飾って差し上げろ!!

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― 新着の感想 ―
すごく、ぬめぬめしてそうな、名前ですね
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