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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第十九章 鬼退治
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774食目 寄生

 さて、虎熊童子を討ち果たし、戦況はようやく、こちらへ傾き始めた。しかし、ここで油断すれば全てが水の阿波踊り。バッドエンドとクレイジーにダンスっちまう。

 とはいえ、敵魔導騎兵の無力化に加え、ライオットの参戦は、その油断もしてしまおうかという勢いだ。つまり、「勝ったな」状態なのである。


「ふっきゅんきゅんきゅん……勝ったな」

『それを、フラグというのだ。いいから大人しく神桃の実を食べろ』

「ぎゃふん」


 今時そんな悲鳴を上げない暫定一位の鳴き声を上げて、俺は桃先生の実をしゃくしゃくと食べ進める。

 相も変わらない圧倒的な瑞々しさと爽やかな甘みが、戦いで疲れた俺を癒してくれた。

 これがなかったら、俺は速やかに悪い子珍獣と化していただろう。感謝、ひたすらに感謝っ。


 戦況としては、トチの方はダナンたちでどうにかなるだろうと予測。問題は人面犬の方だ。

 あの野郎、時間を止めるというえげつない行為をおこなっている。そのようなものだから、流石のゼウス様も簡単にボテ繰り回されているわけだ。


 しかし、ここにライオットが介入することにより事態は一変する。それは彼が持つ個人スキルが大きな要因だ。そして、その力は不意打ちからの騙し討ちで効果を発動している。


「おぉ!? これは、どういうことだ! 何故、止まった時の中で、おまえたちは私のように動けるのだ!」

「むぅ、確かに動くことができる。これはいったい?」


 人面犬とゼウス様が驚くのも無理はない。彼らと俺以外は、その場で固まっているのだから。そもそもが時間を止めるなど、人外スキル以外の何ものでもない。


 まぁ、その時止めをおこなっているのが人面犬なわけだが。全然、人じゃありましぇ~ん。


「個人スキル【繋ぐ】。この力で、おまえと俺たちを繋いだのさ」

「なんだと!?」

「制止した時間の中でおまえだけ動けるのは、何かしらの力が働いているはずだろ? それを、こっちにも流してもらっているのさ」

「お、おのれっ……!」


 ライオットの個人スキルは、とにかくなんでも繋げてしまうという能力だ。物を繋げることはもちろんの事、このように形の無い力でも【ぺたんこ】と繋げてしまうのだ。

 そして、繋がったものはライオットの尺度で力を流す側、それを受け取る側と設定することが可能なのである。


 ちょっとしたえげつない能力であるが、発動には対象に触れなくてはならない、というほんのりとした欠点があった。それをライオットは攻撃と同時に発動したのである。

 そして、倒れたゼウス様を介抱した際に個人スキルでもって三人を……一匹と二人を繋げてしまったというわけだ。


 一方的に力を奪われるのは人面犬の方であるが、彼自身からその繋がりを断つことはできないという。


 こいつぁ、とんでもない寄生パラサイトやで。


「どうだい? アドバンテージを奪われた感想は」

「私が時を止めるだけの存在と思うな」


 人面犬が咆哮を上げる。それは衝撃波となって周囲に撒き散らされた。その衝撃波に当たってしまった全てものは一瞬にして砂のようになって崩れ去る。


「ふきゅん、分子分解か? いや、それにしては……」

「あれは、対象の時間を加速的に早める攻撃だ。一瞬にして億の単位で時間が進んでいる」

「マジか。触れたら一瞬でババァになっちまうじゃねぇか!」


 とはいえ、白エルフは老化しないし寿命も無いので無問題。問題なのはゼウス様だけだ。


 神々が永遠なのは【ネクタル】という神酒を定期的に補給してるからであり、実際問題この攻撃は彼にとって一撃必殺になり得た。

 ライオットは既に真なる死を迎えて永遠となっているので、勿論この攻撃はデレ行動と化している。殴るなら今やぞ。


「ゼウス様はきついな。少しテコ入れをしてやりたいところだけど」

『回復までは程遠い。まだ動くな』

「むむむ」


 トウヤの言うとおり、俺の力は三割程度の回復しか見せていない。流石にライオットのような瞬喰いはできないので、桃先生の実を地道に食べ進めるしかない。


 あぁ、顎が疲れてきたんじゃ~。


 とはいえ、ライオットがゼウス様をカバーしながら上手く立ち回っていてくれている。へんちくりんな横やりが入らなければ、このまま押し切れるであろう。


 だが、人はそれをフラグという。加えて俺は一級建築士である。


「ライ! このまま増援が現れなければいけるぞ!」

「バカ野郎、そういう事は口にするな!」


「「「ぎゃお~」」」

「ぎゃ~っ!? 言ってる傍から!」


 そんなわけで、見事にフラグをおっ立ててしまいました。俺は悪くぬぇ!


「ふっふっふ、私のコピー体だ。私には劣るものの、それなりの力を有しておる。無論、滅びの咆哮も使用できるぞ」


 人面犬が人面犬を呼び出してさぁ大変。後半お約束のコピー体ラッシュに白目痙攣状態となるも、実際問題この方法は有効的なのだから困ったものだ。


 さて、人面犬が呼び出した人面犬は三匹。数に置いても、あちらさんが優位に立ってしまったわけだが、これは正直言ってよろしくない。

 かといって、ダナンたちから誰かを引っ張るわけにもいかない。さてはて、どうしたものか。


「……ふきゅん! きみに決めたっ! いけっ、ザインちゃん!」

「承りましたで候! って! なんで、水着でござりますかっ!?」

「省エネ」


 というわけで、極限まで省エネをしたザインちゃんを助っ人に放り込む。


 ムッチムチのおケツがセクスィ~。


 それでも刀を持てば戦力足り得るのがザインちゃんである。人面犬相手に半裸の少女が戦いを挑むシュールな光景が展開された。


 どっかのテレビゲームに、そんなのがあったような……うっ、頭が。


 謎の頭痛に苛まれるも、俺は元気です。


 そんなわけで、ザインちゃん投入で傾きかけた戦況も持ち直し、五分五分にまで押し戻すことに成功。ここから、勢いに乗って人面犬どもを制圧してしまいたいところだ。


「ぐ、おのれ! 滅びの咆哮が通じないだと!?」

「拙者はこのような形とて、全てを喰らう者の一枝ぞ! 時を加速したところで、なんになろうか!」

「永遠の存在に、そんな技をけしかけられてもなぁ」


 はっきり言って、これはただの虐めである。何をしても通じない相手との絶望的な戦いだ。どう足掻いても絶望、などという言葉は生温い。

 それに気が付いた人面犬は、形振りを構わない行動に打って出た。


「約束など知ったことか……!」


 これもどこかで聞いたようなセリフだ。そして、ビンビンに嫌な予感がする。

 その予感は正しく、ヤツはカプセル内に漂う女神ヘラに目を付けたのである。


「拙い、あの野郎、ヘラ様に何かするつもりだ」

『正しくは、彼女から力を吸い上げている機器との融合を図っている』

「なんだって?」


 トウヤの推測どおり、人面犬はマイアスお祖母ちゃんにエネルギーを送っている機器を不法占拠し、その莫大な力を我が物にしてしまったのである。


「ふっふっふ! 凄い力だ! これこそ、全盛期の私の力! 漲るぞぁ!」


 機器との融合を果たした人面犬はその肉体を捨て去り、完全なるエネルギー生命体へと変貌を遂げていた。

 完全なるエネルギー体となっても、人の部分は顔だけ、とか頭の中はどうなっているんですかねぇ。


 だが、この土壇場に来ての悪足掻きは、ヘイトを集中させまくる愚かな行為だ。


「ゼウスぅ! おまえの女はぁ! いい女だぁ!」

「クロノス! 貴様っ!」


 バチバチと紫電を撒き散らす機器、その中で女神ヘラが悶え始めた。その様子を見て愉悦に巨大な顔を歪める元人面犬。名前? 知らん!


 とにかく、戦いは振り出しに戻るどころか人質を取られて一気に劣勢になってしまった。

 これも、全てフラグをおっ立てった誰かさんのせいであることは言うまでもない。


 果たして、彼らは女神ヘラを救い出すことができるのであろうか。

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