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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第十九章 鬼退治
765/800

765食目 宇宙の変態

 決戦兵器ジャッジメント発射まで、あと二十分。ジャッジメント発射口に侵入したモモガーディアンズメンバーは、ひたすらに最奥を目指す。


 ジャッジメント突入メンバーは、輝ける獅子ライオット、フォクベルト、咲爛が先行。それに続くのは、ガンズロック、ムセル、ゴーレノイド・クラーク、シングルナンバーズ、アマンダ、マフティ、ゴードン、クウヤだ。

 その後を追うようにロフト、スラック、フォルテとメルシェが宇宙戦艦吉備津から出撃を果たしている。


「ちくしょう、何かGラックの代わりはねぇのかよ!?」

 

 多くの負傷者を救助し、月にまで辿り着いたGD・Gラックはその役目を果たし、静かに機能を停止していた。二度と宇宙を駆ける事はないだろう。


 宇宙での足を失ってしまったケイオックは、宇宙戦艦吉備津の発艦ドック内で、その変わりを探していたが、どうもしっくりする物が無い。

 それもそのはずで、ケイオックはフェアリー族であり、人の手の平に納まるサイズの彼女が身に纏えるGDは存在していないのだ。


「ケイオックさん、もう少し待ってください。私の魔力が回復してから、共に決戦の場へと向かいましょう、ぷるぷる」

「それじゃあ、終わっちまうよ!」

「ならば、それが私たちの運命だった、ということでしょう、ぷるぷる」


 魔力を回復させるために、神桃の実をもりもりと食べているのは、スライム族のゲルロイドだ。彼は憤るケイオックを宥めつつ、焦りに身を焦がす自分自身をも諫めていた。


「(この辺りでいいでしょうか……少々、魔力が心もとありませんが、ぷるぷる)」


 ある程度、魔力を補充することができたゲルロイドは、球状の形態から人型へと移行する。


「さて、お待たせ致しました。行きましょうか、ケイオックさん、ぷるぷる」

「ゲルっち……そうか、その手があったか!」

「そうです、私が人型になればGDを動かせますからね、ぷるぷる」


 とは言ったものの、ゲルロイドは戦艦吉備津内のGDが全て出払っていることを確認している。残っている物といえば作業用のポッドだ。


 製作者のドクター・モモはこれをサッカーボール、エルティナに至っては【動く棺桶】と呼称し、なんとも微妙な表情を見せている。


「これを使いましょうか、ぷるぷる」

「それ、大丈夫か? 確か、作業用のGD・ワーカーだよな?」

「そうです。ですが、私たちには魔法があります。この子でも十分でしょう」

「そうとは言っても、武装も何もないんじゃなぁ」

「では、作業用のレンチを持って行きますか、ぷるぷる」


 こうして、ゲルロイドとケイオックはGD・ワーカーに乗り込み、こっそりと戦艦吉備津から出撃した。


 ブースターなどの強力な推進装置も無く、申し訳程度のスラスターが一基装備されているだけ。お世辞でも機動力がある、とは言えない。作業用の丸いフォルムのGDは、いまだ激戦が続く宇宙をたった一機で突き進む。

 目指す場所は宇宙要塞ASUKA中枢。ジャッジメントに突入するには遅すぎる、とゲルロイドが判断したためだ。


「うん? おい、前方の変態に見覚えないか?」

「心当たりがあり過ぎて、頭が痛くなりますね、ぷるぷる」


 彼らの前方には、丸裸で宇宙空間を泳いでいる女性の姿があった。究極変人シーマ・ダ・フェイである。またしても、彼女はGDを破壊されて身一つとなっていたのだ。


「シーマ! そんなところで、なにやってんだ!」

『おぉ、ケイオック、丁度良い。私を、あそこまで届けてくれ』


 シーマが指差す方角には、宇宙要塞ASUKAの姿。そして、戦艦吉備津の砲撃によって出来上がったと思われる大穴があった。そこから内部へと進入しようというのだ。


「丁度良い、大穴がありますね、ぷるぷる」

「あそこから入ろうってんだな? 面白れぇじぇねぇか」

『だろう? だが、いくら懸命に泳いでも一向に前に進まん。私を攻撃していた魔導騎兵たちも飽きてしまったのか、もう構ってすらくれん』

「いや、まぁ……そうだろうな」


 魔導騎兵たちも不死身の変態には関わりたくはないようで、突いても切っても焼いても一向に死なないシーマに困惑を覚えて、彼女を見なかったことにする意向を示していた。

 いかがなものかと思われるが、変態の対処法としては比較的まともである。


「では、共に参りましょうか、ぷるぷる」

『うむ、頼む。というか、何故私を盾のように掴む?』

「盾のようにじゃない、盾にしてんだよ」

『おいバカやめろ。ケイオック、私が死んでしまったらどうするんだ』

「そう言うのは、死んでからにしろよ」


 裸の少女を盾に宇宙要塞ASUKAに突入せんと迫る球状の物体に、魔導騎兵たちは今世最大の困惑を示した。球状の物体から伸びる頼りない作業アーム掴まれた裸の少女は腕を組み、何故か堂々としている。

 そもそもが、呼吸ができないのでは、とAIが計算するも、バグが生じる危険性が示唆され中断。魔導騎兵たちは考えることを止めたのだ。そして、そっとその場から立ち去る。


『ふっふっふ、連中め、私に恐れをなして逃げてゆくぞ』

「絶対に関わりたくない、って雰囲気だったぞ」

「私も彼らの立場なら、同じ判断を下します、ぷるぷる」


 こうして、彼らはまんまと宇宙要塞ASUKA内部へと進入、見事に迷子となった。


「おい、ここはさっき通らなかったか?」

「おかしいですねぇ、ぷるぷる」

「何か印でも付けとこうぜ」


 球状の物体と全裸の少女が奇妙な行動を取っている。それは異様な光景であった。

 警備に当たっている魔導騎兵もどうしたものか、と物陰からこっそりと彼女らを監視しているが、全裸の少女が情報にあった変態だと判明すると、全力で持ち場に戻り任務を遂行しているふりをした。


 女神マイアスは魔導騎兵に学習型のAIを搭載したのだが、これが裏目に出る形となったのだ。彼女は泣いていい。


「ん~、これって、空間が歪んでるんじゃないのか」

「そんな歪んでいるヤツは修正してしまえ」

「無茶なことを……ぷるぷる」


 エルティナたちはプリエナの強運によって、ここを突破しているが、なんの因果か彼女らはトップクラスの運の悪さを持っていた。特にシーマなどは最悪である。

 歩く不運とはよく言ったもので、シーマはただ歩いているだけで頭上から植木鉢が雨あられと降り注ぐレベルで不運なのだ。

 仮に彼女が不死身の変態でなければ、一分一秒が地獄と化していたことだろう。


「でも、こいつをどうにかしないと、先には進めないぜ」

「ふむ……私に良い考えがある」

「嫌な予感がしてまいりました、ぷるぷる」


 自信満々にシーマが提案した打開策とは、運を天に任せる、だ。おまえはいったい何を言っているのだ、と一万回ほど言ってやりたい。

 しかし困ったことに、この変態は自分が運が悪いと認識していない。それどころか、自分は幸運の持ち主である、と勘違いしている性質の悪さを持っていた。最悪である。


「私に付いて来い! 元上級貴族の底力を見せ付けてくれる!」

「ゲルっち、俺、お腹が痛くなってきた」

「女の子の日ですか? ぷるぷる」

「笑えねぇよ」


 歪んだ空間に臆することなく突入するシーマに呆れながらも、GDワーカーは彼女に追従する。そして、違和感が消失、通常空間に戻る事ができた彼女らは、歪んだ空間の迷宮を突破することに成功したのだ。


「ふふん、どうだ? 私の剛運は」

「いや、これは予想外……って! なんじゃありゃぁぁぁぁぁっ!?」

「ぷるぷる! これは、危険ですよっ!」


 湾曲空間の迷宮を抜けた先は、超越者たちの決戦の場であった。女神マイアスの超魔導騎兵ラグナロクと、九十九代目桃太郎との壮絶な戦いの場であったのだ。


「なんだ、あの巨大ロボットは!?」

「ぷるぷる、恐らく、あれがエルティナさんが言っておられた、ラグナロクでは?」

「ふん、あんなもの大したものではない」


 場違いな場へと出てしまったケイオックとゲルロイドは大いに困惑、シーマはいつもどおりに不遜な態度を見せた。

 突然の奇妙な来訪者に、女神マイアスの機械のごとき思考に僅かながらのノイズが走る。


「おまえたちは……どうやって、ここまで来た」

「そんなもの決まっている! 私の剛運だ!」

「……想定外だわ」


 女神マイアスは呆れた口調でシーマを一瞥し、桃吉郎の攻撃をかわす。想定外だったのは女神マイアスだけではない、桃吉郎も同様であった。


「(エルティナの仲間!? すぐ傍にまでエルティナが来ている?)」


 桃吉郎の竜神剣フレイベクスを握る手に力が入る。奇妙な来訪者たちは、この二人の戦いに何をもたらすのか。

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