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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第十九章 鬼退治
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761食目 その先へ

「む……この力は」

「桃吉郎が目覚めたのじゃろう」


 宇宙を進む手漕ぎ舟。その船上でウルジェに手当を施していた吉備津彦は、憶えのある力に反応した。それは紛れもなく、桃太郎の桃力。


「やれやれ……もう選んでいる暇もないか。ウルジェ、おまえさんに決めた」

『はい~、私は構いませんよ~』

「『神魂融合!』」


 神と人とが一つになり、新たなる神が誕生する。ドクター・モモことプロメテウスは当初、ドゥカン・デュランダとの神魂融合を予定していたが、彼は既に故人となっている。

 その彼に託された少女、ウルジェをパートナーとして選択、新たなる神プロメテウス・ウルジェとして再誕したのである。


「ふぇっふぇっふぇ、女子の身体は慣れんわい」

『慣れてくださ~い』

「やっぱり、普段はおまえさんが表に出ておれ。わしは中に引っ込む」

『出不精はだめですよ~』


 結局、プロメテウスは今まで通りのポジションがいいらしく、魂の中へと引き籠り、助言することを選択。ウルジェは困った神様だ、と呆れつつもこれを了承した。


「(やがて、わしは消えるだろう。新しい神は新しくなければの。じゃが、その前に、わしの蓄えた知識、知恵を託さねば)」


 ドクター・モモは迷わず、ウルジェへ己の全てを転送開始。今まで経験してきた膨大な知識をコピーする。

 ウルジェはそれを感じ取り、一瞬、動揺したが、ドクター・モモの覚悟を理解し静かに頷くに留まった。


「(約束します、この知識を正しき事のために)」


 ウルジェは消えゆく神に誓った。知識は正しく使う、当たり前のことを、当たり前のように誓った。そして、それこそが最も難しいと確信する。


 そんな彼女に、ドクター・モモは安心して逝ける、と確信するのであった。






「初代様」

「二代目、間違いない。九十九代目だ」


 宇宙要塞ASUKAから伝わる桃力に反応を示したのは、初代桃太郎だけではない。生き残った桃太郎たちもまた、桃吉郎の力に反応したのだ。


「その生を終えても尚、桃力に縛られるか……」


 桃太郎の誰かが、そう呟いた。そして、己の桃力に問う。桃力は静かに、そして優しく輝き、桃太郎に応えた。


「そうだ、力に善も悪もない。正しき者の想いに応える。善か悪かは第三者が決めるもの……正しき道を、自分が信じた道を、苦難を進む者こそ桃使い、桃太郎なのだ」


 桃太郎たちの桃力が桃吉郎の桃力に呼応する。かつて、そうしたように、自らの弟に己の桃力を託したのだ。






「兄上方……感謝っ!」


 桃太郎たちの桃力を受け取った桃吉郎は、その想いを刃に籠める。竜神剣フレイベクスが桃吉郎に応えた。


「何故、どうしてっ!? 運命が変わるっ! 認めない……こんなことっ!」


 女神マイアスは宇宙要塞ASUKAからエネルギー供給を受け、超魔導騎兵ラグナロクの損傷を修復。見る見るうちに失われた部分が再生してゆく。


 自己修復を極めた結果、エネルギーを物質化させての再生へと辿り着く。そのための、宇宙要塞ASUKAからのエネルギー供給なのだ。


「運命を変えていいのは、この女神マイアスだけ! 桃太郎、おまえは運命どおり朽ち果てるがいい!」

「運命なんて知るものかっ! そんなものは捻じ伏せて前へ進む! 俺たちのゴールは、おまえのもっと先にあるんだ!」


 桃吉郎が竜神剣フレイベクスを中段に構える。古竜ウィルザームが咆哮を上げた。


「いくぞっ!」

「「「「「「「おうっ!」」」」」」」


 ウィルザームが羽ばたいた。それに続く七司祭。桃吉郎は万感の思いを込めて咆えた。


「桃戦技!【桃破斬空閃】!」


 それは桃吉郎の最も得意とする桃戦技。剣の刃から桃力の衝撃波を放つ必殺技だ。


「カビの生えた技が通用するか……なぁっ!?」


 防御のために突き出させた超魔導騎兵ラグナロクの右腕が吹き飛んだ。防御壁は間違いなく展開している。しかし、それでも尚、防ぐことは叶わなかったのだ。


「何が起っている……!? データ上では以前のデータを下回っているというのに!」

「憎怨っ!」

「ちぃぃぃぃぃぃっ!」


 モニター画面に桃吉郎の姿を認めた女神マイアスは、直感に従いラグナロクをサイドステップさせる。

 その勘は正しく、仮にその場に留まっていたなら決着は付いていたであろう。


「ラグナロク、損傷チェック! 四十パーセント!? バカなっ!」


 僅かな交差で、このダメージ量。女神マイアスは傷だらけの桃太郎に戦慄する。


「憎怨……いや、女神マイアス! おまえには見えないのか?」

「何……?」

「この俺に宿る傷の想いが! おまえに利用され続けてきた者の無念が!」

「……うぅっ!?」


 女神マイアスは見た、見てしまった。桃吉郎に集う多くの想いを。

 それは無念だ、哀しみだ。憎しみも、怒りもある。その全てを桃吉郎は背負い、莫大な力に変えていたのだ。


「ここは戦場、命の散る場所。負の感情を力に変えるのは、おまえだけじゃない!」

「何故、おまえに陰の力が流れる! 私が陰の力の帰る場所なのだぞ!」

「決まっている、皆、おまえが嫌いなんだよ」

「このっ……!」


 女神マイアスの憎悪が一気に膨れ上がった。同時に桃吉郎の鬼力、そして桃太郎たちから託された桃力が咆える。


「桃仙術……きわみっ!【陰陽発破】!」


 桃吉郎は陰と陽を合成し体内で爆発させる。それは、肉体に多大な負担を強いる代わりに、計り知れない力を授ける諸刃の刃。この桃仙術で桃吉郎は数々の奇跡と悲しみを生み出してきた。

 当然、効果が切れれば絶命の危険性を孕んでいる。それでも、桃吉郎はこの桃仙術の使用を躊躇わなかった。それは、進むべき道を正しく捉えているからだ。

 己は死なない、その強固な意志は肉体の限界を超え、新たなる進化を促した。竜人の肉体が、陰陽発破の負荷に順応したのである。


「早い! でもっ!」


 女神マイアスは高次元の侵略者たちとの戦いを思い出していた。それに比べれば、桃吉郎の動きはまだ可愛いものだ、と確信。一斉の感情を捨て戦闘マシンと化す。

 それは、超魔導騎兵ラグナロクを全面的に信頼することと同じだ。これに、彼は応えた。


「動きが変わった!?」

「……ターゲット、ロック。ハイジョ、カイシ」


 超魔導騎兵ラグナロクの真価が発揮される時が来た。

 彼の真価とは未来視による超回避、高命中率にある。そして、その攻撃は全てを喰らう者の力と合わさり、強力無比なものへと昇華されるのだ。


「桃吉郎様!」

「分かっている! おまえたちは回避に専念! ジュレイデ!」

「くひひ、空間跳躍ね。疲れるのよね~あれ」


 深淵のジュレイデは、幾つもの亜空間の入り口を作り出し、緊急回避の場所を作り上げる。しかし、それであっても、その場しのぎにしかならないのが、全てを喰らう者の戦いだ。


 その亜空間ですら喰らい尽す一撃。超魔導騎兵ラグナロクのデュアルアイカメラが赤く輝く時、そこに敵対する者はいない。


「ベルンゼ!」


 濁流のベルンゼが魔導ライフルの閃光に消える。しかし、直後に彼は獄炎のモーベンが撒き散らした水の中から飛び出してきた。


「水渡りの術! 今のは危なかった! 助かったぜ、モーベン!」

「お安い御用ですよ。しかし、参りましたね。攻撃も防御も敵わないとは」


 モーベンの言うように超魔導騎兵ラグナロクは圧倒的であった。女神マイアスがこだわりを捨てた結果、とんでもない化け物を呼び覚ましてしまったのである。


 彼に感情など一切存在しない、つまり揺さぶりによる動揺を期待する事ができないのだ。

 冷徹な機械神は倒すべき存在を認識、無駄のない動きで魔導ライフルの引き金を引いた。しかし、ウィルザームはこれを回避。動きには余裕すらある。


「未来視ができるのは、おまえだけではない。このウィルザームとて、それくらいはできる。先読みのウィルザームの名は伊達ではないのだよ」


「モーベン!」

「はっ! 行きますよ、皆さん!」


 獄炎のモーベンは桃吉郎の呼びかけに応え、残る司祭を促し再び彼の魂へと戻る。そこで感じる、新たなる大いな力に驚嘆した。


『こ、これが……桃吉郎様の!? 何もかもが、違い過ぎる!』

『あぁ、温けぇ。これが……』



 カオス神の力。



 七司祭の誰しもがそう感じた。今まさに、失われた力が覚醒を迎えんとしているのだ。

 しかし、それにはどうしてもパーツが足りない。だが、そのパーツは目の前にある。


「ウィルザーム、いけるか!」

「えぇ、どこまでも!」

「ならば!」

「お任せを!」


 古の竜が咆えた。突撃するは冷徹なる機械神。


「……」


 その無機質な赤い瞳は迫り来る巨竜に照準を定め、死を与える銃の引き金を引いた。

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