表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第十九章 鬼退治
734/800

734食目 天空神殿

 ◆◆◆ 桃吉郎 ◆◆◆


 おっす、オラ、桃吉郎。


 女神マイアスってぇ、とんでもなくつえーヤツをやっつけるために、どらご……げふんげふん。神の欠片を探してホップ・ステップ・カールルイスしてんだ。

 道中は山あり谷あり、水谷豊ありで、てぇへんだったぞ。


「桃吉郎様、天空神殿が見えました」


 獄炎のモーベンが赤いフードを取り払い、雲の上に浮かぶ女神マイアスの居城を認めた。

 現在、俺たちは遥か上空にて天空神殿を見下ろしている形だ。勿論、普通に空を飛ぶことなどできはしない。全てを喰らう者・風の枝、暴風のデミシュリスの背に乗っている。その姿は風の龍だ。


 龍といえば聞こえはいいが、外観は龍というよりはウナギである。でも、本人を前にしてそんな事を言うものなら不貞腐れて乗せてくれなくなるので、口が裂けても言ってはいけない。絶対だぞ?


「おう、苦難の連続だったが、ようやくたどり着いたか」

「苦難も何も、坊が空間を喰らって、ここまでワープしてきたじぁねぇか」

「おいばかやめろ、雰囲気が台無しになるだるるぉ」


 濁流のベルンゼが真実をゲロっちまいやがった。当然、雰囲気は木っ端ミジンコ。俺の苦労【俺様格好良い計画】が早くも頓挫してしまう。どうしてくれるのこれ?


「くそう、寝ないで考えたスタイリッシュな計画がパーだ」

「……っえ? 普通に寝てましたよね?」


 モーベンの鋭いツッコミはスルー安定。このままでは話が進まないので突撃あるのみ。


「おまえら、準備はいいか? これより、天空神殿に眠る最後の神の欠片を奪取する」

「承知いたしました」


 今回はマジなので、八司祭は全員参加だ。もう、本拠地でお留守番させていても意味はない。

 本拠地はフレイベクス姉のデカいケツで温めてもらっておけばいいだろう。


 さぁ、おふざけは、ここまでだ。ここから先は俺も割とマジにならないと、あっさりとやられてしまう可能性がある。あいつらは平然と即死攻撃とかやらかしてくるから手に負えない。


 即死攻撃は主人公の特権だから!


「いくぞっ!」


 暴風のデミシュリスが咆哮を上げ、天空神殿へと突撃を仕掛ける。当然、向こうも防衛のために兵を出してくる。その殆どが魔導騎兵という点について。

 神秘性もへったくれもない機械兵どもは銃口をこちらへ向け、問答無用でぶっ放してきた。


「うほっ、でけぇ」

「大きければいい、ってぇもんでもねぇだろうがよぉ」


 土石流のガッツァが岩石の塊を振り上げて魔導騎兵の編隊に向けて投げ付ける。カオス神の力が宿る神器【岩石の大槌】だ。それは一撃で機械兵を粉砕してしまう。


「ここまで来てしまうと、武器による攻撃は効率が悪いよね?」

「えぇ、そのとおりよ、バルドル。それに、ここなら【暴れても】問題ないわ」


 ライドのジュリアナは息子である閃光のバルドルにそう告げると、その身を雷の大蛇へと変じさせた。続けてバルドルもその身を異形の姿へと変貌させる。八つの青い瞳を持つ白き大蛇の姿だ。


「いやはや、このような時が来ようとは……感無量でございます」

「ウィルザーム、エンディングまで泣くんじゃない」

「ほっほっほ、歳を取ると涙もろくなってしまいますな。どれ、私もひと暴れいたしますか」


 カオス教団大司祭ウィルザームが、その身を黄金の龍の姿へと変じさせた。八司祭最強の男が、遂に重い腰を上げたのである。

 ぎっくり腰には注意してくれよな。


「うひっ、おじいちゃん、暴れ過ぎぃ! 俺の華麗なる活躍が消滅の危機っ!?」


 本性を現したウィルザームの姿は巨大そのもの。多数の魔導騎兵が攻撃を加えようともビクともしない。

 逆に返り討ちにあってお終いという。


 はい、はっきり言って蹂躙以外の何ものでもございません。多分、俺は画面の端っこ辺りにひっそりと映っている程度。これじゃあ、主人公にならないよ~?


「い、いかん! なんとかして俺も活躍しなくては、主人公(ぷぎゃ~)になってしまう!」

「桃吉郎様、門に突っ込みます!」

「お、おう! せやな! いてこましたれや! おじゃまするわよ~!?」


 緊張と焦りとで、言葉使いがよく分からないことになっているが、気にしない方向で。

 天空神殿の門をモーベンの獄炎で蒸発させて内部に侵入、わらわらと天使たちの群れが俺たちを歓迎してくれた。当然、光の矢を雨あられとだ。


「くひひ、可愛らしいこと。食べちゃおうかしら?」


 というか既に食べている件について。深淵のジュレイデが口だけの化け物と化して天使たちを貪り喰らう。絵面的には完全にアウト、全面的にモザイク待ったなしだ。


 そこにレオタードの食い込みが激しいエロエロ天使の一団がやって来たではないか。ピンクちゃんがはみ出ていても気にしない辺り、純粋といえるのであろう。

 ちなみに俺は純粋ではない、獣である。た~べちゃ~うぞ~(性的)。


「うほっ、エロ天使もいるじゃないか。あれはお持ちかえ……」


 むしゃあ。


「ですよね~」


 俺の野望は儚く消えた。さようなら、エロエロ天使たちよ。


「おっと、ふざけている場合じゃないな。本命が見えてきたぞ」


 神殿内部に不釣り合いな場所が見えてきた。魔導騎兵と同じくその全てが機械でできた歪な空間だ。そこに白い女が佇んでいる。女神マイアスだ。


「来たか……招かれざる者よ」

「女神マイアス、神の欠片を渡してもらうぞ」


 玉座に腰掛け不敵に微笑む女神マイアス。それは絶対の自信の表れか、それとも諦めがMAXになっているのか。俺は後者だと嬉しい。


「神の欠片……即ちカオス神の肉体。これが揃わぬ限り、カオス神の復活は叶わない。渡すとでも?」

「あぁ、言い方が悪かったな。無理矢理いただいてゆく」


 最早、言葉は不要。初めからこうなる事は予測済みだ。

 俺の戦力は獄炎のモーベン、濁流のベルンゼ、暴風のデミシュリス、深淵のジュレイデ。他の連中は魔導騎兵と天使たちを抑え込んでいる。

 対して、女神マイアスはたった一人。戦力差は明らかだ。


 しかし、妙な焦燥感が俺を早期決着という結論へと導く。戦いを長引かせると、ろくなことにならないとの確かな予感を抱かせた。


「モーベン!」


 俺は獄炎のモーベンを炎の大蛇へと変じさせて、白い女にけしかけた。女は動こうともしない。俺は構わず大蛇に女を喰らわせようとした。


「なにっ……!?」


 だが、俺は目を見開くことになる。炎の大蛇が見えない壁に阻まれる感じで跳ね返されたのだ。


「うふふ、おバカさん。いつまでも対策ができていないとでも? 全てを喰らう者が最強だったのは過去の話。最強はこの私、女神マイアスよ」


 女神マイアスは玉座から伸びてきたプラグを己の頭に突き刺した。血管が浮き出て身体を走る光が見て取れる。まるで機械の一部になったように見えた。


「残念だけど、カオス神の御子がラストステージに立つことはないわ。ここで滅びるんですもの」

 機械の壁から無数の砲門が湧き出てきた。そこから放たれるのは極太の光線。その全ては明らかに全てを喰らう者の力を備えていた。つまり触れたら最後、骨すら残らない。

 それが、なんの冗談か、といわんばかりに連射してくるのだから堪ったものではない。


「冗談ではない! デミシュリス、回避に専念! モーベンは攻撃……いや、煙幕を張れ!」

「了解です!〈スモークボム〉発動!」


 モーベンが炎属性妨害魔法〈スモークボム〉を発動。灰色の玉が彼から放たれて爆発、大量の煙にて全ての者の視界を阻害した。

 だが、女神マイアスは恐らくサーモグラフィーで熱探知してくるはず。それを逆手に取る寸法だ。


「モーベン、炎でダミーを作れ」

「もう完了しております」


「よし、ベルンゼ、水で俺たちを包み込め。その後、ヤツに接近する」

「おうよ! 任せてくれ!」


「ジュレイデ、あの作戦で行く」

「くひひ、無茶するわねぇ」


 ベルンゼの生み出した水の中に潜み、静かに移動を開始。急激に動くと水の膜が破れてしまうので焦りは禁物だ。

 その間、炎で作り上げたダミーを反対側からゆっくりと女神マイアスに接近させる。

 これは、作戦がばれた際の保険だ。どちらかが正解で、どちらかが外れ。


「ジュレイデ、行くぞ」

「了解よぉ」


 女神マイアスまでは後僅か。しかし、ここで彼女は動いた。


「猿の浅知恵、というのでしょうかね。二つとも潰す、という選択肢は考えなかったのですか?」


 その時、全てを蹂躙する光線が、炎のダミーと水の球体を飲み込み消滅させてしまった。


 ざんねん! おれたちの ぼうけんは ここで おわってしまった!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ