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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第十九章 鬼退治
705/800

705食目 マイリフさん奮闘記

 ◆◆◆ マイリフ ◆◆◆


 はい、マイリフこと、マイアス・リファインです。危うくデビルにされ掛けました。子供たちの愛が痛いです。およよ。


 季節は巡り巡って夏。夏といえば、茹だる熱さに対抗するために薄着になり、かき氷を片手にグデっとするのがジャスティス。

 好都合なことに、口やかましいミレットもいないので、グデり放題。やったねマイリフちゃん、ダラダラできるよっ。


「ぐすん、思い出して泣いてるわけじゃないんだからねっ」


 うん、少し反省。早く、我が子を助け出してあげないと。あの子のお陰で、今の私がいるのだから。


 とはいえ、実際問題、私は非戦闘員なので戦場に出たら真っ先に死亡確認されてしまう。

 それは、なんともし難いので、ここで一丁奮起し【コンバットマイリフ】にでもなってあげようかと思う。では、早速、訓練を開始しましょう。






「上から来るぞ! 気を付けろっ!」

「えっ!? 上っ!」

「掛かったな、阿呆がっ! 下だっ!」

「味方がいないっ!?」


 お尻に度し難い痛みを感じ大地に突っ伏す、コンバットマイリフ。くやちぃ。


 現在、私はモモガーディアンズメンバーに混じり、フィリミシア郊外の野外訓練場にて戦闘訓練中。

 意外に動ける私を見て、子供たちは模擬戦を提案。調子ぶっこいた私はそれを承諾、今に至る。


「うぐぐ……上って言ったのに」

「んん~? 間違ったかな?」

「ひほほ、次はスパンキングじゃなくてインストールしてあげるわ」


 邪悪な笑みを浮かべるエルティナは確信犯だ。流石に今の私では、ちょっとばかしバーサークしている少女剣士ランフェイには勝てない。

 寧ろ「ひほほ」と笑いながら切りつけてくる彼女に、三分間ほど耐え抜いたことを褒めてほしい。


「んじゃ、次は難易度を下げてユウユウ閣下でいってみようか」

「難易度が跳ね上がってる!?」

「すぐ楽になれる分、下がってるだろ?」

「震えてきやがりました」


 はい、開始三秒余裕でした。涙しか出てきません。


「あらやだ、弱過ぎるわね」

「ふきゅん、流石に訓練にならないか。根性は付くんだけどな」

「根性はいいから、単純に強くなりたいです」


 ふぅむ、とエルティナは豊かな乳房を抱えて唸った。私よりも大きくて、ちょっぴり嫉妬。腰もほっそい。ぐぎぎ、くやちぃです。


 その時、私の肩に置かれる手の感触。


「見事な嫉妬だ。素晴らしい。嫉妬連合に入らないか?」

「きゅおん、今なら嫉妬連合メンバーの証【嫉妬仮面】をプレゼント」

「さぁ、世界を嫉妬で染め上げよう」


「なんか変な勧誘来た~!?」


 そこには珍妙な仮面を付けたオフォール、リック、キュウトがいたではありませんか。

 そんな事よりも、その仮面がダサすぎる件について。手作りなのか、失敗した福笑いのようなデザインだ。


「ふきゅん、出たなっ! 嫉妬連合!」

「リア充マスターエルティナ! 今日こそは決着を付けてくれよう!」


 そして、奇妙な戦いが始まる。ちなみに他のモモガーディアンズメンバーは、既に各々のトレーニングを開始しています。流石に慣れているなぁ。


「受けてみよ! 嫉妬心が生み出した絶技を!【嫉妬ハリケーン】!」


 嫉妬連合の三人がデルタフォーメーションを取り、その三角形の中心に度し難いエネルギーが発生しました。

 あれが彼らの嫉妬なのでしょうか。だとしたら、とてつもない嫉妬心ですね。


「おにぃ……」


 そして、その中心にバリバリクンの姿。もの凄く、うっとりとしている。そこは危ないから、こっちにいらっしゃいな。


「ならばっ! 竜信変化で受けて立つっ!」


 眩い閃光と共に、エルティナが黄金の竜人へと変化を果たしました。はっきり言って、力の無駄使いです。


「おまっ!? 竜信変化は反則だろっ!?」

「バカ野郎! パーフェクトシグルドになってない分、有情だろうが!」


 流石に嫉妬連合も慌てだします。しかし、その中にあってキュウトは余裕の態度を取っていました。


「きゅんきゅんきゅん、エルティナの時代は終わる。この俺が取って代わるからな!」

「な、なにぃ……!?」

「見せてやろう、嫉妬ぱぅわぁによって進化した俺の姿をっ!」

「うおっ、まぶしっ!」


 閃光、そして何かが弾ける音。白くなった視界が正常に戻った時、そこには三本の尾を持つキュウトの姿がありました。


 ……何故か全裸で。


「妖狐act3だっ!」

「ふきゅん! 凄い妖気だぁ!」


 確かに、エルティナの言うとおり、空間が歪むほどの凄まじい妖気でした。元々、妖気は陰の力に傾いている力。嫉妬に狂っているキュウトとは相性がいいのでしょう。


「よし、ならば必殺の竜皇変化だ。今ならユウユウ閣下も付いてきてお得だぞ」

「「「それだけは勘弁してください」」」


 戦いは終わりました。嫉妬連合は全面降伏、戦いらしい戦いも発生せず事態は収拾。そして、私の訓練もまともにおこなわれず終了したのでした。がっくし。






「むむむ、このままではいけませんね」


 自室にて下着姿でアイスクリームをペロペロする。至福過ぎてまいっちゃうわ。

 そして、何気なくお腹を見る。そして、悪寒。まさかとは思うが、と摘まむ。



 ぷにっ。



「みぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 それは絶望の始まりでした。元とはいえ、女神様がぽっちゃりになる、などあってはならない。私はここに、戦闘力向上という名目のダイエットを決行する。


 我、修羅道に踏み入れたるものなり。いざゆかん。






 次の日から、私の猛烈なトレーニングは始まった。腕立て伏せ百回、腹筋百回、ランニング十キロメートルというハードな内容だ。それを毎日行う。

 まさに地獄だ。このトレーニング内容を考えた私は、まさに悪鬼羅刹。恐ろしや。


「死にそうです……おえっぷ」

「ふきゅん、これくらいがなんだぁ。桃師匠の修業はこれ以上に地獄ぞぉ」

「ひえっ」


 何故か、エルティナがコーチに付いて厳しい指導をおこなってきます。でも彼女は、幼女化して白いわんこに搭乗しています。ずるいっ。


「ふっきゅんきゅんきゅん。とんぺー、マイリフが遅れ出したら、お尻をガブっていいぞぉ」

「おんっ!」

「枝のガブりは、シャレにならないでしょうにっ!?」


 この白いわんこの正体は、全てを喰らう者・風の枝で、エルティナは彼を移動の手段として使っているのです。しかも、普通に空も駆ける事ができるらしい。

 いいなぁ。しかも、もふもふだし。


「ふひぃ! ふひぃ! しぬるぅ!」

「そう言って死んだやつはいないぞぉ。走れ走れぇ」


 割と容赦のないエルティナに、私の足と心臓が悲鳴を上げます。誰か助けてっ!

 とまぁ、こんなやり取りが続く中、なんとか完走。これでステータスは向上したでしょうか。


「今日はここまでだぁ」

「は、はい。あぁ、疲れたぁ」

「昼食は俺が作ろう。スペシャルなメニューだぞ」

「ありがとうございます」


 エルティナの作る料理は天界から見ていたこともあり、絶品であることを知っています。ハードな運動後とあって食も進む事でしょう。楽しみですね。


「たんと召し上がれ」

「……え?」


 テーブルの上には、皮のついていない鶏むねの蒸した物、そして卵白のみを茹でた物、茹で大豆、茹で野菜が大量に用意されていました。どういうこと?


「どうしたぁ、スペシャルなメニューが気にくわんかぁ?」

「あ、いえ、いただきます……」


 取り敢えず鶏肉から口を付ける。あ、香辛料が効いていて思ったよりも美味しい。

 しっとりとしていながら、鶏肉の旨味を十二分に味わえる。塩っ気が控えめでも香辛料を利かせているから十分に満足できる。


 茹でただけの卵白も、しっかり出汁を混ぜているから、そのままで美味しい。茹でた大豆と野菜は見た目は何も味付けされていないように見えるが、口にすると豊かなオリーブオイルの風味と控えめの塩気を感じる。

 大きめにカットされた野菜は噛むと満足感を得られるし、大豆は畑のお肉というだけあって、お腹にずっしりと溜まる。


 うん、これは見た目よりも遥かに満足できる料理。まさにスペシャルなメニューです。


「全部、味付けをしているからドレッシングの追加は必要ないからな」

「えぇ、とっても美味しいです」

「んじゃ、これ全部完食な」

「ぶはっ!?」


 テーブルの上の料理は、どう見ても三人前くらいはある。こんなものを全部食べてしまったら、痩せるどころか太ってしまうだろう。

 てっきり、エルティナも一緒に食べるものだと思っていたが、まさかこれが一人用だとは、誰が思い付くだろうか。


「今、全部食べたら太る、と思ったな?」

「ぎくっ、それは……」

「大丈夫だ、問題ない。俺を信じない、おまえを信じろ」

「逆じゃないですかやだ~」


 というわけで、渋々ながら出された料理を全て平らげる。お腹がパンパンです。


 そんな日々が暫く続いたある日の事。トレーニングにもなれ始め、身体が軽くなってきたことを実感。思い切って体重計に乗ってみると……。


「ほぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? 八キログラムも太ってるぅぅぅぅぅぅぅっ!」


 なんということでしょう、トレーニング開始時から八キログラムも太っているではありませんか。これはただちに抗議せねばなりますまい。


「ふきゅん、八キログラムしか増量しなかったか。まだまだだな」

「八キロしか、じゃないですよっ」


 モモガーディアンズ本部のカフェスペースにて、書類とにらめっこしながら私の講義を聞いていたエルティナがとんでもない発言をする。

 聞き捨てならない言葉に、私の怒りは天元突破しそうだ。


「まぁ、第一段階はクリアーでいいだろう」

「第一段階?」

「そ、マイリフは筋肉が無さ過ぎるんだぜ。脂肪だらけなんだ。だから、そのスタイルで体重が三十キロ後半だったんだぜ」

「う、体重は軽い方がいいじゃないですか。重たい女子は男子に嫌われます」

「男が嫌うのは、ぶくぶく太った女子だ。自己管理ができていない、と思うんだろう」


 ずびび、と紅茶を飲み干したエルティナは、その水晶のような青い瞳で私の身体を観察しました。そして、にっこりと微笑みます。


「新陳代謝が向上しているようだな。寧ろ、八キログラム増えた今の体重が本来あるべき体重なんだぜ。裸の自分を確認してっか? 腰辺りもキュッとしてんぞぉ」

「え? ウェストが……?」


 そういえば、じぶんの裸などはマジマジと見たりはしません。というわけで、今日のトレーニングをこなし、汗を洗い流した後に確認をしてみます。

 すると、どうでしょう。あのぷにぷにだったお腹に薄っすらと筋肉が付き、余剰な脂肪が姿を消しているではありませんか。


「ふひっ、ふひひっ! や、やった! やりましたっ!」


 この事を報告すると、エルティナは第二段階へと移行することを宣言。このまま、トレーニングを続けつつ、今度は魔力を効率よく循環させるトレーニングを加えると言ってきました。


「魔力を循環させて、体内に溜まる不純な魔力を排出し、体内を活性化させるんだぁ」

「まぁ、魔力循環には、そのような効果があるんですね」

「ふきゅん、これは本来、魔力不循環症の患者のための治療法なんだがな」


 そういうと、エルティナは突然、私のお腹に手を当てて魔力を注ぎ込み始めました。

 すると、彼女の魔力が私の魔力を追い立てるように体の中を駆け巡ります。それが、とてもくすぐったくて、でも抗えなくて、思わず声を上げてしまいました。


「うひゃひゃひゃひゃっ! ほ、ぽっぎぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」

「うおぉ……ひっでぇ顔だぁ」


 そんなこんなあって、魔力の循環も終わり、身体がポカポカしていることに気が付きます。なんだか、汗もかいてきました。


「ふきゅん、これでよし。素人は絶対に真似すんなよ?」

「あぁ、魔力を調節しないと拒絶反応が起るんでしたよね?」

「分かっているんならいいんだぜ。ヒーラーでも、偶に失敗するヤツがいるくらいだからな」


 こうして、トレーニングを続けた結果、私は念願のパーフェクトボディを手にいれました。


 ……あれ? 最初の目的ってなんだったっけ? なんか違うような。ま、いいか。

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