690食目 彼の地より~愛と勇気と努力を込めて~14
しかし、直後に百代目桃太郎エルティナは違和感を感じ取った。あまりに魂が希薄過ぎる、と。それは身魂融合をおこなっている彼女のパートナー、トウヤも感じ取っていた。
「トウヤ、ドクター・スウェカーは……」
「あぁ、生きている。やはり、コピー体のようだ」
「ふきゅん、小賢し過ぎるでしょう、科学者」
ねっとりと絡み付く陰の力。それは、ドクター・スウェカーのもので間違いなかった。しかし、それが、どこから放たれているか、が判明できない。珍獣は苛立ちを覚える。
「考えていても仕方がない。今、誠司郎たちが中里香里と交戦中だ。急いで救援に向かおう」
「まぁ、あっちには、もう救援を送っているんだがな。でも、久しぶりに誠司郎の顔を見たいし……皆で誠司郎を、もみくちゃにしにユクゾッ!」
「「「「わぁい!」」」」
エルティナの号令に、モモガーディアンズメンバーが、わちゃわちゃと移動を開始する。その光景にトウヤは感慨深くため息を吐いた。
同時に、誠司郎が死亡した、との情報を伝えるべきかどうか悩む。しかし、それは敵側からもたらされた情報だ。信用に値していいものかは微妙なところである。
結局、彼は保留にすることにした。彼女か死んでいるかどうか、は直接確認すればいいことなのだから。
「このノリも久しぶりだな」
「これが、モモガーディアンズなんだぜ。さぁ、さっさと片付けて、パーティーの続きだ」
エルティナとモモガーディアンズたちは、誠司郎救援のために超鬼竜の身体を駆け抜けた。今も上空では、百式戦闘機とイーターボールとが激闘を繰り広げ、イージス艦こんごうと戦艦吉備津の砲撃が、超鬼竜オーガキングを蹂躙している。
とここで、オーガキングの口部に膨大な陰の力が収束していることに、トウヤが勘付いた。
「エルティナ! オーガキングの口部に超エネルギー反応! このままでは、こんごうと吉備津が危ない!」
「ふきゅん! そいつは笑えないんだぜ! これでは救援に行けない、行き難い!」
『聞こえるか、わしじゃ』
「ドクター・モモ? どうしたんだぜ?」
『新人桃使いどもが、オーガキングの異常な陰の力に勘付いてパニックになっておる。そっちで宥めてはくれんか?』
「あぁ、もう。滅茶苦茶だよ。どうしてくれるの、これ」
緊急事態が重なり、つるつるの脳みその珍獣は頭部から白い煙を立ち昇らせる。やがて、彼女は考えることを放棄した。
「エル、こっちは僕に任せて、新人桃使いたちを宥めてやってくれ」
「ふきゅん、エド……分かった、任せるんだぜ」
「あぁ、任せておくれよ。ライオット、手伝ってくれ」
「おう、そうこなくっちゃなぁ! いくぜ、エドワード!」
異世界カーンテヒルのラングステン王国、その【若き王】が始祖竜の剣を構え来た道を引き返してゆく。それに続くのは、獅子の獣人ライオットだ。
「んじゃま、可愛い後輩どもをあやしに行くか」
「あぁ、頼む、エルティナ」
「任せるんだぜ、相棒」
エルティナは夫と親友を信じ、自分の成すべきことを成すために、仲間たちと共に駆け出した。
一方その頃、絶体絶命の窮地を救われた史俊は、己を救ってくれた者に対して驚愕していた。彼女は地球にはいないはずの存在であったからだ。
彼の脳が情報処理に追いつかず、頭部から白い煙を出しているのは珍獣と同様である。
「あ、あんたは……プルルさんっ!? なんで、ここに!?」
「ええっ!? プルルさんっ!? どうやって、地球に!?」
「んふふ、どうやってだろうねぇ? 史俊、時雨」
絶体絶命の史俊たちの前に現れたのは異世界の女性【プルル・デイル】であった。
彼女とその夫ライオットは、エルティナたちよりも一ヶ月前に挙式を終えている。結婚に至った理由は簡単だ。ライオットが我慢できずに、プルルを押し倒して、ヤッてしまったからである。その【けじめ】として一緒になったというわけだ。
少女を卒業し、女となったプルルは色々な部分が増し増しになっていた。その人妻の色香を敏感に感じ取った史俊は、なんだかよく分からない力が湧き上がってくることに気が付いた。
「ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ! まきしまむっ!」
それは、煩悩である。彼は煩悩を力に変えることのできる変態だったのだ。疲れ果てていたはずの身体に漲る力は収まりきらずに身体から溢れ出る。鼻血として。
「最低」
それを目の当たりにした時雨は、史俊に対して辛らつな言葉を浴びせた。精神的なダメージを被った史俊は、またしてもがくりと膝を突く。短いパワーアップであった。
「さて、随分とピンチのようだ。誠司郎もマイアス・リファイン様の予言通りになっているようだね」
「マイちゃんの?」
「うん、彼女はこの事を既に予期していたんだ。誠司郎の本当の力を封じ込めた時にね」
プルルは誠司郎の遺体を抱きかかえたまま、ピクリとも反応を示さない誠十郎に声を掛けた。
「あなたは桃使いだね。僕は桃使いプルル・デイル。誠司郎の向こうの友人、といえば理解してくれるかい?」
プルルの言葉に、今までなんの反応も示さなかった誠十郎が顔を上げる。焦燥しきった男の顔がそこにあった。
「さぁ、そんな顔をしている場合じゃないよ。誠司郎を呼び戻さないと」
「しかし、誠司郎は……娘はっ! もう……」
生命の息吹を感じられない、もう冷たくなりつつある自分の娘の感触に誠十郎は絶望を覚えた。だが、プルルは言葉を続ける。
「だからこそ、奇跡を起こすんだ。大丈夫、きっと起こせる」
「奇跡など、起こるはずもない! 起っていたのであれば、誠司郎は死なずに済んだ」
「それは奇跡を待っていたからだよ。奇跡は起こるのを待つものじゃない。起こすものなんだ」
「奇跡は起こすもの……?」
完全に蚊帳の外に置き去りにされている中里香里は憤慨した。もう、突如現れた女が何者であろうと関係ない。纏めて始末すればいいだけの事、と判断した彼女は舌打ちした後に黒手をプルルに差し向けた。
迫る黒手にヤツは気が付いていない、周りの者もだ。この私を無視したことを死ぬほど後悔するがいい、と香里は邪悪な笑みを浮かべた。
「油断するのと、仲間を信頼するのと、では意味が違うよ」
プルルは香里に背を向けたまま告げる。その宣言通り、香里の黒手が、何者かの放った紫色の炎で燃やし尽くされてしまったではないか。その紫色の炎を放った、と思われる黒い着物姿の女性が香里に対して叫ぶ。
「イメチェンか!? イメチェンなんだな!? 香里っ!」
「お、おまえはっ!?」
「きゅおん! 俺だって、負けてねぇぞ! どうだ、エロエロ狐の参上だ!」
どちらかと言うと【惨状】である。キャラがブレブレなのは、いまだ健在。ハレンチ狐娘キュウト・ナイリが半裸状態で決めポーズを決めていた。
「キュ、キュウトさんまで!?」
「相変わらず、キャラがブレブレね」
ばさっ。
そして、着付けが甘かったのか、全裸になってしまった。
「俺っ! ふっっっっっっっっかつっっっっっっっっ!!」
そして、この史俊である。その父、礼二も息子同様に漲っていた。そして、妻に張り倒されている。
「ば、馬鹿にしてっ! 許さない! 許さないぃぃぃぃぃぃっ!」
暴走する香里の陰の力。あまりに強大過ぎる陰の力は彼女を蝕み、結果、毛細血管が破裂して全身を己の血で赤く染め上げた。だが、分不相応の力に振り回される香里は、己の身体を傷付けることも厭わずに黒手を無数に放つ。それらは、ありとあらゆるものを捻じ曲げていった。
「ぎ、ぎきぃぃぃぃぃっ!?」
最早、敵味方など関係ない、全てが敵、と認識しているのか、香里を護っているイーターボールでさえ黒手の餌食になってゆく。
「やだねぇ、女のヒステリックって。いや、この場合、子供の癇癪かな?」
プルルは面倒臭そうに香里に向き直る。その彼女の表情を見て香里は戦慄した。
「先に、きみを退治した方が話をし易そうだ。残念だけど、僕は食いしん坊みたいに優しくはないよ? 覚悟することだね」
それは歴戦の戦士が作るであろう顔。一切の私情を挟まない処刑人がそこにいた。
「私が恐怖を!? そ、そんなはずはないっ!」
香里は自身が感じた恐怖を否定するかのように、矢鱈滅多らに黒手をプルルに差し向けた。しかし、その全てがプルルに辿り着く事はなく、ある一点に向けて伸びてゆく。
「なっ!?」
「僕には通じないよ。桃力特性【集】。僕は、ありとあらゆるものを集める」
桃力の特性の中でも最強の一角である【集】の力を持つ彼女に、間接攻撃は通用しない。
放たれた攻撃は一点に集められ、そして彼女に利用される定めにある。桃力によって制御を奪われた黒手が主に反旗を翻した。
「さぁ、パーティーを始めようか。悪夢パーティーを、ね」
「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
己の力に蹂躙される香里。ねじ切れる手足、軋む身体、血反吐を吐きだす。口の中が鉄の味で満たされた。この時、香里はようやく相手が己よりも格上であることを認知する。
「それじゃあ、さよなら」
プルルの手にする魔導ライフルが閃光を放った。桃色の光線は寸分も違わず香里の眉間を貫き、彼女に悲鳴を上げさせることもなく消滅させてしまった。
あまりに呆気ない決着に、史俊たちは口をパクパクさせるのみである。
残っていたイーターボールは、キュウトが全裸のまま攻撃魔法で全て処理。全裸でなければ、さぞ決まっていたはずであった。
そんなキュウトは勝利の決めポーズを取っているが、残念ながら、どう見てもスタイリッシュ痴女である。
「……さて、【次】が来る前に済ませてしまおうか」
「きゅおん! ま、まってくれ。着物が着れねぇ」
「なんで、着慣れない着物なんか着たんだい」
「良かれと思って」
「まったく……」
圧倒的な力の差を、まざまざと見せつけられた誠十郎たちは、呆けるより他になかった。
手際よく着物を着つけ直したプルルは、魔力を温存すべくGDを解除。マジックカードに収容し、GDスーツ姿となる。
「さらにデカくなったな、プルルさん」
「ん~、旦那に揉まれてるからねぇ」
「え? プルルさん、結婚したの!?」
史俊はプルルの身体に、時雨はプルルの発言に衝撃を受けた。プルルはライオットと一緒になった事を史俊と時雨に伝えた。
尚、エルティナの件はまだ伏せておくようだ。恐らくは彼らの驚く顔を見るのを楽しみにしているらしい。
「意外に早かったなぁ。もう少し奥手だと思ってたのに」
「んふふ、あの時は酔っぱらってたからねぇ」
「え……まさか」
「さて、どうかなぁ?」
暗黒微笑を浮かべるプルルに時雨は戦慄した。やはり、あの世界は弱肉強食であったのだ。
『プルル、聞こえるか? 緊急事態じゃ』
「うん? ドクター・モモ、どうしたんだい?」
『東京に……と言っても分からんか。そこから見える町に多数の鬼が出現しおった』
「あの町に、多数の鬼が? どういうことだい?」
プルルの言葉に史俊たちは動揺した。東京を護るために海に出たというのに、これではなんのために戦っていたのか分かりやしないからだ。
「東京に鬼って、どういうことなんだ!?」
「まぁ、落ち着きなよ、史俊。それで、規模は?」
『下級の鬼、百五十。中級三十。上級二と言ったところじゃ。恐らくはこっちが本命じゃろうな』
「このデカブツは囮だってことかい。随分と用意周到じゃないか」
プルルの言うとおりであった。このオーガキングは囮であり、本隊である部隊は人の姿に身をやつし東京の各地に潜伏していたのだ。それは、オーガキングの進行失敗の報を受けて活動を開始。最終目標に向けて進撃を開始した。
『ヤツらの目的は東京タワーと呼ばれる建物の破壊じゃ。そこを破壊されると地球とカーンテヒルが融合してしまうらしい』
「なんだって?」
『じゃが、わしは、この計画は達せられることなく終わる、と睨んでおる。何故なら、地球はあくまで無機物の集合体。それに対し、惑星カーンテヒルは生命体じゃ。始祖竜カーンテヒルそのものなのじゃ』
「この星が一方的にカーンテヒルに喰われてしまう、と?」
『さよう』
プルルはドクター・モモの回答に深いため息を吐いた。そして、深く考えることをやめる。どうせやる事は一つなのだ、頭を悩ませる必要などない。
「忙しくなってきたね。いつもの事だけど」
プルルは史俊たちに事情を説明した。彼らは、唐突な事に動揺を隠せない。
「状況が状況だ。もう、選択を選んでいる暇はないよ」
プルルはそういうと、誠司郎のぽっかりと空いた穴に手をかざした。そして、桃力の特性【集】を行使する。
「うん、仕込みはバッチリのようだね。ちゃんと魂が残るように細工してある。これなら……」
彼女の力は【ありとあらゆるもの】を集める。まずは彼女の流れ出た血液が集められた。次いで肉、そして活力、バラけた魂、意志を集める。
それは、まさに神の所業。あまりの事に唖然とする戦士たち。そんな彼らの目の前で、プルル・デイルは奇跡を起こした。
「最後に想いを集める。奇跡は起こるよ、起こそうとする者がいる限り、ね?」
恐ろしいまでの力が誠司郎の亡骸に集結する。ただただ一点に、愚直にまでに。
「がはっ! は、あぁ……!」
死んだはずの誠司郎が息を吐き咽だした。そんな誠司郎を抱きかかえる誠十郎は、娘の身体に熱が戻っていることを感じ取り、思わず彼女をきつく抱きしめてしまう。
「お……とう……さん……痛いよ」
「誠司郎っ! よかった、本当に……よかった!」
「誠ちゃん! 本当に大丈夫なの!?」
息を吹き返した誠司郎を目の当たりにした史俊と時雨は、それを成し遂げたプルルを見やる。だが、そこには憔悴しキュウトに抱きかかえられている彼女の姿があった。
「やっぱり、蘇生は一回が限界だね。桃力が空っぽだよ」
「エルティナなら、平然とした顔で力を使いまくるんだろうけどな」
「僕を、あんな【化け物】と一緒にしないでおくれよ。同じ桃使いになって、ようやく異常性が理解できたんだから」
酷い言われようだが、本当の事なので仕方がなかった。プルルの桃力が一だとすると、珍獣は万以上であるのだから。
度重なる真・身魂融合はエルティナを規格外の存在へと変貌させた。しかも、まだ完全なる目覚めではない。更に高みに昇る余地を残しているのだ。
「やぁ、誠司郎。久しぶりなのに散々だったね?」
「プルルさん……? 僕は、どうなってたの?」
「見事に死んでたね。ちょっと予定が狂ったかな」
「やっぱり、僕は死んでいたんですね」
誠司郎は、穴が開いてしまった服を身て、ぶるりと身体を震わせる。香里の一撃は致命的な一撃だったのだ。そんな、彼女にプルルは現状を伝える。その上で告げた。
「誠司郎、残念ながら、僕はもう戦力外に近い。一応はGDで戦闘に加わるけど、桃力はもう使えない。だから、きみたちを遊ばせておく余裕はないんだ。これが意味する事は分かるね?」
「はい、僕も、もう迷ってなどいられない事は理解できています」
誠司郎は決意した表情で誠十郎の腕の中から離れた。それは親鳥から巣立つひな鳥のように。
「お父さん、お母さん。見て、これが……本当の僕だよ」
「誠司郎っ!? それは……!」
史俊が制しのために差し出した手は届く事はなかった。誠司郎のTシャツを破り飛び出す純白の翼。地球の重力から解き放たれた彼女は、ふわり、と宙に浮いた。
「せ、誠司郎?」
「誠ちゃん?」
「お父さん、お母さん。僕はこの星を護りたい。だからっ!」
瞬間、莫大な魔力が溢れ出し、誠司郎の頭部に黄金の輪を作り出す。それは、紛う事なき天使の姿だ。
「僕は戦う! もう、迷わない! 大好きな人たちを護るためにっ! 力を使うっ!」
その時、誠司郎に向かって複数のイーターボールが迫ってきた。それを察知した誠司郎は構えを取る。だが、そのイーターボールは終ぞ誠司郎に達する事はなかった。青白い閃光が怪物たちを消し飛ばしてしまったのだ。
「あの閃光はっ!?」
誠司郎の元に何かが弧を描いて飛んできた。それを受け止める誠司郎。
「天使少女、相棒だぜ?」
「ルシちゃん!? あなたは……!」
漆黒の帽子に同じく漆黒のマントを身に纏った少年が、水の邪竜に乗って参上した。この水の邪竜は悪魔レヴィアタンである。
「けっけっけ、そのまま死んでてもよかったんだぜ? ライバルが減るからよ」
「糞悪魔は黙ってろ。久しぶりだな、誠司郎」
「ガイリンクードさん! あなたも地球へ!?」
「あぁ、宴が催される、と聞いてな」
誠司郎の魔導銃の師、ガイリンクードも地球の危機に駆け付けていた。彼だけではない、エルティナに縁のある者は全員、この戦いに参加している。ほぼ全員が鬼相手に大戦を繰り広げた猛者たちだ。
「史俊、時雨もだ」
「おっほ! きたきた! また、おまえと一緒に戦える日が来るなんてな!」
「うわぁ、久しぶりっ! 力が漲ってくるわ!」
史俊と時雨は受け取ったマジックカードから、かつての武具を召喚する。
黄金の鎧を身に纏い、久々となる黄金の騎士へと史俊は変貌した。時雨も黄金の杖を手に取り力を開放する。すると、在りし日の姿へと変貌した。魔法使い時雨の再誕である。
「ルシちゃん、もう一度、僕に力を貸して」
誠司郎は魔導銃ルシフェル444に額を付けて魔力を循環させた。どくん、と白き魔導銃が脈動する。それは喜びだ。それは祝福だ。それは……誕生だ。
ルシフェル444から、大いなる輝きがもたらされ、誠司郎を包み込む。輝きの後には白き衣をまといし明けの明星の姿があった。
「行こう、皆。東京を、地球を護るんだ」
「あぁ、やろうぜ、誠司郎!」
「もう負けたりしないわ! 力を取り戻したんだもの!」
子供たちの変貌に親たちは、老いし戦士たちは戸惑うも、すぐに気を持ち直した。今はそれどころではない、と彼らも理解しているのだ。
「悪魔に乗れ。運んでやる」
「ちっ、ダーリンの頼みだから乗せてやる。ありがたく思いなっ!」
次々とレヴィアタンに乗り込む戦士たち。全員が乗り込む、とレヴィアタンは猛スピードでキングオーガから離れていった。
「木崎、長月、石田……もう少し、そっちで待っとれよ」
戦友の亡骸を超鬼竜に残し、老いし戦士たちは最後の戦場へと向かう。そこは、生まれ育った自分たちの町だ。彼らは、必ず守ってみせる、と命を、魂までをも燃やす覚悟で戦いに臨むのであった。