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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第十八章 地球
688/800

688食目 彼の地より~愛と勇気と努力を込めて~12

 港へ戻って来た桃使い一行は、直ちに補給を開始する。たった一隻だけの帰港に自衛隊関係者たちは落胆する様子を見せた。何故なら、それは、あろうことか旧式のイージス艦だったからだ。


「大至急、補給を! 脅威は、いまだ健在だ!」

「し、しかし、今更こんな旧式艦で何ができるのですかっ!?」

「出来る、出来ないではない! やるのだっ! 我らが日本を護らずして、誰が護るというのだ! 言ってみろ!」

「う……ぐ、了解であります!」


 こんごう艦長、源勇雄一佐は、動揺する隊員たちを鼓舞し最後まで諦めない姿勢を見せた。

 旧式艦に日本の未来が託される日が来ようとは、誰が想像したであろうか。するはずもない。このような、巨大怪獣が出現するなどフィクションの中だけなのだから。


「こりゃ、もうダメだな」

「すまねぇな、政さん」

「いいってことさ。送希丸も華々しい最期を迎えられたってもんよ」


 全力で戦闘海域を離脱した老いし漁船は、港に辿り着くと同時にその役目を終えた。エンジンが焼き付き、遂に寿命を迎えてしまたのだ。


「トウヤ、俺たちもイージス艦に乗り込むZE」

「あぁ、そうしてくれ。それと、間もなく本部からの増援が到着する、とのことだ」

「マジか? これで少しは希望がみえてきたZE」


 しかし、本部から送られてきた増援に、マイクたちは落胆することになった。その全てが新人の桃使いであったためだ。


「何を考えてんだ! 本部の連中はYO!」

「おかしい、ドクター・モモは精鋭を送ると言っていたが……」

『聞こえるか、トウヤ、マイク』


 困惑する二人に件の科学者からの連絡が入った。そして、その口からとんでもない事実が知らされる。桃アカデミー内に内通者がおり、情報を操作していたことが明らかになったのだという。


「マジかYO? どうなってるの?」

『まったくもってシャレにならんわい。そっちに新人が到着しとるじゃろう? こっちに帰してくれ。戦場に立たせるには早過ぎる』


 だが、それに異を唱えたのはトウヤであった。


「来たからには働いてもらう。もう援軍を待つ時間などない」

『しかし、じゃのう』

「桃使い、とは鬼に立ち向かい人々を護る者だ。己の保身する者は桃使いとして失格、それならば最初から桃使いになるべきではない。だからこその自己選択だろう」

『相変わらず厳しいのう。新人どもはどうかね?』


 若き桃使いたちはトウヤの重圧に気圧されているものの、そのとおりである、とトウヤの桃使いとしての在り方に共感する姿勢を示した。


『桃使いは馬鹿ばかりじゃのう。トウヤ、新人どもを任せるぞい』

「了解した。聞いたな、新人たち」

「はい! 若輩なれど、我らとて桃使いの端くれ! このような危機に立ち向かえることを光栄に思います!」

「よろしい、ならば命じる。死ぬな、生きて勝利の喜びを分かち合うまで、己を含む誰をも死なせるな」

「はいっ!」


 送られてきた新人桃使い、二十名は身を正し、トウヤ中佐に敬礼した。この間に、こんごうの補給は進む。そして、オーガキングの治療も進んでいた。

 次は間違いなく決戦になる。僅かな時間を休憩に当て、決戦に備えることになった。出撃は午前三時。それが、泣いても笑っても決着を付ける最後の出撃となろう。


「え? 美千留ちゃん?」

「誠ちゃん?」


 増援として送られてきた新人桃使いの中には竹崎美千留の姿があった。もう会う事はない、と思われていた二人は運命の悪戯によって再会することになったのだ。


「もしかしたら、と思っていたけど……やっぱり、この戦いに参加していたんだね」

「うん、放っては置けないもの」


 港の堤防に腰を下ろし、海を眺めながら会話する誠司郎と美千留。海の向こう側には薄っすらと山が見える。オーガキングの姿だ。


「目に見えているけど、はるか向こうなんだよね」

「うん、誠ちゃん、実はね、私、凄く怖いの」


 美千留はカタカタと身体を震わせていた。そんな彼女を誠司郎は抱きしめる。震えが治まるように、ときつく抱きしめた。


「ありがとう、本当なら、私が誠ちゃんにしてあげないといけないのにね」

「そんな事はないよ。怖いものは怖いもの、仕方がないよ」

「私……どうして桃使いになっちゃったんだろう? 大して強くもないし、勇気もないのに」


 誠司郎から解き放たれた美千留は、膝を抱えて暮れ行く夕空を眺める。ひょっとしたら、最後の夕空かと思う、とやはり恐怖に押し潰されそうになった。


「僕の恩人が言っていたよ。桃使いは選ばれたからなるんじゃない、大切な誰かを護ろう、と強く願う者が桃使いになるんだ、ってね」

「大切な誰かを……お父さん、お母さん……トウカさん……!」


 美千留は抱えた膝に顔を埋めた。暫しの間、すすり泣く声が波音に混じる。誠司郎はその音を静かに聞いていた。やがて、それは波音だけになる。


「誠ちゃん、私、がんばってみる。どうなるか分からないけど、大切な人たちの未来を、この手で護りたい」

「うん、一緒に護ろう。美千留ちゃんは独りじゃないよ」

「ありがとう、誠ちゃん。大好き」


 二人は、どちらかともなく互いを抱きしめた。暮れる夕日と、押し寄せる波音が二人を包み込む。決戦の時は静かに訪れようとしていた。






 午前三時、日本の最後の戦力、イージス艦こんごうは桃使いたちを乗せて決戦の海域へと出港した。政府はいまだに混乱の極地にあり、まったく機能を果たしていない。

 海上自衛隊も情報が殺到し処理に追い付かず機能を果たせずにいた。最早、現場の判断のみが頼りの状況となっている。


「賽は既に投げられた。今更、上の指示に従ってなんになろうか」

「艦長、我ら、既に覚悟はできております」

「すまんな。おまえらの命をくれ」


 こんごう艦長、源勇雄に敬礼する船員たち。この戦いが、自分たちにとって最後の任務になるであろうことを彼らは予期していた。そこには恐怖も後悔もない、やるべきことを成し遂げん、とする男の意地があった。


「皆、話を聞いてくれ。桃アカデミー本部トウヤ中佐だ。これより、敵巨大生物兵器の攻略作戦を実行する。尚、援軍は無いものと考えてくれ。その上で話を進める」


 作戦はこうだ。足の不自由なマイクは、こんごうに残り桃力を艦に供給する。こんごうはその力でもってオーガキングに打撃を与え続ける。その間にトウヤ率いる部隊がオーガキングに上陸し、ドクター・スウェカーを退治し、オーガキングを無力化する、という流れである。


「無茶苦茶な話だな」

「今更だな。桃使いが、まともな作戦を実行できるとでも?」

「あ~、あ~、止めてくれ。悲しくなってくるから」


 トウヤにおどけて見せるマイク。彼のお陰で場の空気が少しばかり和んだ。


「俺の部隊に加わるのは老人たちと新人たちだ」

「あの、トウヤさん、僕らは!?」

「誠司郎たちは、こんごうにて待機。ここから先は桃使いの領分だ」

「そんな……」


 落胆する誠司郎。そんな姿を見た史俊が反論する。


「トウヤさん、俺たちも行くぜ。別に俺たちは桃使いじゃないから、あんたの指示に従う理由は無い」

「ふむ、道理だ」

「俺たちには行かなきゃならねぇ理由がある。決着を付けなきゃならねぇ相手がいる」

「そうよ、あんな香里を放っておくことなんかできない」


 史俊を援護する形で時雨が前に出る。その表情になんの迷いもなかった。そんな彼らを目の当たりにしてしまっては、流石のトウヤも説き伏せることは困難と悟る。


「命の保証はできない。それでもか?」

「今更だぜ、トウヤさん」

「了解した」


 だが、子が行くというなら親は黙っていないものだ。特に誠司郎たちの親は少しネジが外れている。共に赴くと言って聞かなかった。


「やれやれ、俺っちだけ仲間外れか? そりゃないYO」

「仕方あるまい、俺かマイクが残らねば、こんごうに桃力を供給できないのだから」

「ちぇっ、戦果を期待してるZE」

「あぁ、期待の添えよう」

「敵、巨大生物兵器、見ゆ!」


 遂にこんごうは決戦の海域へと到着した。眼前には山と見間違える脅威が、その姿を晒している。どこからでもかかってこい、と言わんばかりの雄々しさに戦士たちは、あらん限りの勇気を振り絞り立ち向かう。


「では、手筈通りに頼む! 作戦開始!」


 既に、こんごうの後ろには東京が見える。退くことの許されない戦いが始まった。

 戦力比は1:2000。こんごう1に対しドクター・スウェカー側はイーターボールの大軍を召喚していた。しかし、桃使いたちは恐れを見せない。


「うち~かた~始めっ!」


 こんごうの砲塔が火を噴く。搭載したミサイルも出し惜しみしない。強力な火器を序盤から出し惜しみしないのにはわけがあった。


「うぬぅ!? こうも黒煙が立ち昇っては視界が! おのれ、これを狙っておったか!」


 立ち昇る黒煙は視界を潰した。ドクター・スウェカーは香里を手元に残し、イーターボールをこんごうへと差し向ける。そして、桃使いたちを警戒する。

 その読みは正しく、守りに就かせていたイーターボールたちと、桃使いたちとの交戦が始まる。


「あれは援軍の桃使いたちじゃな……囮、というわけか」


 ドクター・スウェカーの読み通り、新人桃使いたちは囮であった。イーターボールと僅かな時間、交戦した後に撤退を開始したのだ。


「香里、ここは、わしだけでいい。おまえは誠司郎君の相手をしてあげなさい」

「うふっ! 分かったわ、ドクター・スウェカー。ありがとっ!」


 香里はドクター・スウェカーの右頬に祝福の接吻をすると、蝙蝠の羽を生やし黒煙が満ちる空へと飛翔した。


「ふん、捨て駒でも愛着は湧く……か」


 ドクター・スウェカーは、ニヤリと獰猛な笑みを浮かべると目の前の敵と対峙した。

 彼の目の前には、誰も存在していない。だが、彼はそこにいる、と知覚したのだ。


「ちっ、流石、と言っておけばいいか?」

「当然じゃ、わしを誰だと思うておる? ドクター・スウェカーじゃぞ」


 ドクター・スウェカーが生み出した歪みから巨大な炎の腕が伸びて、気配を消していた【音無し】を握り潰さんとした。

 咄嗟に危険を察知したトウヤは炎の腕を余裕を持って回避する。防御は決して選択しなかった。それは無意味であることを理解しているからだ。


「ふふん、同じ失敗はせん。どうせ喰われるのであれば、喰われても痛くないものを対価にすればいいだけの事」

「厄介なことに気が付く」


 トウヤは背に担いでいた忍者刀を抜いて構えた。長年、愛用し続けた刀であり、多くの鬼の血を吸ってきた妖刀でもある。


「かっかっか、音無しよ、こうして対峙することになろうとはのう」

「画面越しでやりあう時間はとうに過ぎた、ということだ」


 瞬間、トウヤの姿が消えた。ドクター・スウェカーは右頭部付近に歪みを生じさせる。金属音、そして火花が散ってトウヤの姿が現れた。圧倒的な予測が可能にする防御術だ。


「ほれほれ、どうした?」

「言わせておけば」


 ドクター・スウェカーはトウヤの猛攻をことごとく防いだ。まるで何十、何百手も先の攻撃が見えているかのようだ。これにはトウヤも驚愕するより他にない。


 ドクター・スウェカーとトウヤとの戦いが膠着状態に陥っている頃、誠司郎たちは中里香里と接敵、交戦状態に陥っていた。

 香里が引き連れているイーターボールは、その数三百。対して誠司郎側は、三十名程度に過ぎない。圧倒的な戦力差だ。


「へっへっへ、こりゃあ絶望的じゃな」

「死ぬには良い日じゃて!」

「使い方はまちごぅとるがのぉ」


 老いし戦士たちが先陣を切った。最早、語る事はない、と判断。日本の、世界の存亡を賭けて両雄は激突する。


「あっはぁ! 行きなさい、イーターボール!」

「ぎきぃぃぃぃぃっ!」


「玉っころごときに、後れを取れるかいなっ!」

「わしらの意地を見晒せい!」


 激しい銃撃戦を掻い潜り、中里香里が誠司郎に接近する。機械化された腕が変形し赤黒く輝く刃を形成した。


「誠司郎ぉぉぉぉぉっ! ひ・め・い! 聞かせてっ!」

「やらせはせんっ!」


 誠司郎の前に父、誠十郎が飛び出し、桃色の輝きに包まれる刀で邪悪な刃を受け止めた。


「おじさん、邪魔だなぁ」

「邪魔なのは、きみの方だっ!」


 誠十郎の刀が輝きを増した。信じられない現象を見た香里は危険を察して飛び退く。


「娘は、家族は、私が護る!」

「あっはぁ! 桃使いってのは、こうも簡単に発生するの? ツクシみたいねぇ?」


 誠十郎から放たれる陽の力、それはあまりに遅かった発現であった。元々、彼は素養があった。しかし、それは妻を想う心にて抑えられていたのである。

 しかし、娘の誠司郎が生まれ護る者が増えたこと、そして、この危機的状況下によって、躊躇いというものが消えた結果、彼は遅い覚醒を果たした。


「お父さんが……桃使いに?」

「桃使いとか、そんなのはどうでもいい。私は、私の大切な者たちのために全力を尽くす」


 誠十郎は刀を上段に構え、猛る想いを刀に籠めた。


「迷う心ごと、邪悪を断つ! 示現流の太刀筋を垣間見よ!」


 誠十郎の一振りは、何十ものイーターボールを切り裂き浄化した。その驚異的な威力を見た香里は率先して撃破する対象を誠十郎へと定める。


「成りたての桃使いごときにっ!」

「慢心する者に勝利無しっ! 我が刀の錆となれい!」


 迷いなき誠十郎に香里は気圧された。しかし、今だ圧倒的な戦力差だ。彼女は数で圧倒しよう、と温存していた戦力を投入する。彼女が密かに作り出していた戦闘用の木偶人形だ。

 動きが緩慢だった凌辱用の木偶人形とは違い、獲物を狩るために作られた危険な鬼たちである。それが香里の生み出した歪みから続々と姿を現した。その数は五十を越える。


「行きなさいな、私の可愛い木偶人形!」

「やっこさん、まだ数を増やすじゃぞ!」

「弾ぁ、残っとるかいな!?」

「がっはっは! 弾切れじゃい!」


 老いし戦士たちは銃を捨て腰の刀を抜いて、イーターボールと木偶人形を相手に大立ち回りを開始し始めた。しかし、既に高齢のため息切れし始める。そこを狙われた。


「ぐわっ!?」

「木崎っ!」

「へっへっへ、先に逝っておるぞい!」


 致命傷を負った木崎は、腰の手榴弾の安全ピンを抜き、それを抱えたまま、イーターボールの群れへと突入し爆発。多数のイーターボールを巻き添えにして壮絶な死を遂げた。


「お爺さん!」

「構うな、誠司郎ちゃん! これが、わしらの戦場じゃ! わしらの戦いじゃ!」

「おうともよ! 男として生まれ落ち、戦場で花散るは戦士の誉れよぉ!」

「木崎に続けぃ! わしらの士魂の誉れ、見せ付けてやれぃ!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」


 老いし戦士たちの狂気とも言える行動に、その狂気を糧とする鬼たちが恐怖した。特に香里は訳の分からない狂気に困惑し、誠十郎の攻撃に防戦一方になっていた。


「な、なんなの!? こいつらっ! 死にたがり風情だというのにっ!」

「香里っ! こんな戦いはもう止めてっ! まだ、引き返せるよっ!」


 動揺した香里に、説得を試みるなら今しかない、と悟った誠司郎は行動に出た。香里に駆け寄り、彼女を押し倒したのである。


「誠司郎っ!」

「香里っ!」


 誠司郎は香里を抑えつけて説得を続ける。香里はもがくが意外にも誠司郎の腕を振り解くことは叶わなかった。


「もう止めよう! こんなことをしても、失ったものは帰ってこない!」

「知ったことを言わないで! 失うという事が、どういうことだか分かっていないくせに!」

「分かるよ! 僕も、向かうで、もう一人の自分を失った! それが、どれだけ心細いか!」

「なら! こっちに来てよ! 私のたちの方へ!」

「それじゃあ、ダメだ! そっちは、何も生み出さない!」

「そんな事はない! だって、ドクター・スウェカーは言ったもの! 全ては一つになる、失ったものも帰ってくるって! そうよ……帰ってくるの。失った【私】が帰ってくるの」

「か、香里っ!? うわっ!」


 香里から膨大な陰の力が溢れ出し、組み付いていた誠司郎を吹き飛ばした。


「うふっ、そうよ……全部、帰ってくるの。欠けた【私】が帰ってくるの。大丈夫、誠司郎も帰ってこれるから。だから、だから……死んで」

「誠司郎! 香里はもうダメだ!」

「で、でもっ!」


 史俊は誠司郎を抱えて横っ飛びをした。直後にあり得ないほどの陰の力を秘めた光線が通り過ぎてゆく。

 それはオーガキングの体表を削り取り、巨大なるものに悲鳴を上げさせた。


「あはっ! うふ、うふふふふふふふふふふふふふふふふ!」


 メリメリと変貌してゆく中里香里。その姿は悪魔そのものだ。この脅威に戦士たちは蹂躙されてゆく。老いし戦士も立ち向かうも、そのことごとくが無駄死にに終わった。


「ええい、バケモンが……ぐふっ」

「はぁぁぁ……もっと、血を流しなさい。もっと、もっと悲鳴をぉぉぉぉぉ!」

「香里っ!」


 最早これまで、と決意した誠司郎は香里にデザートイーグルの一撃を打ち込んだ。

 しかし、放たれた弾丸は香里に掴まれ威力を発揮することなく潰されてしまう。


「なっ!? あ、が……」

「残念ね。でも、迷いのない一撃だったわ。褒めてあげる」


 誠司郎と香里の姿が重なった。誠司郎の背中から香里の腕が生えている。それが示すところは……。


「誠司郎ぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 ゆっくりと倒れ伏す誠司郎。彼女の血で身体を染め上げた香里は恍惚の表情を浮かべる。

 誠十郎と美波の叫びが戦場に響き、世界は暗雲に飲まれようとしていた。

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