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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第十七章 決戦への備え
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668食目 リ・ミリタナスの塩

 ミリタナス神聖国にて、もぐもぐたちを布団代わりにして一夜を過ごした俺は、ぐぐっと背伸びをしてベッドから下りた。お寝坊を満喫するもぐもぐたちは、相も変わらずフリーダムである。


 ミレニア様が復帰してからは、大神殿で使っていた簡素な自室をミレニア様に譲り、俺はリ・ミリタナスの大樹内にある元使用していた部屋にて寝泊まりしている。一応はリ・ミリタナスのメンテナンスを兼ねているのだ。

 今日も上質な塩を作り出している大樹。この塩は非常にミネラルが豊富で味わい深い。今では、この塩を求めて、商人たちが大挙してやってくるほどだ。。


「この塩を使って何か作るって考えていたなぁ。すっかり忘れていたぜ」

「ちゅん」


 うずめが、そんな事を言っていたね、と肯定した。したがって、今日はこの塩を使って、何かを作る事にする。

 まずは味を正確に把握するために【塩むすび】を作成。むしゃあ、ともぐもぐする。


「こ、これは、予想をはるかに上回る美味さなんだぜ」

「ちゅん!」「もぐ~!」


 ちゃっかり一緒に試食した、うずめと、もぐもぐたちも、その美味しさに驚嘆する。

 この塩には可能性がある。では、それを引き出せる食材があるか、と問われれば返答に難儀するだろう。 ただし、それは一般市民だけであるが。


「俺には、この神級食材があるのだぁ」


 そう、プルルを救うために、集めに集めた神級食材の山。これらは俺の神気で増殖が可能なのだ。これならば、リ・ミリタナスの塩に負けないだろう。

 というわけで早速調理。まずは【フレイベクス肉のたたき】といこう。こいつは以前にも【天空御塩】で試したことがある。

 フレイベクス肉の味の神髄を堪能できる完成度となったわけだが、果たしてどのような結果になることやら。


「というわけで、試すのだぁ」

「エルティナ様、朝食から重いです」


 聖光騎兵団の食堂には、朝からフレイベクス肉のたたきが、こんもりと積まれていた。

 もちろん、塩むすびもこれでもかと作ってある。神級食材なので栄養は偏る事はないが、しゃっきりさっぱり、した物も欲しいので【ゴッドキャベツ】なる神級食材の千切りを用意。


 こいつは凄い食材で、一口食べれば胃もたれが完治する効果を持っている。ある意味でヒーラーに喧嘩を売っている食材だ。


「うぉん! こ・れ・はっ! うぅぅぅまぁぁぁいぃぃぃぞぉぉぉぉぉっ!」

「うおっ、まぶしっ!?」


 朝食を食べた者達が口から怪光線を放ち、朝の爽やかな食事風景をことごとく台無しにしてしまった。俺はどうやら、やり過ぎてしまったようだ。

 しかも、使用した食材は、どれもこれも食した者の潜在能力を引き出す。結果、聖光騎兵の騎士たちは限界を超える訓練を敢行。訓練が終わる事には、ことごとく白目痙攣状態へと移行することになった。じ~ざす。


「俺は悪くぬぇ」

「判決、痴刑」

「おぉん!」


 現在、俺は罪を償うため、ミレニア様のおもちゃと化している。どうやら、ハイエルフ形態の俺がお気に召したようで、色々と着せ替え人形状態となっていた。まただよ。

 まぁ、エレガントチルドレンのような悲劇に見舞われる事はないので、彼女の好きなようにさせる。着る物はどれもこれも上品な衣服ばかりだ。


 ついで、とばかりに炎楽も犠牲になる。彼は普段、俺の魂の中にて修行の日々をおくっているのだが、時折、外に出てきて俺に甘える。そのタイミングを誤ったのだ。


「うんうん。これも可愛いわ。炎楽もご機嫌ね」

「うっき~!」


 炎楽はお洒落好きだったのか、大変に満足そうであった。大きな一枚鏡の前でポージングを決めつつ、俺にもポーズを決めろ、と催促してくる有様。

 唯一の味方である、うずめは早々に避難を決行。天井付近の隙間にすっぽりと埋まって、背景の一部へと化していた。流石は雀である。ちくせう。


 着せ替えに満足したミレニア様に、リ・ミリタナスの塩の件を報告する。すると彼女は興味を持った。


「なるほど、その塩の可能性を調べれば、我が国の利益は更に向上しますね」

「ふきゅん、そのとおりなんだぜ。これを放っておく手はないと思うんだぁ」


 というわけでミレニア様が提案した使用法、それはまさかの塩マッサージ。その効能が、また凄まじかった。

 頑固な肌荒れが、たちまちの内に快癒し、ピチピチのお肌へと変貌。更には血流もよくなって冷え性が修繕。豊富過ぎるミネラルが肌のシミを駆逐。


 この塩はいったいなんなんだぁ!? 塩の境界を簡単に踏み越えているぞぉ!


「こ、これは想像以上でしたね」

「ふきゅん、これには俺もたまげたんだぜ」


 テスターには、ミリタナス神聖国に住んで八十年のマチおばあちゃんに依頼。その結果がこれだ。


「あんれまぁ、これが、わたすかい? いんやぁ、昔の姿にもどったにゃあ」


 髪の毛こそ白髪であるが、そこには十代と見紛うピチピチの肌を取り戻した、マチおばあちゃんの姿がっ! リ・ミリタナスの塩っ! やり過ぎだろうっ!?


 自分……塩ですから。


 リ・ミリタナスの塩が硬派な言い分を告げた。そんな事は分かっている。


「これを公表したら、大パニックになるんだぜ」

「そ、そうですね。世界中の女性たちがミリタナス神聖国に殺到してしまいます」


 美少女の姿を取り戻したマチおばあちゃん。その姿は死ぬまで美少女のままだったそうな。外見は美少女でも内臓までは若返る事はなかったようだ。

 でも、その死に顔は美しく、幸せな生活を送れていたことを示していたらしい。


「味はやはり【天空御塩】の方が上だったけど、リ・ミリタナスの塩は塩の概念をぶっ壊していたんだぜ」

「永遠の若さは女性の羨望ですからね。しかも、死ねる、というありがたさ」


 ミレニア様がそういうと、重みが違い過ぎて困ってしまう。俺も永遠に若い姿でいられるが、きちんと死ぬことができるからだ。


「まぁ、普通に食用として売っておいた方が良さげだなぁ」

「そうですねぇ、美容用としては効果が強過ぎますね」


 うん? 強過ぎるだと。


 俺はミレニア様の言葉で、てぃん、ときた。強過ぎるなら弱めればいいのだ。


「というわけで、次なるテスター、妙齢のマダム、ミランダさんを召喚したんだぜ」

「いったい何事だい?」

「うー!」


 普通の人間、と思われるミランダさんの下へと急行。彼女の自宅にて、水で薄めたリ・ミリタナスの塩を使用しての全身マッサージを決行する。

 尚、自宅にいたアルのおっさんは追い出した。情けは無用らっ!


「あはは、くすぐたいねぇ」

「我慢するんだぜぇ」

「う~!」


 マッサージにはゼファー君も参戦。大好きなお母さんのために、せっせとマッサージをおこなってゆく。

 すると、見る見るうちに効果が表れてきたではないか。ミランダさんの肌が十年前のピチピチした物へと蘇ってゆく。やはり、この方法はいけるのだ。


 そう感じ取った俺は興奮のあまり、や・り・過・ぎ・た。


「……やっちまったんだぜ」

「う~!?」


 なんということでしょう。そこには、十代後半の姿を取り戻したミランダさんの姿があったではありませんか。

 おっぱいとおケツのボリュームはそのままに、キュッと引き締まった腰回り。ろりろりフェイスと化した爆乳美少女の姿のミランダさんが爆誕したのである。

 ただし、背丈はそのままでだ。つまり、何もかもがデカい。


「くっ、実験は成功だが、失敗だ!」

「どっちなんだい? でも……これが、あたしかい? これは凄いねぇ」

「う~、う~!」


 美少女と化した母親にゼファー君は大はしゃぎだ。それは母であるミランダさんが喜んでいたからであろう。

 俺としては、熟れに熟れた彼女の姿も捨てがたかったのだが……失敗してしまったからには仕方がない。


「お~い、もういいかぁ? 流石に外はさむ……」


 そこにアルのおっさんが戻ってきた。暫く散歩でもいってろ、と追い出したのを忘れていたのである。そんな彼は、変わり果てた妻を見て固まった。


「あ、あんた……」

「エルティナ、今日はもう帰れ」


 事情を察した俺は暗黒微笑を浮かべて立ち去った。

 パタン、と扉を閉めると、魔法が発動する感覚を覚える。眠りの魔法だろう。

 直後に嬌声。やっぱりな、と俺は自宅へと向かう。


「ふっきゅんきゅんきゅん……第二子が爆誕する日も近いな」


 実験は成功だか失敗だかよく分からないまま終わった。しかし、俺達の戦いはこれからだ。


 結論、リ・ミリタナスの塩は食用のままでいいんじゃないかな。

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