664食目 楽しいお買い物 後編
今やエレガントチルドレンはお洒落さんたちの聖地ではなく、地獄の悪魔たちの楽園と化していた。
色様々な服たちに囲まれし楽園の日々は遠く過ぎ去り、珍妙奇天烈な衣装たちが幅を利かせている。
哀れな犠牲者が、ふきゅんふきゅん、う~、ひぎぃ、と悲鳴が響く試着室に、地獄の悪魔たちはいた。
しかし、いつまでも悪魔たちにだけ、いいようにさせておくわけにはいかない、俺達には反撃が必要なのだ。
幼かった日とは違う、この口八丁で悪魔たちを、ふきゅん、と言わしめてくれる。
「ふっきゅんきゅんきゅん……そろそろ、ミランダさんたちも、お洒落を堪能すべき、そうすべき」
俺の反撃の狼煙を敏感に感じ取ったのはゼファー君だ。即座に「うー!」と唸り、俺の援護射撃をおこなう。
無論、虫の息のルドルフさんも、これに呼応、援護射撃を開始する。
尚、現在の俺達は全員がビキニアーマーを着用されている。これはあれか、くっころ、しなくてはいけない流れなのだろうか。
だが、俺の場合は、「くっ……頃合いだ、食うねっ」と相手を捕食する意味合いになる。
ルドルフさんは合うサイズが無いのに、赤いビキニアーマーを無理やり着せられているせいで、乳肉がとんでもない事になっていた。はみ出しまくりでピンク色が半分以上見えている、
ルリティティスさんは、いったい夫に何を求めているのだろうか。理解できないし、理解したらいけない、という事だけは理解した。
「おや、エルティナが見立ててくれるのかい? それじゃあ、お言葉に甘えようかねぇ」
にやぁ……。
バカめ、掛かったな。俺は人妻だろうと、熟女だろうと容赦はしないんだぜ?
「うー!」
ゼファー君もやる気だ。積もりに積もった恨みを、ここで全て吐きだすつもりなのだろう。ルドルフさんも、その眼を怪しく輝かせている。
雪希とリルフちゃんは、よく分かっていないようだ。彼女達は自分を着飾るのが大変に好きなようなので、この状況を心から楽しんでいた。無知とは強き事かな。
「さぁ、反撃開始だぁ」
「うー!」
「この屈辱……晴らさずにおくべきかっ!」
ぎゅい~ん! と俺達は立ち上がる。えろえろビキニアーマー姿のままで。
さぁ、まずはミランダさんからだ。この四十歳に迫る熟女をどう料理してやろうか。
まずは軽いジャブ、といっておこうか。本命を叩き込むのはその後だ。
「こ、この服は……なんだか、背徳的な感じがするねぇ」
ふっきゅんきゅんきゅん……ミランダさんに着てもらった服は、すばり【セーラー服】だ。
本来は若さ溢れる少女たちが、きゃっきゃうふふ、しながら着こなすべき衣服。それを熟れに熟れた熟女、しかも人妻が着るとどうなるか。
もう見た目がヤヴァイ、はち切れんばかりの胸部、すでに半分ほど見えている臀部。完璧にAV女優のそれだ。このあと、めちゃくちゃに、シリーズ待ったなしである。
おっと、しっかりと光画機で写真を撮っておこう。メモリーっ!
尚、ティファ姉は童顔だったので違和感がない。聖女ゼアナも同様だ。
「……ルドルフ?」
「今は、このままでいさせてください」
セーラー服姿のルリティティスさんは、恐ろしくお姉様化していた。もう、学校に一人はいるであろう、廊下を歩いただけでキラキラと輝くエフェクトが追加されるような女生徒、と化していたのだ。
そんな彼女を、えろ女戦士のルドルフさんが抱きしめている。どうやら、彼女はこの属性に弱いらしい。
幼女二人は似合い過ぎてどうしようもない。こっちは俺が抱きしめておいた。
「さぁ、お次はこれだぁ」
まだまだ攻めるぞ、俺が手にしたものはスクール水着。そこら辺の熟女が誤って着ようものならボンレスハム化待ったなしの危険な衣服。
もう衣服と言っていいか分からんが、店に置いてあるんだから問題ない。
「……うぐ、少しお腹が出てきたかしら」
「ふきゅん? ここかぁ」
ぷにぷに。
流石に子供を産んだこともあり、ミランダさんのお腹はぷにぷにし始めていた。
触り心地がいいんじゃあ……! ぷにぷに!
とはいえ、ミランダさんは他の部分が超弩級なので、そこまで腹周りが気にならないのが凄いところだ。その他の部分が別の意味でボンレスハム化しているが。美味しそう、性的な意味で。
うぅむ、これは、アルのおっさんには見せられないな。
「ふふ~ん、私もまだまだいけますね」
そして、既に子供を三人も生んでいるティファ姉は、いまだ見事なスタイルを保持している。ペタンこゆえに、体形が崩れにくい事も幸いしているのだろうか。
そして、見よ! 聖女ゼアナの腹筋を! かっちかちやぞ! 六つに分かれているのがスク水越しに分かってしまう! マジパネェッスよぉ!
「うおぉ……俺にはないものだぁ」
「あの、聖女エルティナ様。くすぐったいです……」
思わず触ってしまう腹筋。俺は行燈に吸い寄せられる羽虫だ。
「はぁはぁ」
そして、このルドルフさんである。彼女は妻のスク水姿に欲情していた。
どうやら、コスチュームプレイに目覚めたのであろうか。ルリティティスさんも夫の新たなる一面を見てまんざらではない様子だ。
「ふっ……新しい子供も、そう遠くはないな」
なんという、大人の余裕。その姿が、スク水姿でなければ様になったのだが。
「ふきゅん、調子が上がってきたぞぉ。お次は、どれにしようかな?」
「うー!」
ここでゼファー君があれを着させろ、と指で差した服。それを見て、俺は彼の容赦のなさに戦慄した。というか、なんであんな物が置いてあるんだよ。
「……ひえっ」
流石のミランダさんも、これには悲鳴を上げた。まさかの【まわし】である。
股間の大切な部分だけを隠すのみ、というおおよそ女性が身に付けてはいけないんじゃないのかな、という代物だ。
もう、おっぱいや、おしりも晒し放題やでぇ。
「うー!」
そんな状態の母親にゼファー君、突撃。よいしょよいしょ、と押し出そうとする。彼は相撲を知っているのであろうか。
そんな我が子を見て、みるみる顔を青ざめさせてゆく、ミランダさん。
「え、ま、まさか……この子、夜の私達を!?」
あちゃ~、夜の取り組みを見られていたのか。そして、ゼファー君はそれを相撲と勘違いしている、と。
いったい、どんなプレイをしていたんですかねぇ? きになりますっ!
「……」
「……」
そして、ペタン子コンビは沈黙の力士と化す。大平原のお胸は、まわしが取り易そうである。
そして、トールフ夫妻は共にまわし姿に。何がどうなってそうなった?
当然の権利のように組み合う姿勢は、既に俺の予測を大きく逸脱していた。
暴れる爆乳、震える臀部、激しい取り組みは危険な領域へと突入する。誰か止めて差し上げろ。俺では無理だ。
「はぁはぁ……これ、買います」
何がルドルフさんを燃え上がらせるのか。彼女は、何故かまわしを即買いしていた。
夜のプレイに使用するのであろうか……理解に苦しむ。
程よい感じにグダグダになってきたので、そろそろ終焉を迎えて差し上げようと思う。
とどめの一撃を喰らうがいい。
「げふっ」
ミランダさん、ティファ姉、そして、ルリさんが吐血した。聖女ゼアナはきょとんとしている。それもそうだろう、子育ての経験が無いのだから。
俺に至っては、まったく問題はない。何度も身に付けた経験があるのだよ。
俺が最後の最後に投下した爆弾、それは【おしめ】だ。最早衣服ではないレベルであるが、置いてあるなら使ってやるのが世の情け。情けついでに、よだれかけ、も追加だぁ。
しかも、大人用がある、という悪意溢れる品揃えに、俺はこの店の業の深さをひしひしと感じ取った。
「ふっきゅんきゅんきゅん……お似合いなんだぜぇ」
復讐は成った、かつての強敵たちは、究極奥義【おむつ卍がため】により撃沈、深い海の底へと沈んでゆく。
これからは、服選びも穏やかなものとなろう。エレガントチルドレンに平和が戻ったのである。こんなに嬉しい事はない。
「あら、エルティナ。こんなところにいたのね。丁度良いわぁ」
しかし、かつてない強敵現る! エティル家のラスボスこと、ディアナママンである。
実は白エルフなんじゃないかな、疑惑のある彼女は御年五十を過ぎても皺がひとつない。
既にお肌はナノマシンに全て換装済みだ、とでも言わんばかりにピチピチをキープ、体形も隙を生じぬメリハリボディ。いったい、この人は何者なんだぁ!?
にじり寄るディアナママン! 後退する俺!
……がダメっ! 背中に硬い感触! 壁っ! 退路、断たれるっ! 圧倒的……絶望っ!
「さぁ、おめかしの時間ですよぉ?」
「ふきゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅんっ!」
結局、エレガントチルドレンに平穏が訪れる事はなかった。爆ぜろ、ふぁっきゅん。