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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第十七章 決戦への備え
662/800

662食目 決戦に向けて

 さて、気分もリフレッシュしたところで、王様、ミレニア様を交えて今後の事に付いて話し合わなければならない。


 フィリミシア城会議室に集まった面々は俺、王様、ミレニア様、ドクター・モモ、デュリーゼさんだ。


 議題は【困った神様たち】である。これには元女神のマイアス・リファインをお招きしての話し合いとなった。


「ふきゅん、それでは、【ふぁっきゅんゴッド対策会議】を始めるんだぜ」


 じゅ~……。


「何気に神様をディスってますよね? それ」

「否定はしない」


 じゅっ、しゅぅ~……。


 マイアス・リファインにツッコまれたが、鉄の面の皮を持つ俺には通用しない。時間が惜しいのでさっさと話に入るとする。


 マイアス・リファインの話によると、何やら危険な企みをおこなっているのは、天空神ゼウス、北欧神話の主神オーディンであるらしい。

 ヤヴェのが二柱である。こちらもそれ相応の対策と戦力を整えねばなるまい。


「ですが、彼らと対峙するのは女神マイアスと戦い、勝利した後になるでしょうね」

「最初はみつどもえか? モモガーディアンズとカオス教団、神様連合で手を組んで、女神マイアス、鬼軍団と戦うっていう。もぐもぐ」

「ふむ、神々が援軍とは豪勢じゃのう。がふがふ」


 王様が顎鬚を撫でながら、ほぅ、とため息を吐く。そんな彼を見咎めてマイアス・リファインは首を振った。


「いえ、みつどもえではありません。鬼たちは最初から女神マイアスの傘下ですから。はふはふ」

「なんですと!? むしゃあ」

「女神マイアスは、この世の最も強大な歪み。その彼女から生まれたのが悪児おにです。即ち、彼女こそが桃使いの宿敵【憎怨ぞおん】なのです」

「なんてこったぁ……ごくん」


 じゃぁぁぁぁぁぁっ! ぱちぱちっ!


 まさかの大ボスが女神マイアスという事実に王様は言葉を失っていた。

 デルケット爺さんには、どうやって説明したらいいか、これもうわっかんねぇな?


「エルティナ、今いいか?」

「ふきゅん? どうしたんだぜ、トウヤ」


 このタイミングでトウヤが爆弾情報を投下した。それは天空神ゼウスと勇者タカアキが接触した、というものだ。


「タカアキが天空神ゼウスと? いったいどっちから接触したんだ?」

「天空神ゼウスだ。目的までは分からないが、何かの取引があったことは間違いないだろう」


 元勇者タカアキは現在、魔族たちの王として君臨していた。そして、彼の妻エレノアさんは現在、意識不明であり昏々と眠り続けている。

 タカアキの力によって、彼女の健康状態は維持されているようだが、いつまでも眠り続けるという状況はよろしくない。


 俺が出向く事ができればいいのだが、周囲の反対と何よりもタカアキの、来るべき時が来るまで接触は控えるように、との言葉が俺を押し留めている。


「分かったんだぜ。にしても、よくそんな情報を掴めたな?」

「協力者がいるのさ。それも一級のな」


 トウヤはそう言い残し連絡を切った。彼は彼で忙しく駆け回っているようだ。

 桃大佐も三貴神と何やら裏でごにょごにょしているとのこと。どっかりと構えているのは吉備津彦様だけだという。

 尚、桃先生は絶賛ダイエット中、というわけのわからない情報をいただいた。


「ふきゅん!? トウヤと話している間に育てていたお肉がっ!?」

「ふっふっふ、焼き肉は非情なのですよ」

「きたない、流石、元女神きたない」

「もう勝負付いてますから」


 ただ話し合うのもなんなので、俺達は焼き肉をしながら、来たるべき決戦に向けての討論をおこなっていた。

 この魔力式焼き肉プレートはドクター・モモが即興で作ってくれた便利な道具だ。

 俺の魔力量であれば、五時間六時間は余裕でフル稼働できる。しかも、煙が出にくく、肉がこびり付かないという親切設計だ。

 そして、窓も開けているので煙が籠ることもない。完璧だな。


「決戦に当たり、各国は連携を申し出てくれた。エルティナ、そなたは彼らの代表として、この星の未来を背負ってもらう事になるじゃろう」

「問題ないんだぜ。元より、その覚悟はできている」


 肉ばっかり食べている王様は、各国との連携を築き上げることに腐心してくれていた。

 彼のがんばりによって、世界は俺の元にひとつになろうとしている。これは責任重大であるが、今更俺は自分を変えようとは思わない。

 俺は俺のまま、皆と戦い、そして未来を掴み取るだけだ。


「ふぇっふぇっふぇ、こちらはGT計画に目途が付いたぞい」

「確か、ホビーゴーレムを巨大化させて戦わせるって計画だったか?」

「そうじゃ」

「ドクター・モモはお肉も食べてくれ。野菜がなくなっちまう」

「わしはヘルシー志向なんじゃ」


 トウヤはホビーゴーレムたちの戦闘能力の高さに目を付けていた。特にムセルなどは頭一つ跳び抜けているといえよう。しかし、ホビーゴーレムはGDの制御に欠かせない存在でもある。

 したがって、GT……ギガンティックゴーレム計画は後回しにされていたのだ。


「取り敢えずはムセルのGT【GTムセル】が完成したわい。随分とムセルを束縛してすまんかったの」

「いや、ムセルもこれで活躍できる、といって喜んでいたんだぜ。はぐはぐ」


 ムセルは己のパワー不足を痛感し、近頃は元気がなかった。何もできない自分に憤りすら感じていたようだ。

 イシヅカとは違い、GDに乗り込むこともなくなり、存在意義に疑問を持つようになり始めていた。そこにドクター・モモがGT計画を持ち込んだのだ。


「ドロバンス帝国も不穏な動きを見せ始めています。恐らくはエリスでしょうね」


 デュリーゼさんが優雅にワインを嗜みながら報告してきた。どうやら、兵力を掻き集め始めたとのことだ。

 軽く焼き上げたラム肉を味わいながら赤ワインを堪能する彼は優雅だ、といわざるを得ない。


 それに比べて、この元女神様と来たら……。


「はふはふ! むぐむぐ! うぉん!」


 どこの火力発電所さんなんですかねぇ?


 動きを見せないマジェクトも不気味な存在ではある。アレもラングステン英雄戦争で一皮むけているようなので油断はできない。


「カオス教団も水面下で色々と牽制してくれているみたいだから、すぐに大事にはならないと思うんだぜ」


 兄貴たちも、カオス神復活を掲げて精力的に活動をおこなっていた。彼の傘下に落ち着く者は意外に多く、信者を総動員すると侮れない数に上る。

 だが、真の脅威はやはり兄貴と八司祭なので、数が集まっても俺たちには物の数ではない。


「不気味なのは女神マイアスです。彼女が何も行動を移さないわけがありませんから」


 マイアス・リファインは胸に手を当てて心配そうな表情を浮かべた。俺は女神マイアスなる者がどのような存在になっているのか預かり知れないが、彼女の様子を窺う限りろくなものではないようだ。


「色々と対策を練っておく必要はあるようじゃが、現状では動くことも叶わぬか。情報が少ないという点もある」

「そうですね。我らは常に受け身ですから」


 王様とデュリーゼさんの言うとおり、俺達は常に受け身だ。

 それは情報が少ないという点もあるが、手口が巧妙過ぎる、という厄介な連中ばかりを相手にしていることもあってか、受け身にならざるを得ない状況に追い込まれていた。


「いずれにしても、全ては鬼穴が開いてからです。まずは鬼を退治して女神マイアスを引きずり出さなくてはなりません」

「鬼ヶ島本土にも殴り込まないといけないようだな」

「最悪はその覚悟も必要かと」

「ふきゅん……」


 長きに渡る桃使いと鬼の戦いにも終止符が打たれる、というわけだ。どおりで桃大佐が忙しくしているわけである。

 トウヤの話によれば、現存する歴代の桃太郎や、世界各地に散らばる桃使いたちに集結を呼び掛けているらしい。まさに最終決戦に向けての準備が着実に整いつつあるようだ。


 というか、カーンテヒルにまで、どうやってくるつもりなんだろうか。気になる。


「ところで、モモガーディアンズの近況はどうなっているのですか?」

「ミレニア様、皆は修行の旅に出てるんだぜ。一部はフィリミシアに残っているみたいだけど」


 お上品にフレイベクス肉を口に運んでいるのは、あの悲劇から立ち直ったばかりのミレニア様だ。

 ようやく、ナイスバディのお婆様へと復活したのである。いやぁ、長かった。


 無論、お婆様といっても、彼女の見た目はは若いたままだ。精神だけが老化している。

 逆に、王様は身体が老化しているが精神は若返っていた。どうなのこれ?


 フィリミシアに残っているのはライオット、プルル、アルア、エドワード、リンダ、ユウユウ閣下、といった面々だ。他の者たちは思い思いの場所へと旅立ち己を鍛えている。

 特にライオットとプルルは、桃師匠の極悪な修行を付けられて、決戦前に死んでしまうのではないのか、と心配されるほどだ。


 桃師匠も並々ならぬ決意を持って二人に修行を付けていた。彼に身体を貸しているジェームス爺さんも限界が近いこともあり、これが最後の弟子となるだろう、と俺に漏らしていたのだ。よって、俺が桃師匠を止めることはできない。


 そして、俺であるが……どうしても最後の一枝が呼べずにいた。決戦に際して、不完全な真なる約束の子ではいけないのだ。

 だが、こればかりはどうにもならない、という諦めも確かにあった。ヤツが目覚めない限り最後の枝が咆哮を上げる事はないのだ。


 俺にできることは、ただ一つ。桃力を高める事のみだ。目覚めたあいつに笑われないように、ビックリするほどの桃力を溜め込んでやろう。


「というわけで、俺は食うぞ、食うぞ!」


 フレイベクス肉を追加で投入。肉だけは無限にあるのだ。

 少しくらい赤身が残っている方が柔らかくてジューシーとなる。合わせるタレはニンニクを利かせたどぎつい醤油タレでもいいが、ここはオレンジと醤油を混合した特製タレを使用する。

 オレンジの酸味と甘みが醤油と調和し、幾らでもお肉が食べれるようになるのだ。


「はふはふ! んぐんぐ! うぉん!」


 そして、俺は二基目の火力発電所となった。この後、王様も三号機となる。


 皆が満腹になり、焼き肉会議は終わった。

 一か月後にまた行う予定であるが、その日まで俺は俺にできることを惜しまずにおこなう。時間は待ってはくれないのだから。






 今日も桃師匠の檄が飛び、ライオットとプルルの血が撒き散らされる。それに加わるのは、リンダとユウユウ閣下。

 情け無用の実戦稽古によって、ライオットとプルルは破壊されてゆく。それでも彼らは根を上げる事はない。

 二人の怪我を見て狂喜乱舞し、治療のために乱れ飛ぶチユーズたち。そして、ごりごりと減ってゆく俺の魔力とSAN値。

 どさくさに紛れて、アルアがショゴスと愉快な外宇宙神を呼び出し、場は更に混沌を増してゆく。


 誰か助けてっ!


 こうして、決戦の日は刻一刻と近付きつつあった……。

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