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食いしん坊エルフ  作者: なっとうごはん
第十六章 彼方より来たりし者
623/800

623食目 会議にヤツがいた

 ◆◆◆ エルティナ ◆◆◆


 カサレイムの鬼騒動から一夜明け、俺は主だった面子を大神殿の会議室へ集め、でき得る限りの情報収集と整理をおこなうことにした。


 会議開始は昼食と重なるということもあり、片手間で食べられるサンドイッチをチョイス。

 具にはフレイベクス肉のローストを薄くスライスした物、それにレタス、玉ねぎ、ゆで卵の薄切りを挟めつつミルフィーユの要領でサンドしてゆく。

 ついつい調子に乗って挟めていった結果、口に入らないくらい分厚くなったのは内緒だ。


 タレは安心と信頼のてりやきソース。具材と混然一体になった時の破壊力はばつぎゅんだ。


「それでは、カサレイム鬼~さん許して、会議を始めるんだぜ」


 集まったメンバーは昨日カサレイムにて、鬼退治に参加したメンバーにノイッシュさんを加えておこなう。


 テーブルの上のサンドイッチを狙って、複数のもぐもぐどもが暗躍していたがことごとく捕縛され、ユウユウの手によって亀甲縛りの刑に処された。そこ、はぁはぁしない。


「まず、獄炎の迷宮から鬼が溢れたことについてだが、情報を持っている者はいるか」


「ガッサームだ、俺が直接見たわけではないが、冒険者仲間からの情報提供があった」


 真っ先に名乗り出たのは冒険者のガッサームさんだ。彼は冒険者たちに顔が広く、さまざまな情報が彼の下に集まってくる。


 今ではラングステン英雄戦争の功績もあってか、冒険者たちの元締めのような役割をやらされているそうな。


「獄炎の迷宮地下四十四階で卵のような物を発見したが、溶岩池のど真ん中にあって詳しく調べることはできなかったらしい」


「ふきゅん、それは怪しいな。あとで調べる必要が大いにあるんだぜ」


 俺の出した答えに意見した者がいた。ガイリンクードだ。


聖女ホーリーレディ、今すぐ破壊デストロイした方が最良グッドなのではないか?」


 彼のいうことも一理ある。それに答えたのはトウヤだった。


「ガイリンクードのいうことも一理ある。だが、原因を調べなければ対応策も練ることはできない。きみはこの事件を起こしたドクター・スウェカーなる人物と接触しているはずだ」


肯定イグザクトリィ。ふざけた狂科学者イカレやろうだ」


「きみがそこまでいうなら、そのとおりの人物なのだろう。だからこそ、卵を調べる必要性がある。最悪、ドクター・モモの助力を仰ぐ必要が出てくるかもしれない」


「えぇっ? それって、かなりの大事なんじゃない?」


 トウヤの自信のない発言にリンダが驚きの声を上げた。今までは、トウヤ=なんでもできる、という認識が浸透していたから仕方がないのだろう。


「あぁ、彼は俺よりも遥かに高い技術を有している。俺は先だって獄炎の迷宮から湧き出した鬼の解析を試みたが、強力なプロテクトが施されいていて突破することが不可能だった。だが、ドクター・モモならば、突破も可能だろう」


「ふきゅん、変な感じはしたが、それが原因か」


「そのとおりだ。あの鬼は普通ではない。鬼ヶ島本島の小鬼以下の戦闘能力だが、何か秘められた能力をもっているはず。俺は嫌な予感がするんだ」


 トウヤがここまで言うのは珍しい。それだけに今回の件は看過することはできない重要な案件である事が理解できた。


「それで、獄炎の迷宮は暫く閉鎖するのか?」


 ライオットがサンドイッチをムシャムシャしながら問うてきた。

 というか、アホみたいに山盛りにしたサンドイッチがもう最後の一つとか許されざるよ。


「いや、鬼が湧き出てくるだろうから、モモガーディアンズのメンバーで定期的に潜ってもらう」


 俺はライオットの空いた皿にどさどさと桃先生を召喚した。それを狙っていた獣たちが動きだす。


「もぐ~」「もぐ~」「もぐ~」「もぐ~」「もぐ~」「もぐ~」


「うおっ、させるかよ!」


 ここに、にゃんこともぐもぐとの激しいバトルが勃発したのであった。

 お願いだから隅っこでやってどうぞ。


「それでカサレイムの被害状況はどうなっている?」


「被害状況は獄炎の迷宮の付近で商売していた店舗が数件被害に遭った程度ですね。おもな死傷者は冒険者です。軽傷七十三名、重傷二十六名、重体十八名、死者……七十五名です」


 ルドルフさんの報告を受けて会議室に集った面々は息を飲んだ。多過ぎる、と。


「おいおい、死者の数が尋常じゃねぇな」


 マフティが頬杖をしながら愚痴た。眉をしかめて美人台無しである。

 流石にこの場で笑ってどうぞ、とは言えないが。


「この死者の数は逆算したものです。というのも、死者の大半が消失しているのですよ」


 ルドルフさんは手にした資料を配り始めた。そこには死亡した冒険者の肉体が光の粒に解れて消えてしまった、という報告が記載されていたのだ。


 だが、資料にレストランガムラのカサレイムライス30%割り引きの広告が、どさくさに紛れて載っているのはどういうことであろうか。あとで行ってこよう。


「ふきゅん、死体が消滅とか、わけワカメなんですわ」


 このようなケースは見たことも聞いたこともない。いったい何が起こっているのか、そう考えた時、辿り着く結論はただ一つであった。


「きゅおん、まさか、転移者が……大勢死んだ?」


 キュウトが手で口を抑え震える声で呟いた。こんなおかしな現象を引き起こす連中など、彼らしかいないだろう。


 え? 俺? ノーコメントで。


「キュウトの辿り着いた結論で間違いないだろう。カサレイムで死亡した冒険者は七十五名、内死体が消失しなかったのは六体だそうだ」


「つまり……下手をすれば、死んだのは七十名以上になる可能性もある、と?」


 エドワードが手に持った資料を叩きながら、表情一つ崩さずに可能性を示唆した。


「そのとおりなんだぜ。そして、死んで光の粒になった転移者たちの行く先は不明のまま」


「情報は無いままなのかい?」


「ふきゅん、今のところは入っていないんだぜ」


「そうか……待つしかない、というわけだね」


「性に合わないがエドの言うとおりだぁ」


 俺はぷくっと頬を膨らませてご立腹の意を強く強調した。これも、鬼ってヤツが悪いんだ。


「おにぃ」


「あぁ、バリバリクンの言うとおり、冒険者はカサレイムの町で生活資金を稼いでいた」


「おににぃ」


「だろうなぁ、獄炎の迷宮のモンスターを倒せたことで、自信を持ってしまったことが仇となった」


「おにぃ……」


「そんなに悲しい顔をするなぁ、おまえが悪いわけじゃ……って、なんで、おまえがここにいるんだぁ!? 鬼は退治だぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 どこから潜り込んだ、バリバリクン! あまりに自然過ぎて気が付かなかったぞ!


 結局、バリバリクンは俺たちの包囲網から逃れ、その姿を消したのであった。

 そう、俺はまたしてもヤツを退治できなかったのである。ふぁっきゅん。

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